大きな音を立ててロケットは空に向かい飛んでいった。この音は洋がロケットの実験をする度に聞いているけれど何度聞いても慣れることはない。びくっと肩を揺らし驚くあたしをタケシくんは「千花ちゃんかわいいなー!」と言いながら無邪気に笑った。小学生に笑われてしまうなんてと少し落ち込む。でもあたしなんかより洋の方がずっと落ち込んでいる。
 これで上手くいかないのは何度目なのだろう。あたしはロケットとか詳しいことはわからないけれど、洋はいつも授業も聞かず宿題もせずロケットのことばかり考えていて真剣につくっているから。その姿を見ればどれだけロケットをまっすぐ飛ばすのが大変かわかる。

「はあー、やっぱり上手くいかなかったかー」
「夏休みは始まったばかりだしさ、まだチャンスはあるよ」

 庭にしゃがみ込む洋の背中を元気づけるつもりでぺしっと叩くと「痛いよ千花」と洋は力なく笑う。そんなに痛くしたつもりはないのに。洋が貧弱なのが悪い。中学3年生にもなり洋はすくすくと身長を伸ばしあたしとの差は開くばかり。身長ばかりでかくなる洋は外で身体を動かすようなタイプじゃないし、むしろ机に向かいロケットの勉強!って感じだからひ弱って言葉がすごく似合う。そもそもここに住んでいてカナヅチって相当だめだと思うんだけど。何度も洋に泳ぎを教えたけれど全くだめだった。

「部品高かったのになあ」
「……リサイクルとかできないのかな?」
「ああ!それだ!ありがとう千花!」
「う、うん?」

 ぽつりと呟いたあたしの言葉に洋はがばっと勢い良く立ち上がる。そのまま肩をがしりと掴まれキラキラした瞳を向けらた。やる気がでたみたいだ。よかった。

「タケシ!シゲル!落ちたロケットを見つけたら僕に教えてくれる?」
「おう!まかせとけ!」
「わかったよ洋兄ちゃん!」

 タケシくんとシゲルくんはビシッと敬礼すると走っていった。あの二人がいれば百人力かも。だって二人はここの至るところを探検してるようだし、洋が取りに行けない海の中も簡単にいってくれるだろう。頼もしい二つの小さな背中にがんばれ、と手を振った。

「じゃあ僕も探しにいかなきゃ」
「だーめ!その前にすることがあるでしょう?」
「ええー?」

 ロケットを探しに向かおうと張り切る洋の手を掴みとめる。不満そうな顔をする洋に私は笑う。

「あ!さ!ご!は!ん!」
「あっ…」

 せっかくあたしが作ってあげたのに食べないなんて許さないんだからね。と言い二人で笑った。














青空を横切るロケット












(2日目)
110519

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