「ねえ、お姉ちゃん家の隣は誰の家なの?」
「あぁ、あれはね、千花の家だよ」
「千花ちゃん?」
「私の幼なじみの女の子!1個年下なんだけど私達大親友なんだ」
「へえ、そうなんだ」









 ザザーンと波が流れる浜辺。秘密の砂浜、確か光ちゃんはここをそう呼んでいたっけ。服が砂だらけになることも気にせずあたしは寝転んだ。どうやらこっちにロケットは落ちてないらしい。夏休み前に飛ばしたヤツはこっちの方に飛んでってたからあると思ったんだけどなあ。もしかして海の中かな?この当たりはちょっと深いからあたしに潜って探すのはきついかもしれない。
 少しでも洋に協力してあげようかと歩き回った足が痛い。さすがに歩き疲れてしまったから休憩くらいさせてもらわないと。日焼けと熱中症対策にと被った帽子は今はもうとってしまった。家でロケットや機械ばかりいじってる洋よりもあたしは白い。たくさん日に当たっても焼けない体質だからあたしはヒリヒリと赤くなって痛んで終わる。でもこんなにいい天気なら太陽の日を浴びたい。

「気持ちいいなあー!」
「あれ?誰かいるの?」

 後ろの方からかわいらしい男の子の声が聞こえた。寝転ぶあたしに気づいた男の子はあたしの隣に座った。ああこの子、確か茜屋さんの…知り合いの子?いや茜屋さんの子?もしかしておじちゃんの隠し子?

「こんにちは、お姉ちゃん」
「こんにちはー。君は誰かな?」
「ぼくはボク。お姉ちゃんはもしかして千花ちゃん?」
「ボクくん?でいいのかな?確かにあたしは千花ちゃんです」

 「なんで『ボク』?」と聞くと「みんなぼくのことをボクって呼ぶから」とボクくんは答えてくれた。純粋な顔でそういうからあたしは思わず笑ってしまった。この子おもしろいかも。

「なんであたしのこと知ってたの?」
「靖子お姉ちゃんに聞いたんだよ」
「ボクくんは靖子ちゃんと仲良しかあ」
「うん」
「じゃああたしとも友達になろ!」
「うんいいよ」

 素直にこくこくと頷くボクくんはかわいかった。茜屋さん家の二人もやんちゃでかわいいけれどボクくんは素直でかわいい。友達になろうと言ったけれど弟ができたみたいな気分だ。砂浜から身体を起こしボクくんの頭に手を伸ばす。触り心地のいい柔らかい髪の毛をわしゃわしゃっと撫でた。

「わあ!千花ちゃんやめてやめて!」
「よろしくねえボクくん!」

 スカートの裾を直すとパラパラと白い砂が落ちた。こりゃ洗濯が大変かもなあと一人苦笑いしてボクくんを開放してあげた。困った顔で「千花ちゃんは意地悪なんだね」と言われる。「ひどいなー!」と笑いながら両手をあげれば「やめて!」と素早く言われた。

「ねえボクくん。ボクくんはここ、富海が好きかな?」
「うーん、まだ来たばかりでわからないよ」
「そっか。じゃあ夏休み終わるまでに絶対に好きになってもらうから!」
「千花ちゃんはここが大好きなんだね」
「うん。大好き。人も海も全部が全部大好きだよ」
「じゃあボクも好きになるようがんばるよ!」
「うん!がんばれ!」

 今度は優しくボクくんの頭をぽんぽんと軽く叩く。照りつける太陽と白い砂浜が眩しかった。





まっさらな砂浜にて










「あれー珍しい組み合わせだねー!」
「あ、サイモン!こんにちは!」
「こんにちは」
「うんこんにちは。二人の出会い記念に一枚どうだい?」
「うんとってとって!」
「じゃあいくよー?はいチーズ!」

(3日目)
110519
110522 ちょっと修正

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