パードレと一緒 | ナノ
何が面白いのか、もぞもぞと動く自分の手を見つめるセレーナ。彼是十分以上続くそれをずっと見ている私も暇人なのだろう。けれどそんな他愛ない仕草でさえ、我が子というのは愛らしくて仕方がない。ほぅ、と感嘆のため息を吐けば、隣で旦那も同時にため息を吐く。
「可愛いもんだな、娘っつーのは」
「そうだね」
今日はゆっくりできるというので家にいるプロシュートは、一日中触れ合える娘が愛しくて仕方ないといった様子である。それが面白くて私もセレーナのベビーベッドを囲っているのだ。綺麗な顔をだらしなく緩めたままその眼はセレーナに釘付けになっているプロシュートは、きっと将来親バカまっしぐらコースで間違いない。
「あー」
突然セレーナが手をプロシュートに向かって伸ばした。それに応えるようにプロシュートが身を乗り出せば、セレーナはその顔をべたべたと触り始めた。その行動に私が驚いていると、プロシュートがどうしたのかとこちらを見る。
「嘘……」
「なんだよ、そんなに驚いて」
「わ、私でもそんなふうにしてくれるのに時間かかったって言うのに……!」
「そりゃお気の毒」
愕然とショックを受けて立ち止まる私に、誇らしげにドヤ顔を向けるプロシュート。それだけでも悔しいと言うのに、さらに追い打ちをかけるように、セレーナがじゃれるようにプロシュートの手を掴んで楽しそうに笑う。何これ辛い。調子に乗ったプロシュートがセレーナを抱き上げた途端、セレーナの表情は強張った。
「え、」
「……わぁああああ!」
大声で泣いて暴れ出したセレーナにプロシュートが呆然と固まる。ショックでセレーナを落としかねない彼の腕からセレーナを奪い取って、今度は私がドヤ顔する番。よしよしとあやしてやれば、すぐに泣き止んで私に手を伸ばすセレーナ。ああ、可愛い!
「ど、どーいうことだ……」
「まあ、これがマードレとパードレの差ね」
「う、嘘だ!」
「お気の毒様」
先程のプロシュートと同じように返してやれば、悔しそうに下唇を噛んで睨みつけてくる。ちょっと、セレーナの前でそんな顔しないでよ。
「パードレは怖いでちゅねー」
「うー」
「ほら、セレーナも怖いって」
「っ、くそ!」
ついに拗ねて部屋を出て行ってしまったプロシュートに、笑いが止まらなくなる。きょとんとしているセレーナに毛布を巻きつけてあげて、可哀相な旦那様の背中を追いかけることにしてあげた。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -