title | ナノ
本日最後の授業の終了を知らせるチャイムが校内に高らかと鳴り響く。終わりの挨拶もそこそこに名前は適当に教材を鞄に詰め込んで教室を飛び出した。ダッシュで校門まで走って、まだその場所に待ち合わせの相手が来てないことを確認すると、門に背を預けてぞろぞろと校舎から姿を現し始めた生徒たちに目を向けた。
「なあに名前、また仗助くんと帰るの?」
「うらやましぃ〜、名前の何が良かったのかしら」
「本当よ、私のほうが絶対可愛いのに」
「ひどいね、皆」
きゃいきゃいと口々に思ったことを言っていく彼女たちに苦笑いを浮かべて手を振って見送る。いじめられたり陰湿なことをされないだけ全然良い。また苦笑して去っていく彼女たちの背中から生徒たちのほうに視線を移した。
「お、また仗助と待ち合わせか?」
「青春してんな」
「いいでしょ」
次に声を掛けてきたのは、仲のいい男子たちだった。ウフフと笑って返せば、気持ち悪ィ、なんて笑うので取り敢えずその腹を殴ってみる。ギャーギャーいうそいつらを相手していると、女子に囲まれた仗助が不機嫌そうに近寄ってきた。
「お、彼氏様のおでましだな」
「ちくしょー名前、覚えてろよー」
ケラケラと笑いながら彼らに手を振って、仗助のほうを見れば、仗助の周りにいた女の子たちも、私を睨みながら仗助から離れていくところだった。
「待たせちまったか?」
「ううん、早く来すぎちゃったの。気にしないで」
そういって笑いながら仗助の手を取れば、ようやく仗助の纏う雰囲気が柔らかくなった。それに気づかれないように小さく息を吐く。何をそんなに不機嫌になるのか。仗助だってたくさん女の子に囲まれてるくせに。しかも、仗助に恋愛感情抱いてる子たちばっかり。私のほうが不機嫌になりたいよ。
「カフェ・ドゥ・マゴ、寄ってくか?」
「あ、新作のオレ出たんだって!行こうよ」
「ほいほい」
けれど強く握り締めてくれる手が嬉しくて、すぐに私はご機嫌になる。現金ですとも。



カフェ・ドゥ・マゴに着いて、二人で適当な席に座ってお目当てのモノを飲んでいると、近づいてくる大きな影があった。誰だろう、と見上げれば、首が痛くなる位置に顔が見えた。
「承太郎さん!?」
仗助が驚いたように名前を呼んだ。ああ、そうだジョータローさんだ。仗助から話だけ聞いたことがある。こんなとこで何してんスか、と仗助が聞けば、ちょっと観光がてら歩いていたんだ、と渋い声で答えてみせる。まじまじと顔を見て気が付いたが、すっごい男前だった。仗助と張るんじゃないかなぁ、いや、まあ、仗助のがいいけど。と色眼鏡で見ていると、優しくジョータローさんが笑った。うほ、いい男。
「はじめまして、だな。オレは空条承太郎だ」
「あ、えと、初めまして、名前です」
どーも、と握手を交わせば、どこからともなく痛いほどの視線を感じた。恐る恐る源を辿ってみれば、まあ当然というか、すっごい眼力で睨んでくる仗助がいた。それに気が付いたのかジョータローさんが、可笑しそうに聞いてきた。
「君は、仗助とはどういう関係なんだ?」
気づいているだろうに、意地の悪い質問をする人だ。照れて詰まっていると、仗助が痺れを切らして、グイッと私を引き寄せた。
「オレの彼女ッスよ」
「だろうな」
ムスッとして言う仗助にククク、と笑いながら鍔を握って帽子を深く被った。それよりも後ろから抱きしめられている今の状況が恥ずかしくて、私の体の前で組まれた仗助の手をポンポンと叩く。それを見てさらにジョータローさんが笑った。いい性格してますね!
「じゃあ何もねェし、邪魔者は退散するぜ」
じゃあな、と背中を向けるジョータローさんに仗助が忌々しげに視線を向ける。茶化されて何とも言えない気持ちでジョータローさんの背中を見つめていると、不意に視界が真っ暗になった 。
「他の男、見てんじゃねェよ」
完全に機嫌を損ねた声が聞こえて、思わず吹き出してしまった。私の目を押さえている仗助の手に、私の手を重ねて、機嫌を取るためと、何より言いたくて仕方ない言葉を小さく呟いた。
「私が好きなのも、見ていたいのも、仗助だけだよ」
バッと手が除けられて明るくなった視界の中に、幸せそうな仗助の顔が見えた。



他の男を見てんじゃねぇ、と視界を奪われ何も見えない


(……やれやれだぜ)
(遠くで見ていた男が呆れているとも知らず)
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