雪のように白い肌とはこのことをいうんじゃないか。黒い綺麗な長い髪をいつもツインテールにしていて童顔な彼女にはすごく似合っていた。前髪には大きなかわいらしい花飾りを付けていてそれは彼女のお気に入りらしい。長い睫毛にぱっちりした釣り目がちな青い瞳。ぷっくりサクラ色の唇はうっかりキスしたくなるほどだった。小柄な彼女の短いスカートからでる長く綺麗な足はニーソックスに包まれていて露出は少ないのだが逆にいやらしく見えた。

 彼女の笑顔以外の表情を俺はみたことあるだろうか。彼女はいつもニコニコと笑みを絶やさない。それは嫌な感じのにやりとした笑みではなく、本当に幸せそうに笑うのだ。頬を少し赤く染め吊り目ちな目をとろんと垂らし笑う彼女は学校一かわいいと評判だ。彼女はスリザリン寮に所属していたが性格は明るく学校の生徒全員、いや先生方とだって仲がいい。困ってる人がいるとほっておけず自分より他人を優先するような優しい子で誰もが何故スリザリンなのかと疑問を抱いているだろう。好きな食べ物は甘いもの。彼女の制服のポケットにはいつも飴やらチョコなどの甘いお菓子が入っている(そのせいでか彼女からはいつも甘い匂いがしていた)。それが俺の知っている千花・仁科である。

 そんな寮関係なく男からも女からも好かれる彼女に恋をするやつはたくさんいる。男はもちろんのこと聞いた話しじゃ女の中にも彼女に惚れてる子もいるらしい。俺も例外ではなく彼女のことを気にしていた。惚れてる、というわけではなかったけれど見かければかわいいなって思ったしあんな子が彼女だったらいいだろうなぁと思う。まあいいことだけじゃないだろうけど(嫉妬とかすごそうだし)。まあ俺が彼女を恋愛感情を持つことはないだろう。日本の言葉で表すなら、えーっと、なんていったっけ?…そう、彼女は高嶺の花だ。それに、

「ちょっとビル?聞いてんの?」
「ん?…あぁ、ごめん」
「どこ見てたのよ、って仁科さんね」

 確かにかわいいけど私といる時は私のことを見てよ!と怒るエミリーにもう一度ごめんと笑って謝る。俺には付き合ってる彼女がいるんだし、まあ千花に惚れることは多分一生ないだろう。そう思ったのはつい先日のことだった。




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 得に理由はなかったがビルは一人になりたい気分になり人気のない廊下を散歩していた。普段人が来ないからか話したくてしょうがないとばかりに壁にかかっている絵画たちがビルに話し掛けて来る。そんな絵画達にビルは困ったように笑いながら返事をした。あんまり一人になれなかったな。場所を間違えたとビルは少し後悔した。しばらくはぼーっと窓から外を見ていたがそろそろ夕飯だし談話室に戻るか、そう思い踵を返した。そしてその時、彼女、千花が告白される場面に出くわしてしまった。

「あの俺千花ちゃんのこと、す、す、好きなんだ!」
「えぇっ!」

 緊張した様子の彼と頬を赤く染め驚きの声をあげる千花。聞くつもりはなかったけれど聞いてしまい思わず柱に隠れたビルは居心地の悪さを感じた。他人の告白を盗み聞くなんていい趣味じゃない。今すぐ談話に戻りたい気持ちでいっぱいだったが談話室に戻るには彼らの横を通らなければならなかった。いくら他人だといっても告白場面を邪魔するわけにはいかないだろう。ハァと静かにビルはため息をついて息を潜める。早く振るか付き合うかしてくれ…そう願うことも忘れない。

「今、付き合ってる人いないよね?」
「うん…いないけど」
「ならっ!俺と付き合って下さい!」

 そう言って頭を下げた彼。千花は迷っているのかうーうーと唸りはじめた。そういえば彼女の色恋関係の噂はあまり聞かないな。誰かに告白された、とかは聞くけれど誰かと付き合っているなどは聞いたことがない。今だ迷っている彼女の声に付き合うのかなと思った。すると何故か心臓がちくちくと針に刺されるような感覚に襲われた。なんだろう?こんな居心地の悪いところにいるからか?とビルはまたため息を吐いた。

「えとっ、ごめんなさい…っ!」
「え、あ、そっか……」
「ごめんね……っ」

 本当に申し訳なさそうに謝る千花に彼は諦めたのかすぐに泣きそうな笑顔を作りじゃあといい去っていった。彼が去ると千花もビルも動かずシーンと音が消えた。動かない千花は罪悪感でいっぱいなように見えた。ビルは早く終わってほしいと思っていた自分をちょっと恥じる。勇気を出し告白した彼には本当に今この瞬間が人生で一番大事な時間だったのだろう。心の中で名前も知らない彼に謝った。
 告白も終わりあとは千花が去るだけと大人しくしていたビルだが千花は一向に動こうとしない。さすがに心配になったビルが千花に声を掛けようとする、と同時に千花が呟いた。

「くだらないことにあたしの時間使ってんじゃないわよ、チンカス」
「、え?」

 ビルはここにきたことを本当に後悔している。





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