2013 | ナノ
愛と言うのは、人にやすらぎを与えるのではないだろうか、と思わずにはいられなかった。今、膝の上で寝息を立てている愛しい人は警戒心を感じさせない安心しきった顔で眠っている。普段の厳つい表情だとか、鋭い目だとか。そういうものが消えているこの人の顔は、本当に愛らしくって仕方がない。……まあ、本人に言えばこの上なく機嫌が悪くなるのだけれど。
強すぎる天パのせいでもはや何かの模様ではないかと言うくらいくるくると円を描いている髪の毛に触れる。思いの外柔らかいそれは指先を楽しませてくれた。あまりに無防備なこの姿が可笑しくて、鼻を摘まんでみたりして暫らく遊んでいた。それでもそろそろ限界が来て、足も痺れてくる。ギアッチョが身じろぐたびに小刻み走る感覚は何とも言えずむず痒い。揺すれば確実にその衝撃が自分の足に回ってくるしどうしたものかと考えていれば、ふと思いついた。ベタだな、と思いながらもギアッチョの眼鏡を外す。より幼く見える寝顔に、頬を人撫でしたのち、唇を重ねた。目を覚ましてくれないかな、と彼の閉じられている目の方へ視線を寄越せば、ばっちりと合ってしまった。起きた。それを確認して、一度彼の唇を一舐めすると顔を離す。
「おはようギアッチョ」
「ああ」
ぼりぼりと首の後ろを掻きながら気怠げに上体を起こすギアッチョの耳が少し赤い。自分でもそれに気付いているのか、くすくすと笑えば、黙れ、と言いながらキッと睨んできた。怖い怖いと両手を上げて降参のポーズをとれば、それを掴んでソファーの背もたれに落ち着けられる。
「寝起き襲うなんてたいそうなご趣味じゃねェか」
「ふふ、でしょ」
実際は内心冷や汗だらだらなわけだが、表面上は余裕ぶったポーカーフェイスを張り付けておく。それでもすぐに強がりだと気付かれたらしく、にやりとギアッチョの口角が上がっていくのが見えた。やばい、と思った時には時すでに遅し。胸元の服に噛み付いたギアッチョがそれを噛み千切っているところだった。本当に獣のようなその行動に、またか、と諦めの溜め息を吐く。服がなくなった胸元に口付ける姿に声を掛けた。
「ねえ、口にはしてくれないの?」
「さっきテメェからしたじゃねぇか」
「わたしは、ギアッチョからしてほしいのに」
ねえ、と固定されて自由に動かすことのできない手首を少しだけ揺すってみる。じっと見上げてきた視線と交差したとき、おねがい、ともう一度掠れた声で強請ってみれば、一度大きく舌打ちして噛み付くようにキスをくれる。それが嬉しくて開けたままだった目を細めれば、これまた開いたままの目を細めながら見つめ返してくる。頭を固定するために離された片手を、ギアッチョの頬へと持っていけば、口の中を動き回る舌が速度を緩めた。目を閉じて、ギアッチョの与えてくれる幸福を感じることに意識を集中させれば、頭を優しく撫でられた。愛してる、なんて台詞は聞けないけれど。この上なく心地良く感じる場所は、この愛しい人の腕の中だ。
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