中学生リボツナ25


「ねぇねぇ、リボーン君とコロネロ君は、誰かと打ち上げに行ったりするの?」

俺とコロネロは顔を見合わせた。数人で固まって、いそいそと寄ってきた女子生徒たちは、輝いた目をして俺たちに声をかけてきた。ほほを赤らめて、楽しそうに、口元はほころんでいる。いつもはきちんと結んである髪をほどき、しっとりと制服の上にこぼれ落ちていた。
教室のなかは、まだ体育祭の余韻が残っているのか、まだ帰ろうとする生徒はほとんどいなかった。仲のいい生徒同士が集まって、これから何をしようか、その話し合いだけで終わってしまいそうな雑談をいつまでも続けている。
外は雨だった。窓の外はまだ午後2時過ぎだというのに薄暗く、かえるのような匂いのする雨が、しとしとと地面に落ちている。

「ほら、リボーン君って団長だったじゃない?だからさ、もしかしたらクラスのみんなを集めて打ち上げに行くのかなぁって思ってたの」

真ん中にいる、一人の女子生徒が俺に期待の眼差しを向けていた。
知るかよ、と女子生徒の顔を見ると、彼女は睫毛が長いことに気がついた。綱吉も一重だから気がつきにくいけど、睫毛が長い。じっと見つめると、女子生徒の顔に、赤みが増した。

「…打ち上げ」

隣の席に座っていたコロネロに視線を移すと、コイツも同じように顔を赤くしてそっぽ向いていた。綱吉と同様、こいつも女子生徒への耐性がない。

「ごめん、今日はまっすぐ帰るつもりなんだ」

困ったように笑ってみせると、女子生徒たちは揃って残念そうに肩を落とした。

「ええー、そうなんだ」
「うん、ごめんね」
「そっかー、なんか用事があるの?」
「ちょっとね」
「そうなんだー。あ、でも、今日のリボーン君たちかっこよかったね」

…んん?

「そうそう、100メートル競争とか、めっちゃ早かったー」
「やっぱ足長いからかなー」
「かもねー、あたしも足長くなりたいなー」
「牛乳のめば?」
「給食に出てるもんね」
「えー、あんま好きくない」

話が終わったと思ったのに、女子生徒たちはここから離れようとしなかった。俺たちのことをちらちらと伺いながら、花のようにぽんぽんと話を咲かせていく。
俺は気づかれないようにため息をついて、雨の止まない窓の外を見た。

「ねぇねぇ、リボーン君とコロネロ君は、どう思う?」

俺は曖昧に笑った。
どうでもいい。






昼休みが終わった後、やっぱりというか予測通りに天候は崩れ始め、教師たちは慌てて体育祭のプログラムを詰めに詰めた。午後の部で最初に行われる応援合戦は一応敢行されたが、その後は急にクライマックスの紅白リレーへと変わり、その急展開に生徒たちはとても追いつけていなかった。リレーのためだけにあれだけ声を出して応援合戦をしたのかと思うと、力の抜ける思いだろう。
あれよあれよという間に紅白リレーも終わり、あっけなく体育祭は終わった。その頃には本格的に雨が降り始め、閉会式はなんというかもう、ぐちゃぐちゃだった。

「…俺、そろそろ帰るわ」

やっと女子生徒たちがお暇した後、コロネロはぐったりとした顔で腰をあげた。

「お前はどうすんだよ、コラ」
「もう少しいる」
「ツナを待ってんのか?」
「お前は帰っていいぞ」

コロネロが苦々しく笑った。

「のけ者扱いすんなよ」
「別にしてない」
「そういえば、お前ツナ絡みの問題は解決した?」
「…問題なんかねぇよ」
「なに照れてんだよ」
「照れてねぇよ」

早く帰れと手でしっしっと払うと、コロネロはにやにやしながらまた隣の席に座り、その椅子をがたがたと俺に近づけてきた。

「なに、きもい」
「うっせ。なぁ、なんでツナここに来ねぇの?」
「知るかよ」
「お前もいつもみたいに迎えに行かないしさ、…喧嘩?」
「してたら借り物競争で仲良く手つないでゴールなんかしないだろ」
「うはは、きも」
「殴るぞ」

コロネロは笑うことをやめなかった。こういうときのコロネロは、かなりうざい。本気で殴ろうかと、ちょっぴり考えた。
頬杖をつきながら、俺も帰りたいわと内心うんざりしてたらうざいコロネロ(略してうざネロ)は俺の肩をばんばん叩いてきた。

「まぁあれだ、仲直りしてこいよ」
「だから、喧嘩なんかしてねぇよ」
「なんで喧嘩したのかとか、そういうことは聞かねぇからさ、早めに仲直りしたほうが絶対いいって」
「だぁから」
「大丈夫」

コロネロがいきなり胸をはり、鼻息荒く俺に言った。

「大丈夫、お前がツナのことしか考えてないのと同じように、ツナもお前のことしか考えてないぜ」

ーーーコイツは一体なにを言っているのだろう、と俺は言葉につまってしまった。

「だからお前も、胸をはってツナに謝ってこいよ」

コロネロはめずらしく顔全体でにっこりと笑った。
その顔を女子生徒たちに見せれば、大喜びしてもらえそうな笑顔だと思った。

「コロネロ」
「なんだよ」
「お前の笑顔、気持ち悪いな」
「う、うっせーばか!人がせっかく…!」

俺は立ち上がり、机の脇に提げていた鞄を肩にかけた。

「ツナを、迎えにいってくる」

ありがとな、というと、コロネロは片手を上げて、「武運を祈る」などとおかしなことを言っていた。







2013/03/02

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -