パードレと一緒 | ナノ
「こらリナルド、それは口に入れちゃ、めっ」
「あうー」
「ぺっ、しなさい」
「むー!」
「よしよし、ほら、代わりにこれどーぞ」
「うむー」
いい子いい子とリナルドの頭を撫でる彼女を新聞越しに見つめる。
この家に新しい命が生まれてどれくらいたったのだろうか。まだ赤ん坊である息子は、いつも彼女の手を煩わせているようだけれど流石母親と言ったところだろうか。オレよりは随分と手馴れていて、軽々とこなしているようにさえ見える。当たり前か。久々の休日、家でのんびりとしていれば息子と嫁の戯れる声ばかりが聞こえて、仕事の疲れもどこ吹く風だ。日当たりのいい場所で微笑ましい光景を目に焼き付けていれば、遠くからピーと音が響いた。
「あ、洗濯機止まった。リゾット、リナルドの相手してあげて!」
「ああ」
「あ"ー!」
オレにリナルドを預けると、さっさと部屋を出て行ってしまった。腕の中に抱いた小さなそいつは、見慣れた人物が消えたからだろうか、泣き出してしまった。おい待て、オレは父親だぞ。
「ああああああ!」
「泣くな泣くな」
「うああああ!」
見よう見まねであやす様に揺すってみるが、一向に泣きやむ気配がない。むしろひどくなっている気がする。手を突っ張ってオレの顔を、退けお前じゃない母親を出せと言わんばかりに押しのけてくる。家にほとんどいない父親など他人同然とでも言いたげなその行動に心が折れそうになって、少し眉を顰めた。そうこうして困り切っていると、洗濯を終えた彼女がくすくすと笑いながら戻ってきた。
「なあにパードレ、嫌われちゃったの?」
「……そんなことはない」
「はいはい。リナルド、泣かないの」
優しい笑顔を浮かべてまだオレの腕の中にいるリナルドの頬を指先でくすぐる。その指をリナルドが掴みながら彼女に向かって手を突き出す。本当に嫌われちゃってるじゃない、と更に楽しそうに笑いながら彼女はリナルドを自分の腕に戻した。途端に泣き止むリナルドを恨めしく見ていれば、彼女が提案をする。
「今日一日、リナルドに引っ付いていれば人見知りされなくなるよ、たぶん」
「確信はないのか」
「誰かによく似て用心深いからね」
「それは困ったな」
きょとんとした顔でオレを見上げるリナルドの頬をくすぐってやれば、先程彼女にしたように、小さな手でオレの指を掴む。その仕草に口元を緩めれば、彼女はまた幸せそうに笑い声をあげた。
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