「ザッハトルテって…作るの面倒だろ」

「ねーねー、アプリコットジャムって何?」


俺が知るか。
その前に人の話聞けバカ。無難にクッキーとかガトーショコラとか簡単そうなの色々あるだろ。


「鬼道がこれおいしいって言ってたから、これにしたい」


はいはい、鬼道クンね。
あんなドレッドゴーグルの何がいいのかねぇ。って俺が言ってもあれだけど。
つーか、何で俺が鬼道クンにあげるもん作んなきゃなんねえの。


「よし、作ろっか!」

「は?材料あんのかよ」

「!!!」

「ないのか」

「アプリコットジャムはない!」

「ダメじゃねーか!」


どんな物になろうと作るまで開放してくれそうにないし、こいつの親と顔を合わせるのは気まずい。ザッハトルテザッハトルテ…と恨めしげにレシピを眺めるなまえはほっといて作業に取りかかることにした。


「よし、やるか」


意気込んだはいいものの、卵の殻はわれないし、スポンジは膨らまねえし、変にひしゃげるし、半分に切ったつもりが斜めで、器具なんか揃ってるわけもなくクリームはうまく塗れねえし足りねえし、スポンジ持たされたと思ったら上から熱いチョコレートを流される始末。手首について思わず投げそうになったけど、なんとか我慢して皿に置いた。熱い!まじで熱い!ばかじゃねえの!


俺の手首という大きな代償をはらって
ザッハトルテもどきはようやく完成した


あとは表面が固まるまで冷蔵庫にぶちこんでおいたらなんとかなるはず。多分。なんかそれっぽいし。
お疲れと言って笑いながらなまえはケーキが乗った皿を冷蔵庫に持って行く。お疲れじゃねーよと返したら片手で冷蔵庫の扉を開けたまま動きを止めた。


「これあげるよ」

「は?」

「バレンタインですから」

「…ふぅん」


まあ、もらってやらなくもねーよ
鬼道クンにやるには勿体ねーから




悪魔のケーキ



「ね、あきお。美味しい?」

「まあ、うまいんじゃねーの?」



全部俺が作ったようなもんだけど。





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