すっかり暗くなった夜道。近頃の池袋は通り魔がでると噂されていてこんな深夜近い時間に歩いている人はいない。一人で歩いているものならお前は通り魔にやられたい自殺志願者か?それともマゾヒストか?なんて思われてしまうだろう。そんな夜道、一人の男が池袋の夜道を歩いていた。彼の名前は平和島静雄。彼の職業は借金の取り立て人である。内容はアレだが人を相手にしている職業なので決してピッタリの定時があるわけがなく大体は深夜に長引いてしまう。時計は0時を指しているが今日は早く片付いた方だ。やっと仕事が終わり無事アパートにつき玄関の鍵を出そうとポケットを探る。が、目的の鍵がみつからず少し焦る静雄だったが、そこでふと思い出した。――あぁ、今日はポストにいれたんじゃねーか。いつも同じ場所にいれとくという概念は静雄にはないようだ。玄関のか細いライトの下、静雄はポストを開け中を覗いて見る。


「だーれだ!」

「!」


 誰かのその声で前屈みになりポストを覗いている静雄の視界は一気に暗転した。静雄は通り魔かと思い少しびっくりして肩を揺らすがどうやら声の主はただ単に静雄をからかっているだけのようだ。普段こんなことをされたら静雄は迷わずぶち切れるだろう。しかし静雄はその声に聞き覚えがあった。そもそも静雄のことを知っているやつが目隠しなんてするわけがない。つまりそんな無茶なことをするヤツといったら静雄は、同級生で自分が人類で最も嫌悪していて人間が大好きな男か、その男の妹で静雄の弟が大好きな双子たちか、自分より年上で人をからかうことが大好きな人物くらいしか思い浮かばなかった。


「……千花?」

「あれー? ばれちゃった」


 静雄に名前を当てられた千花はつまんなそうに声をあげ静雄の瞳から手を離す。ぼやぼやっとする視界がなれてくると静雄は振り返り千花の姿を確認し、ハァ……と思わずため息を吐く。千花と前にあってから何ヶ月くらいたっただろうか。千花は気分屋でフラーと現れは静雄をからかいそして急に去っていく。千花のことを動物に例えるとしたら?と聞かれたら彼女を知るものは皆口に揃え答えるだろう、彼女は猫だ。


「あー……、久しぶりだな」

「そうだっけ? てか、シズくんはまだバーテンやってんの?」

「いや、やめた」


 静雄との再会などどうでもよさそうに答える千花は静雄を上から下に眺め、ふーんと呟いた。どうやら千花は静雄のバーテン服姿が気に入ったらしい。基本的に食わず嫌いはしないタイプの千花はオタクな友人二人の影響で結構こういうコスプレっぽいものが好きだ。


「シズくん、こういうの似合うね」

「……なんでこんな時間に来たんだ?」


 にやり、と意地悪く笑う千花に静雄は嫌な予感がした。千花のこの何かを企むような笑いを見て静雄はいい思いをしたことが一度もない。今回もきっとなにかを企んでいるんだろう。千花には比較的好印象を持っている静雄だが彼女のこういう笑い方が自分の大嫌いな人物を思い出し静雄は嫌だった。


「泊めて」

「あ?」


 何を言い出すかと思ったら、泊めてほしいなんて拍子抜けな事を言う千花に静雄はきょとんとする。しかしそんな静雄を気にせず千花は続ける。


「いやー、今から家帰るのめんどくさくて」


 静雄にこんなことを頼む人は千花くらいであろう。千花は新宿にあるマンションに住んでいる。この時間はもう終電もなく女性が今から歩いてであるくのは危険だ。静雄はそこまで考えて千花は自分が断らないと知っていて来たのだろうと思った。


「……入れ」

「わーい。お邪魔しまーす」


 渋々ドアを開ける静雄を気にせず千花は明るい声を上げて静雄の家に入る。静雄だからいいものを深夜に男の家に上がるなんて女としてどうしたものか。部屋を漁ろうとしている千花に静雄はハァとまたため息を吐く。


「お前もっと女としての自覚もてよ……襲われちまうぞ」


「ん? 静雄はそんなことしないから大丈夫」








貴方のその足りない感じが好き














千花は静雄はヘタレだから、という意味でいったのだが、まあ信頼ということにしておこう。
(100705)
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