2013 | ナノ


カタン、とドアの開く音が聞こえた。それにびくりと反応して頭まで毛布を被り恐る恐る首だけ出すと、くつくつと可笑しくて堪らないというふうに笑っているプロシュートがいた。馬鹿にされているような感じに少しムッとしたけれど、それでも安心してしまったのだから仕方ないだろう。そっと毛布から手を離して、両手をプロシュートの方に突き出す。それに更に可笑しそうに笑いながら、しっかりと両手を絡め取ってくれた。
「そんなに怖がるなら見なきゃ良かったじゃねーか」
「だ、だって……」
そう、何故こんなにびくびくしているのかと言うと、ありがちだけれどホラー映画を見たからなのだ。プロシュートはそっと私の隣に腰掛けて、両手を一度解くとぎゅっと抱きしめてくれた。中々小柄な方である私は、こうやって抱き締められるとすっぽりとプロシュートの中に納まることができる。四方を守る様に固められたこの体勢は、何よりも安心できるものであった。
「もっと、ぎゅーってして」
「はいはい」
いつもよりも素直だからだろうか、どこか上機嫌なプロシュートは鼻歌まで歌いだしそうな勢いである。言った通りに腕の力を強めてくれて、その逞しい胸板に頬を擦り付けるようにしてさらに距離を埋めれば、頭の真上に来た喉仏からくつくつと笑い声がくぐもって聞こえた。
「オレの背中に腕を回しちゃくれねェのか?」
「ごめんそれは無理許して」
だって自分からもプロシュートからも見えない死角に腕を持っていくなんて、今の心情じゃとてもじゃないができやしない。そりゃ残念だ、と大して残念そうでもない声で呟くのを聞きながら、申し訳程度に彼の胸元のシャツを握り締める。とん、とん、と一定のリズムで叩かれる背中が心地よくて、少しずつ恐怖心も薄れてきた。
「大丈夫か?」
「うん、今は大丈夫」
プロシュートがぎゅーってしてくれてるから、と少し浮つき始めた意識で言えば、ぴたりとその動きが止んだ。どうしたのだろうと、もぞもぞと頭だけを動かして顔を覗き込む。そこには、びっくりするくらい嬉しそうな表情が浮かんでいて、私が動けなくなってしまった。その綺麗な顔に蕩けそうなほど幸せな笑顔を浮かべるのは本当に反則だと思う。さっきまでのホラー映画の映像なんかすべてぶっ飛んで、代わりに頭の中をその笑顔が 占領する。
「プロシュート、すっごい顔してるよ」
「うるせェ、嬉しんだよ。悪いか」
拗ねたような顔を浮かべるけれど、それでもまだ口元がにやけているのが分かる。頬に寄せられた片手にすり寄れば、むにむにと遊ぶように柔くつままれた。同じようにプロシュートの頬にも手を寄せてむにむにとしてやれば、一度にやりと笑って、顔を寄せてきた。開いたままの彼の目に映り込んだ私も、彼と同じくらいふにゃふにゃの顔で笑っていた。結局お互いがお互いにベタ惚れなんだと気が付いて、それならそれでいいやと唇に感じる熱にそっと目を閉じる。いつのまにか私の腕は、プロシュートの首にしっかりと巻き付いていた。



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