「謙也さん、がっつきすぎすわ」

「…すみません」

だって久々やったし、とか。だってとかきしょいすわ。あんたそれでも先輩か。まあたしかに久々やったし。

「別にええですけど。…気持ち良かったし」

「……っ財前!!」

ぎゅって抱きついて、猫みたいに甘えてみたり。さっきまでは獣のように鋭い目つきしてたのに。

「くるしいすわ。離れてください」

「なんや、照れてかわええなあ!!」

そうやって表情がころころ変わるとことか、あほなとこも全部。俺はいつこんなにこの人が好きになったんだろ。

「……好き」

「お前いま好きて……っ俺も大好きや!!」

「なんや、うざい。そんなこと言っとらんわ」

「ええ加減素直になれや。いま間違いなくいっとたで?」

さっきまでのあほくさい声から急にえろい声になって。いつも俺の心をかき乱す。

「ほんとムカつく」

「そない赤なって言われても痛くも痒くもあらへんで、財前」

そんな偉そうな顔して、こういうときだけ調子乗って。どや顔すなや。腹たちますわ。

「もう消えてください、この世から」

「ひどっ!さすがに傷つくわ!」

「そんなもん自業自得すわ」

「意味わからんちゅーに!!」

そうやって、最終的には俺に勝てへん。口でぐらい勝っとらんと。こっちもいちお男やし。けど、少しやりすぎたかもしれん。せやから、今日くらいは。

「好きです、謙也さんのこと」

「…っひか!!!」

素直になってみよお思た。そしたら、また抱きつかれて首筋を噛まれた。そしてチクッと小さな痛み。

「そないなとこに痕残さんでください。明日学校なんですけど」

「光が素直になった記念や、大事にし!」

この人、人の話全く聞いとらん。まあそないなとこも全部好きなってしもたんやからしゃあないけど。というか、名前。

「謙也」

「なっ…!いきなりなんや!」

「呼んでみただけすわ」

「…ほんま心臓止まるわ」

俺だけこんな気持ちになるのは不公平やから。素直になれへんから、てか恥ずかしくてそれ以上はしゃべれん。

「まったくですわ」

「…なにがや」

謙也さんには絶対教えたらんけど、その言葉そのまんまそっちに返します。





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