チルコさま5 | ナノ


「……電話切った時、終わったって思ったでしょ。」
ぼくが目を逸らしたくなるくらい強い瞳で、彼女はぼくを見つめる。
「……あたし、まだ何も言ってないよ。」
夜の冷えた風が二人の頬を撫でる。
少し強めに吹いてきた風が、風上にいる真宵ちゃんの香水の香りを運んできた。
「真宵ちゃん、ぼくは――」
「だからすきって、いってるじゃない。」

ぼくの言葉を遮って、真宵ちゃんはぼくに抱きついてきた。
鼻を啜る音が、僕の耳元で聞こえる。
「忘れるワケないじゃん、こんなに大好きなのに。」
彼女の細い腕が、ぼくの身体をぎゅっと引き寄せた。
それに伴って、ぼくの思考が止まる。
「それでも、やっぱり別れたい……?」
そう言う真宵ちゃんの身体は、小刻みに震えていた。
きっとぼくが、それでも別れたいと言うのを恐れているのだろう。
けれど、今のぼくにはもうその選択肢は無かった。

「別れたいワケないだろ。」
ぼくは真宵ちゃんの背中に腕を回し、強く抱きしめた。
「あんなコト言って、ごめん。」
「なるほどくん……。」
真宵ちゃんの腕に、少し力が入るのが分かった。
「あたしこそ、寂しい思いさせちゃって……ごめんね。」





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