2012 | ナノ
眩しい光が窓から差し込んでくる。妙に肌寒いと思ったらカーテンを閉めずに寝ていたのかとため息を吐いた。折角休日なのだからもう少し寝ていたいところだとカーテンに腕を伸ばそうとして気が付いた。……腕が動かない。そして私の目の前に腕が伸びている。自分の腕かと思っていたが感覚的に間違いなく両腕とも布団の中でぬくぬくとしているはずだ。となると、
「……露伴、」
「ん……」
首だけ捻って無理な体勢で後ろを向けば、そこにはぎざぎざのバンドを除けた幼い寝顔の露伴がいた。彼を視界に入れた瞬間、昨日のことを思い出す。そういえば昨日はクリスマスイブだからと、そういったことには興味がなさそうな露伴から珍しいお誘いがあって、無駄に豪華なこの家に泊まりに来たのだと思い出す。
そしてそのまま冬にしては熱い夜を過ごしたのだから、肌寒いのはカーテンが開いていることだけが原因ではないようだ。全裸ですもの。申し訳程度に露伴のシャツを着てはいるものの、今の体の体温を保っているのは上にかかっている毛布と背中から伝わってくる露伴の温もりだけである。これでは寒くて当然である。
はあ、とため息をひとつ溢すと体に絡まっている腕を少しだけ浮かせて、くるりと露伴の腕の中で寝返りを打つ。もちろん、回転する前にカーテンを閉めることは忘れない。薄暗さを取り戻した部屋の中で、穏やかな露伴の寝息だけが聞こえてくる。
露伴の寝顔を暫らく眺めていて思ったのだが、この男は漫画家にしておくのはもったいないくらいに整った顔をしていると思うのだ。もっと言えば身長も低いわけではないし、財力だって人気漫画家という地位だっていある。それなのにモテないのは如何せん、この難有りの性格のせいだろう。
「……もっと言葉を選べばいいのに」
昨日の露伴の誘いの言葉を思い出して思わずそう呟いた。
"君は寂しい人間だからな。そんな君でも有意義なクリスマスを過ごせるように僕の家に来ることを許可してやるよ"
あれを聞いたときは一瞬固まったが、それでも露伴らしくてすぐに可笑しくなってきた。まあ、この性格じゃないとモテて私なんか眼中になくなっちゃうだろうし、何よりそれは露伴じゃない気がしてきた。もうこのままでいいやと思って、笑いながら目の前の寝顔に口付ける。
「やっぱり露伴はこのままが好きかな」
「……」
起きているときじゃ決して言えないような気持ちを呟いて、その胸にすり寄る。起きている、というよりはしっかりと目を開いているときと言った方がいいかもしれない。なんせ今だって露伴が本当は起きているのには気づいている。現に私を抱きしめる腕の力は強くなったし、露わになっている肩口辺りは真っ赤に染まっているのだから。それが可笑しくてくすくすと笑いながら私も露伴の背中に腕を回す。
「おはよう、露伴」
「……わかっていてやったのか」
「もちろん」
苦々しい声が聞こえてきて楽しくて仕方ない。今度は目の前の薄い胸板に口付ければ、露伴の肩がぴくりと跳ねる。やめろ、触るな、と言うくせに私の腰と肩に回した腕の力を弱める気配は全くないのだから更に笑えてくる。おい、と笑うことを咎める声が聞こえてくるがそれさえも無視して笑い続ければ、少しの間のあと、ぐいと上に引き上げられて真正面に露伴の顔が来た。にやり、と笑う口元に嫌な予感しかしない。
「ろは、」
「名前、誰よりも愛してる」
「……え、」
初めて聞く露伴からの愛の言葉に顔に熱が集まっていく。真っ赤になる私をみて悪戯が成功した子供のように笑うと、嘘じゃあないぜ、と言って今度は子供らしい顔から打って変わって、男の顔になってしまう。それによって首まで赤くなって固まる私に、さも可笑しそうに口付ける。
「朝起きて名前がいるのは、意外と悪くない」
「……ばか」
もう弱弱しい悪態しか吐けない私の顎を掬うと、軽く啄むように何度か口付けてから、もう少し寝よう、と再び横になった。まだ熱の引かない私を見てタコみたいだ、と笑う露伴にもう一度ばか、と呟いて赤くなる顔を隠すように露伴の胸に埋めてみた。


メリークリスマス!

クリスマスプレゼントは露伴からの愛の言葉


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