中学生リボツナ22


リボーンとコロネロが仲良く(には見えないけど)ゴールすると、その付近でタオル待機していた女子生徒はわあと黄色い声を惜しみなくあげて歓迎した。
リボーンは笑っていた。外面がいいから。コロネロは困惑した。きっとこの状況に慣れていないから。
オレはスタート地点に目を向ける。かわいそうなことに、ゴール地点がきゃいきゃい騒いでいるため、次の二年生男子(ちっこい)がなかなか走りだせずにいた。火薬の音もまだ鳴らない。

「ありがとう」

リボーンが言った。

「…そのタオル、使ったらそのまま返してもらっていいですか」

同い年のくせに敬語を使う女子生徒。
その使用済みタオルをどうするんだろう、と笑顔を崩さないリボーンに目できいてみた。
リボーンは無視してタオルを首にかけた。
ピンク色のかわいらしいタオルだった。






リボーンはなぜかピリピリしていた。原因はいまいちよく分からない。聞いたってどうせろくな返事をもらえる気がしない。長年一緒にいるとそんなことまで分かってしまう。
そんで1日も経てば勝手に機嫌も直ることも学習済みだ。つまり放っておけばそれでいい。
元々リボーンの周りにはたくさんの人がいる。

「沢田」

応援席でなにをすればいいのか分からず、ブルーシートの上で体育座りを決め込んでいる時だった。
オレは驚いた。沢田なんて、オレのことを呼ぶ人は教科担当の先生くらいのもんだと思ってた。
体育座りのまま首を向けると、同じクラスの男子生徒と目があった。

「応援しねえの?」

名前も知っていた。山本。

「…なんか、今日暑くて」
「ああ、なんかむしむししてるもんなぁ」

…いや、その笑顔がまず眩しいから。
いやいや、というか、なんでオレ。

「隣座っていい?」
「え?」

山本が隣に腰つけてあぐらをかいた。ええー?

「水分とってる?熱中症ってこわいんだぜー」
「そ、そうかもね」
「オレさ、お前に一度話しかけてみたかったんだよね」
「は?」
「絶対おもしろいやつだって思ってたから」
「きょ、恐縮です」

白い歯をだして山本が笑った。
リボーンよりも笑顔の似合うやつだった。
山本の真っ黒な短髪がきらきらと光っていた。汗だった。そういえば、爽やかスポーツマンだからクラスの人気者なんだよなぁと思うとますます眩しく見えてきた。

「お前ってリボーンと仲良いよな」
「…まあ」

直視できなくなってきた。

「よくうちの教室にきてお前と話してたもんな」
「…そうだね」
「ふたりって同じ小学校だったとか?」
「幼なじみなんだ」
「へえ、なんかいいね」
「そ、そう?」

山本がにーっと眩しすぎる笑顔を深めた。

「俺、お前に赤マルチェックしてるから」
「へ?」
「次の借り物競走、がんばろうな!」

ーーーこれまた現実味のない時間だった気がする。

「…うん、がんばろう」

オレもちょっぴり笑った。山本がうれしそうに笑い返す。胸があたたかくなった。
わあ、とオレたちの後ろから、熱心な団員たちのものすごい声援がお腹の奥まで響いてきた。生徒たちの入門ゲートを挟んである、敵の応援席からも張り合うように惜しみない声援が飛んでいる。
体育祭だなぁ、としみじみ思った。
大きな桜の木の下に敷かれたブルーシートに、オレと山本は座っている。






オレの数少ない出番が回ってきた。借り物競走である。
スタート地点は、応援席の反対側のトラックから。応援席の目の前まで全力疾走で半周し、そこに用意されてあるカードを拾い上げてカードにかかれたものを調達してスタート地点に戻る。まぁみなさんが借り物競走を想像して頭のなかに出てきたもので大体正しいと思うんで大丈夫。説明おわり。
オレは不本意ながら背がちっこいので一番最初にスタートしなければならなかった。つまりもう位置についている。
カードになにがかかれているのか走者には全く知らされていない。イグアナとかかかれていたらどうしよう。

「いちについて」

おもちゃの拳銃みたいなものが空をさす。
オレのこぶしに力がこもる。

「ようい」

大きな音がして、オレは転ばないように思いきり駆けだした。
トラックを曲がり、すさまじい声援が飛び交う応援席前のもとへ。ちなみに現時点で4位という高順位。つまりビリである。
最後にぽつんと残った白いカードをオレは手に取った。小走りでカードにかかれてある御所望品に目を向ける。
ーーーオレの足が止まった。
意味が分からなかった。
そして理解した。
だから、だから男子の前に走り終えた女子たちに、リボーンは引っ張りだこだったんだ。
オレは困って周りを見回した。
他の走者たちは、スタート待ちしていた友達や、腕組みしていた先生を楽しそうに引っ張り上げていた。

『好きな人』

いやいや、そんな、無理だって。







2012/12/31

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