ぽわんとチョコレートの良い香りが漂う。 あぁ、私何してるんだろう。時計を見ると、もう23時を示していた。佐久間くんから聞いた不動くんの大好きなお菓子。 お昼ごろから作っているけれど、なかなかうまくいかない。 改めて自分の不器用さを知らされたような気がする。 でも、これが最後なんだからきっとうまくいったはずだと思いつつラッピングをした。 不動くん受け取ってくれるといいんだけどなぁ。そう思いながらベットに入り目を閉じた。
とうとう14日の朝になってしまった。 貰ってくれるかなぁ。そう思いつつ雪で埋もれた歩道を歩く。 「あ。」不動くん。その言葉を閉じ込めて彼のところまで走った。 「不動くん、おはよう。」「ん。」いつも通りそっけない不動くん。そんなところも好きなんだよなぁ。 「不動くん。・・誰かからチョコレート貰った?」「あー、・・貰うかもな。」 ・・え、嘘。もしかして、私が知らないだけで不動くんって彼女がいるのかな。 じわっと涙が目じりに霞んだ。私、馬鹿みたい。ううん、きっと馬鹿だ。 そんなことを考えないまま貰ってくれるかなぁなんて考え、浅はか過ぎる。あぁ、もう不動くんと一緒にいたくないや。 「あ、そういえば私日直だった。ごめん、先に行くね。」声が震えた。 嘘だってわかるかな、わかってもいいや・・。そう思いつつ走ろうとしたら腕を掴まれた。 「不動くん?その、私。」「・・くれるんじゃねぇのかよ。」え。またまた私の思考は混乱してしまった。 「佐久間のやつから聞いたんだけど。」・・あぁ、そういうことか。 「・・はい。」そう言って袋を差し出した。中身は苦くて甘いパヴェ・ド・ショコラ。 「好き、です。」「・・俺も。」
(何だかんだで幸せ。)
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