開始





寒い。


水の冷たさに手がかじかむ。
酷使しすぎた手は、ところどころ切れたりともうボロボロだ。

それでも痛みに耐え皿を洗う。
こんな仕事にも、もう慣れた。







自分の家には親父がいない。
自分がまだ小さい時、他に女を作り出て行ったそうだ。
母もストレスで若い男をとっかえひっかえ。
そして、自分が高校生になったとき消えた。
家に帰ったら、机の上に通帳が一つと
ごめんね、という言葉の書かれたメモが一つ。
特に悲しくはなかった。むしろ、気を使わなくて済むと嬉しかったものだ。

毎月、少なめだが通帳に金は振り込まれていたし。
それでも、少し足りないからバイトを掛け持ちしていた。



バイトも終わり、挨拶をして帰る。
外に出て寒さに震えた。
こりゃあ、水も冷たい訳だ。

マフラーを口元まであげ、歩き出す。


明日は学校もバイトも無いし、ゆっくり寝たい。
そう思いつつ、家に帰りすぐさま布団に入る。

余程疲れていたのか、すぐに眠りに落ちた。

















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