中学生リボツナ21


厚ぼったいどんより雲を学校側は華麗にスルーして第四十五回並盛中学校体育祭を強行した。
校長の挨拶には、お決まり文句である「みなさんの元気でどんより雲を吹き飛ばしてしまいましょう!」とあったが、できるかと内心思った。午後からの降水確率は驚きの80%である。
さて、どうせ数時間後にはままならないであろうこの体育祭は、全学年のA組とB組が競い合う行事である。つまり紅白戦である。俺とコロネロは同じ赤組で、綱吉は白組で今日だけは因縁の相手ということだ。
いま行われている競技は「100メートル走」。校庭のグラウンドを端から端まで走るような感じだ。この学校の校庭は非常に可愛らしいサイズなのである。
この競技は背の順で次々にスタートしていくため、背のちっこい綱吉はとっくに走り終え、見事だんとつのビリッケツで数少ない個人種目を終えた。たしか後は借り物競走しか綱吉の見せ場は残っていない。未来の彼女に申し訳たたないのではないのかとすこし気味がよくなった。俺って性格悪いのかもしれない。

「ツナのやつ、ほんと期待裏切らねえよな、コラ」

にししと変な笑い声を出してコロネロは言った。不本意ながら背格好がほぼ同じなため、こいつの隣でスタート待ちしなければならない。
しかもスタートするまでの間はしゃがみこんで待っていなければならない。これが非常に辛い。いっそのこと地べたに座り込んで待機していたいが、校庭のグラウンド特有のわかめのようなアメーバのようなものが広がっている地面に座りたいやつなんてどこにもいない。綱吉はふにゃふにゃになった足のままスタートし、見事に転んで周りの失笑を買った。

「あんなんなるまで足しびれてたんだな」
「…アホだからな」
「うわ、ツナに言いつけてやろ」
「どうぞご勝手に」

火薬がはじける音がする。
グラウンドの向こう側では、全学年の女子が黄色い声援で男子の志気を高めている。ちょっと興奮し、その気になる男子。
どいつもこいつも、と思う。

「…なんかお前怒ってね?」

コロネロを見る。しゃがんで身体を丸めているのがつくづく似合わない男だと思う。

「なんで」
「ツナが言ってた。なんかピリピリしてるって」
「怒ってねえよ」
「いや怒ってんじゃん」
「うっせ」
「なんで怒ってんだよ」
「知らね」
「あ、もうすぐ俺たちの番だぜ、コラ」

すぐ目の前にいたやつらが立ち上がり、スタートの位置につく。
位置について、ついてます。
ようい、できてます。
どん、火薬のはじける音。
女子の黄色い声援。
…くだらない。

「見てみ」

コロネロがゆっくりと立ち上がる。

「ゴール付近に、タオル持ってる女子がいる」
「知ってる」

俺も腰をあげる。背骨が鳴る。ふにゃふにゃではない。綱吉じゃないから。

「同じクラスのやつもいる。お前待ちなんじゃね」
「知るか」
「てかさ、最後に同じクラスの二人だけ残されたレースってどうよ」
「背がでかすぎてハブられたんだろ」
「うわ、最悪すぎる」

コロネロが笑った。
最近よく笑う。

「…分かりやすいよな」
「なにが」
「どうせ、ツナ絡みなんだろ」
「は?」
「分かりやすいよな、お前って」

スタートの位置につく。
用意はなんもしてない。
でも走る。中学生だから。

「…ツナに、リボーンは素直だけど外面がいいからイライラするって言われたことがある」
「はは!」

どん。





2012/12/31

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