翌日、成岡くんの話が夢にでるくらいうなされたあたしは酷い顔だった。なんとか化粧で隠したから大丈夫だと思うけど普段化粧なんてまったくしないし、じっと見られたら分かる人には分かってしまうだろう。原因である成岡くんの太陽みたいな笑顔を思い浮かべ、はぁとあたしはため息をつく。寝不足でフラフラと倒れそうになる身体を無理やり動かしながら学校へ向かった。

 彼の言ったことを頭の中で整理してみたけれどやはりわけがわからなかった。彼はあたしを逆ハー主だと言う。そして質問の内容。あのおしゃべりな口から流れるようにでるキャラクター、転生。キャラクターというのはあの質問から察するに、ハルくんや精市くんのことであろう。ありえないけど。確かに彼らはリアルの人間かどうか疑うくらい顔立ちは整っているけれど、彼らはあたしと同じ三次元の人間だし。転生というのは彼、成岡くん自身のこと、かな? つまり彼の視点から見てみると、彼にとってはここは二次元で、ハルくんたちはキャラクターで、自分は二次元に転生トリップしてきた……駄目だ何度考えたってありえない。ありえない。大事なことだから三回言っとく、ありえない!もう!成岡くんのこと考えてると頭おかしくなる!

「それは恋じゃ」
「!!」

 びっ……びっくりした! いきなり聞こえた声に思わず肩を揺らしながら振り向くとハルくんがいた。朝から心臓にダメージを与えるのはやめてください。肉体的にも精神的にも今の一言はあたしの心を驚かせたよ。

「おはようハルくん……てかあたし声に出してた?」
「おう、ばっちりのう」
「うわあ変な子だ……てか恋じゃないよ!」

 無意識に口からでてしまうくらい今あたしは成岡くんに不信感しか抱いてないのだ。この気持ちが恋だなんていったら世の中の頑張って恋愛してる方々からパンチを一発貰えるだろう。恋愛舐めんな、と。

「ぶつぶつ言いながらフラフラ歩いてて危なっかしかったぜよ」
「ぶつぶつ言い始めた時点で止めてよ。どうせ後ろからニヤニヤ見てたんでしょ」
「ピヨ」

 じろりと睨むとハルくんはあたしから目を逸らし惚けたようにそういった。何よピヨって、ヒヨコなのか。小学生の時からソレ何と聞いてたけど一度も答えてくれたことはない。毎度はぐらかされてしまえばもう諦めてしまった。

「千花にもやっと明るい青春が来たんじゃなかと」
「暗い青春で悪かったね!」
「おおもっと謝りんしゃい」
「なんでよ!」

 この男、あたしを煽るのがそんなに楽しいか! じとっと睨むけどハルくんは相変わらずの涼しい顔。相変わらずイケメンだ……悔しくなるのは何故だろう。
 そういえば、成岡くんは補正がどうとも言っていた。補正、それは所謂逆ハー補正というヤツのことを言っているのだろうか。キャラクターが主人公を好きになる補正。成岡くん曰くあたしは逆ハー主。つまりハルくんがあたしのことを好き?

「ねえ、雅治さん」
「なんじゃ、気持ち悪い」
「あのさぁ」

 本気でやめろといいたげなハルくんの視線は無視。てか雅治さんもハルくんも同じくらい恥ずかしい呼び方だと思うんだけど。でも小さい頃からずっとコレだったから今更変えるっていうのも……って脱線しすぎてしまった。無視とか言っておいて意外とハルくんの気持ち悪いは心に刺さったらしい。気を取り直してもう一度。

「ハルくんはあたしのこと好き?」
「おう?好きじゃ」
「やっぱり?あたしもー……って、ええっ!?」

 すらっと答えたハルくんに思いっきり大きな声をあげてしまった。あたしもまったくムードもクソもなく聞いてしまったけど、そんな即答されてしまうとは!告白とかってもっと甘い空気があったりするものじゃないの!ていうかソレは告白なの? フラフラしながら学校に向かっていたはずの足は言葉の衝撃でぴたりと固まって動かない。隣にいたハルくんはあたしの4歩先にいて止まったあたしを不思議そうに見ていた。

「千花は遅刻したいんか?」
「したくない。今のはどういう、」
「友情に決まっとろう」

 あ、はい。ですよね。何故か安心してほぅ、っとため息をついてしまった。ハルくんって何を考えてるか今だにわからないから怖いよ。あぁ、でも、成岡の話は嘘だとわかった。やっぱり成岡くんはちょっと頭がクレイジーなだけなんだ。よしもう成岡くんの話は終わり! そう一人納得すると先に言ってしまったハルくんを急いで追いかけた。






愛する日常は












「あたしも好きだよ」
「そうけ。じゃあ昼奢ってくれると嬉しいいんじゃが」
「奢りませーん」


(110508)



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