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▼ 心地良い重量

ムスッとした顔でなまえはオレを睨みつけた。アジトに戻って玄関を開けてすぐいこの状況なので理解が追い付かない。どうして、こんなことになっているのだろうか。ただいま、と言えばおかえり、と返事が返っているあたり、怒り心頭と言うわけでもないようだ。となると、一体何なのか。
「なまえ?」
「何?」
「中に入れてもらえるとありがたいんだが」
「……ふん」
もう一度じろりとオレの顔を睨みつけてから、なまえはとてとてと中に入って行った。それに続くようにして中に入ると、なまえはソファーに座って、それでもまたオレの顔を睨むように見始めた。本当になんだというのか。どうしたものかと扱いに困って、なまえを見返しているとふと気が付いた。少し、頬が膨らんでいるような気がする。もしかして……
「拗ねているのか?」
「……。」
そろそろとなまえが眼を逸らす。正解のようだ。しかし、今拗ねていると分かったところで、その原因が分からないのでどうしようもない。何が、なまえを拗ねさせることになったのか。考えてみたが、答えは出てこない。仕方なく、尋ねてみることにした。
「どうして拗ねている?」
「……、それ聞く?」
「考えたがわからないんだ」
戻ってきた視線は、どこか避難染みた色を含んでいた。そんな目を向けられても心当たりがないのだから仕方がない。
「オレに原因があるんだろうとは思うが、わからないんだ」
「……」
「お前がどうしてそんなに拗ねているのかが知りたい。教えてくれないか?」
「……バーカ」
じーっと目を見つめながらそう言えば、一瞬目を見開いて、すぐに顔を逸らしてしまった。その頬にじわじわと赤みがさしているのが分かる。どうやら照れているようだ。そんなこと聞くなよ、なんて口汚く言っても、そんな表情をされたら愛らしいもの以外の何物でもない。今なら隣に座っても大丈夫だろうかと、なまえの横に移動して腰を下ろせば、予想外にも、なまえは抱きついてきた。
「リゾットが、黙って出て行っちゃうから」
「……、」
「気づいたら一人ぼっちで…。寂しかったの」
「……すまない」
「バカ、ばか、」
「オレが悪かった」
ぐいぐいと強く抱きついてくるなまえの顔を上げさせてみれば、その眼には涙が浮かんでいた。どうしてこんなにも愛しいのだろうか。少し、酒を買いに行っていただけなのに。たった10分ばかりの時間、離れていただけなのに。こんなにも自分を恋しがってくれると言うのは、男冥利に尽きるんじゃないだろうか。これが重いという奴だっているかもしれない。けれど、オレにとってはこれくらいがちょうどいい。
「もう二度としない」
「……本当に?」
「ああ、なんだったら神に誓ったっていい」
「信仰してないくせに」
ようやくくすくすと笑ったなまえに、ホッとしながら、まだ眦に残っている涙を唇で拭ってやれば、くすぐったそうに身を捩った。その小さな体を強く抱き締めて、胸の中に閉じ込めてしまう。確かに、この温もりが黙って離れていけば、オレだって怖くなるかもしれない。
「愛してる」
「ご機嫌取り?」
「まさか。本心だ」
「冗談だよ。私も愛してる」
先程までとは打って変わって、楽しそうに戯れてくるなまえの顔中にキスを落としながら、ソファーに押し倒す。今までの何よりも愛しいなまえに、謝罪と心からの愛をこめて、その唇に噛み付いた。


心地良い重量
(こんなに心地良い愛は)
(一生手離せない)



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企画参加、ありがとうございました!
「リゾットと重い愛」というリクエストでした。重い愛、大好きです。美味しいです。それをリゾットでリクエストしてくださったあなたが大好きです。書いててとても楽しいお話でした!もし、気に食わないところ等がございましたら何なりとお申し付けください!
それでは企画参加、本当にありがとうございました!また機会があれば、ご参加ください!

121202 トレオ




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