「柔兄ー!金兄ー!タオル持ってきてー!」

 二枚頼むー!と家に向かって大きな声を出せば「柔兄呼んでるで」「しゃーないなあ」と話す二人の声が聞こえた。「金兄は人で無しやな」と呟けば苗字さんが隣で笑った。ダメな兄たちですんません。恥ずかしくなり頭を掻くとドタドタと柔兄がタオルを持ってやってきた。びしょびしょになった俺たちを見て柔兄は目を真ん丸くして驚く。多分この驚きには苗字さんがいることも入っているはず。

「うわ、どないしたん!びしょびしょやで!」
「わかってるさかい早うタオル苗字さんに渡したって!」
「苗字さん言うんか、ちゃんと拭き?」
「あ、ありがとございます」

 廉造偉いべっぴんさん連れてきはったな、と言う柔兄にせやろと激しく同意する。二人でうんうんと頷くと苗字さんはぽっと火がついたように頬を赤らめ恥ずかしそうにタオルで顔を隠す。そんな可愛らしい仕種に肺を擽られたような気がして心臓の当たりが痒くなった。でも頬を赤らめたのが柔兄の言葉だというのが少しだけ悔しい。そんな俺の気持ちなんて伝わらず、柔兄は苗字さんの頭をぐりぐりと撫でると言った。

「風邪ひくとあかんからシャワー浴びていきな?」
「え!悪いです!これくらい大丈夫ですよ!」
「ええからええから」

 無理矢理家に上がらせ苗字さんの背中をぐいぐい押し脱衣所に閉じ込めた。でも苗字さんは出ようとしてくるから「なんや一人じゃ無理なら俺も入ってやろか?」と言ったらさっきよりも顔を真っ赤にして小さく「お借りします…」と言った。

「なんや、可愛すぎるやろ……」

 パタンとしまった扉に背中を預け呟いた。廉造顔真っ赤やと柔兄がいらんことを言ってくるから手で顔を隠した。バレバレやなーと茶化すような声が聞こえ、見れば金兄がアイスをくわえながら居間から顔だけ出していた。

「うっさいわボケ!てかそのアイスは俺のや!なに食べてるん!」
「早いもん勝ちや」
「金兄はほんま人で無しや」

 楽しみにしてたのに金兄はほんまひどい。昔、虫を持った金兄に追い回された記憶が蘇った。柔兄はケラケラ笑うと金兄がほっぽったコンビニ袋をがさりと開けアイスを取り出す。

「暑いからアイス食べたかったんやけど、雨降ってきてもうたな」
「なんや、文句あるなら食べなくてもええんやぞ」
「アイスうまいわー。廉造ありがとなぁ」
「ちょ、柔兄子供扱いやめて」

 ぐりぐりと頭を撫でられると複雑な気持ち。はじめてのお使いってわけじゃないんやから。恥ずかしいわ、と柔兄の手を避けると、アイスを食べ終わった金兄がぽつりと呟いた。

「着替えどないするや?その苗字さんの」
「あ!……俺の服でええかな?とってくる」
「廉造覗くなよ」
「し、しないわ!」

 立ち上がり自分の部屋に行こうとすると「ちょっと考えとったな」「さすがエロ魔神やな」と言われたのでごまかすように咳をした。



















0805
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