パードレと一緒 | ナノ
泣き喚くロッコを必死で泣き止まそうとしているギアッチョの声が耳に届く。きっとキレるにキレれなくて、とても複雑な心境で頑張っているのだろうと思うと笑いが抑えきれない。
「ちっくしょ、なんで泣きやまねーんだよ!」
「うあああああん!」
「ああああ、悪ィ、大声出しちまった」
そんな声が聞こえてきて、それにしても中々泣き止まないものだと思っていると、ふと時計をみてその泣き声に聞き覚えがある気がした。あ、お腹減ってるのかもしれない!そう思って、皿洗いを中断すると、二人のいるリビングに足を踏み入れる。
「こいつ泣きやまねーんだけど!」
「ありがと、ギアッチョ。もしかしたらお腹すいてるのかも」
「腹ぁ!?」
もはや焦りすぎて言葉の理解が追い付いていないらしい。しかしロッコがお腹すいているというのなら、ギアッチョのことなんて気にしていられない。服を上げて、胸を出すと、途端にギアッチョが顔を逸らす。何を今更。それを傍目に少し笑いながら、泣くロッコを抱き上げて飲むように促せば、ぴたりと泣き止んで大人しくミルクを飲み始めた。
「お、おま、突然胸だ、だすな、」
「ごめんね、ロッコ。お腹すいてたんだねー」
「話聞けよ!」
「ギアッチョ、しー!」
「ぐっ……!」
こちらも大人しく顔を赤くしながら黙ってしまう。けれど暫らくすれば落ち着いてきたのか、まじまじとロッコの様子を見てくるものだから、今度は私がなんだか恥ずかしくなってきて。そんなに見ないでよ、と言いながら背中を向ければ、今さらだろ、と後ろから抱き込まれてしまう。確かに私もさっき思いましたけどね。ロッコの体の下に回している手を握りながら、ギアッチョは私の肩に顎を乗せて一生懸命に食事をするロッコを見つめた。
「……かわいーな」
「かわいーね」
「む、ふ、」
もきゅもきゅと飲み続けるロッコを二人して観察する。ちらちらとこちらをみるロッコに微笑み返せば、またミルクを飲むのに一生懸命になって。それを見ていたギアッチョが私の頬に口付けてきた。
「うわ、珍しい」
「うるせー。……すっかり母親だな」
「それはギアッチョだって。さっき奮闘してた姿、パードレだったよ」
「当たり前だ」
くすくすと二人で笑い合えば、自分も混ぜろと言いたげにロッコが唸り出して、それに気づいたギアッチョがロッコのほっぺたを突きながら、なんだよ息子、と呟いた。その横顔を見て、ギアッチョも随分と穏やかになったなと思う。この間会ったメローネだってつまらなさそうに呟いてた。
「お、もう腹一杯みたいだぜ」
「あ、本当だ。よしよし」
服を戻しながらロッコを縦に抱きかかえると、背中をぽんぽんと叩いてやる。ギアッチョが不思議そうに見ていたけどロッコがゲップをするまで続けて、もう一度横に抱けば私の手に添えるようにギアッチョの手が重なった。
「ちいせーな」
「そうだね、まだちょっとしか経ってないもん」
「これからでかくなるのか」
「きっと天パになるよ、この子」
「けど男は母親に似るって聞くぜ」
ふわふわと二人で未来予想図を描いてみれば、穏やかな時間が流れる。ほんの数年前はでは、この予想図の中に二人しかいなかったのに、今じゃ三人に増えていて。幸せだな、と思っていればギアッチョの手が顎に回って、そのまま顔だけ後ろに向かされた。
「聞いてんのか?」
「ごめん聞いてなかった。もう一度お願い」
「あ"ー!だから、愛してるっつってんだよ!」
「なんで怒ってるの」
キレるギアッチョに笑えば、舌打ちとキスをもらった。手元に視線を移せばいつのまにかロッコは夢の世界へと旅立っていて、すやすやと可愛い寝息だけが耳に届いていた。
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