title | ナノ
「あれ、次の時間ってなんだっけ?」
隣の席の億泰に聞けば、えーっと、なんだっけなァ、と頭を捻らせている。ダメだ、聞く相手間違えた。そう思って近くを通りかかった別の子に話しかける。
「ねぇねぇ、次って何?」
「あー……、次はあれだ、保健で、映画見るから移動教室」
「そうだったそうだった、ありがとう!」
教えてくれた彼に笑いながらお礼を言えば後ろからぐい、と手を引かれた。少しむすっとした顔の億泰が、さっさと準備しろ、と言う。はーい、と軽く返事をしながら後ろのロッカーから授業用ノートと教科書を引っ張り出す。するとたまたま横にいた男子が、今日それいらないぜ、と教えてくれた。マジか、と返しながらそれらをもとに戻して、筆箱だけ引っ掴んで億泰のもとに走る。元々億泰は何の授業だろうと受ける気はないから手ぶらで準備が早いのだ。
「おまたせー」
「……行くぜ」
まだどこか不機嫌な億泰に少し笑って、手を掠める。ごめん、と謝って手を引っ込める。億泰も何も言いはしないが、照れたように手を引っ込めている。そうやって歩いていると、仗助が、相変わらず熱いッスねェー、と億泰を茶化す。その挑発に易々と乗ってしまった億泰が、うっせー!と逃げる仗助を追いかけて行った。取り残された私に友達が寄ってきて、向こう着いたらどこ座るー?と話しかける。そういえば自由席だっけ。
「うわ、それだったらさっさと行かないと後ろとられちゃうじゃん!」
「ホントだ!名前、走ろう!」
きゃいきゃい騒ぎながら、視聴覚室の扉を開く。中に入れば、もうほとんどの席が埋まっていて後ろに座れそうな気配はない。仕方ないか、と友達と一緒に前のほうの席に座ろうとすれば、後ろからずかずかと億泰が近づいてきた。何事かと見ていれば、ぐいっと名前の手を取って後ろに向かって歩き出す。
「え、ちょ、ちょっと何?」
「お前の席はここだろ?」
そういって億泰の隣の席に座らされる。真っ赤になって困ったように友達を見ればニヤニヤと笑ってて、口パクで、お熱いね、なんていってくる。うるさい、まず付き合ってないもん。じろりと睨み返せば、友達は早々に適当な席に座ってこちらに背を向けた。それよりも、
「億泰くん、」
「……ンだよ。嫌とは言わせねーぞ」
「そうじゃなくて、手」
繋がれたままの手をぶらぶらと振ってやれば、更に強く握りしめられる。それが恥ずかしくて振りほどこうとすれば、何がどうなったのか、いつの間にか恋人繋ぎになっていた。名前が更に赤くなれば、億泰は楽しそうに笑った。
「オレの隣以外、許さねェ」
愛おしむように見つめられて、もう名前は黙り込むしかできなかった。



お前の席はここだろ?と手を引かれ隣に座らせられる

(こんなの億泰くんじゃない!)
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