チルコさま3 | ナノ


「だって、全然連絡取れてないしさ……。」
淡々と、頭に思い浮かんだ言葉を声にする。
今、ぼくはどんな顔をしているのだろう。
「だったら――」
「それにさ。」
真宵ちゃんの言葉を遮って、ぼくは言った。
「真宵ちゃんがもうぼくの事なんか忘れちゃったんじゃないかって、時々考えてしまう自分が嫌なんだ。」
「………。」

ブツッ。

彼女からの返事は無いまま電話は切れ、受話器の向こうからは無機質な電子音だけが聞こえた。
「終わった……のか?」
繰り返し聞こえる虚しい音が耳に痛い。
これが恋の終わりならば、案外呆気ない終わり方だった。

「終わったんだな。」
ぼくはニット帽を目深に被り直すと、ベッドに倒れ込んだ。
どうしてだろう、別れを決めたのはぼくなのに。
さよならを切り出したのはぼくなのに。

「こんな終わり方って……。」

ぼくはどこまでワガママなんだろう。
閉じた瞼からは、熱い雫が零れ落ちた。
本当は、手放したくなんかなかったのに。
ずっと一緒にいたかったのに。
思う度、自分の行動が悔やまれた。
だけど、あのまま別れなければ、関係もきっと変わらないままだった。だから、これで良かったんだ。





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