「実はね、ここは私の幼なじみの家なの」
「千花ちゃん?」
「ううん。違う子」
「そうなんだ」
「今はもうまったく付き合いがないんだけど、小学校にあがるまではあたしと千花と洋くんでほとんど毎日一緒に遊んでたんだ」
「あれ?ここのうちの子は一緒に小学校に上がらなかったの?」
「うん。二人は学年が一つ違ったんだ。わかった時は三人でびっくりしたんだよね」




 今日もロケット探しでフラフラと歩きまわったおかげで足が痛い。さすがに2日連続はすぐに疲れてしまい昼頃あたしは洋の家に戻ることにした。はあヘトヘトだあ。足が棒のようとはこういうことをいうのだろう。早くぬるーいお風呂に使ってゆっくり足を解したい。でもラジオ体操以外運動することのないあたしにはちょうどいい運動なのかもしれない。うつむきながら歩いていたのをやめ前を見ると庭に誰かがいた。近づくとどんどんはっきり見える人。洋ではない誰かに気づいた瞬間私は思わず足をとめた。

「靖子ちゃん…!?」

 洋の家の庭には楽しそうにお喋りする靖子ちゃんとボクくんがいた。嘘でしょ、と我が目を疑うくらいだ。びっくりしすぎて目が落ちちゃうんじゃないかってくらいあたしは目を開いた。だって信じられないんだもの。あたしが洋のとこいこうよといくら誘っても「うーん」と渋っていた靖子ちゃんが洋の家にいるなんて。仲直り、してくれるかもしれない。とくんと心臓が跳ねた。数年間で大きく開いた隙間が埋まってくれる。喜びと期待であたしは動けなかった。

「さてと…そろそろ戻らないと洋くん帰ってきちゃうかも」
「洋くん?」
「そう。ここの家の、私とひとつ違いの中学生の名前なの。それが幼なじみの洋くんってわけ」

 そういった靖子ちゃんの声は寂しそうであたしは一気にテンションが落ちた。そんな風に思うなら二人とも仲直りすればいいのに。どうしてすれ違っちゃうんだろう。あたしは二人と仲良しで、二人に昔みたいに戻って欲しくて、なのに、なのになんにもできなくて。二人のすれ違う思いより自分の無力さに悔しくなる。あたしの小学校の頃からのお願いはいくら星に願っても、手が届かない星は叶えてくれないんだ。

「千花ちゃんと洋くんも疎遠なの?」
「ううん。千花は洋くんと同じ年で小学校も中学校も一緒で今も仲がいいんだよ。なんだか仲間はずれにされた気分、かな?」

 靖子ちゃんの自虐的な言葉と笑いはあたしのグルグルと回転している脳みその動きを一瞬で止めた。仲間はずれなんてそんなこと、あたしは仲直りしてほしいのに、洋だって、軽い脳みそで処理できない思いが溢れ出しあたしは思わず叫んでしまった。

「靖子ちゃんのバカ!!」
「!千花…」
「靖子ちゃんも、洋もバカだ!!」

 それだけ言ってあたしはきた道を走って戻った。きょとんと目を丸くした靖子ちゃんとボクくんが目の端に写る。けれど今はどうしようもないことを言ってしまいそうで逃げるしかなかった。もう動けないと思っていた足はなぜだかフルパワーで動く。痛い、なんてことはもう頭の隅。どうして上手くいかないんだろう。二人とも1回話せばすぐにでも仲直りできるのに。人間関係は難しい。小さなころの友達はもう友達に戻れないんだろうか。

「なにやってんだろあたし…」

 後で靖子ちゃんに謝らなきゃ。一番バカなのはあたしなんだから。







獅子座の憂鬱



 



(4日目)
110522

:#
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -