2012 | ナノ
※ニナ様へ捧げます!



はたりと目が覚めて、嫌な感覚が脳を過る。ぎぎぎ、と効果音が付きそうな動きで時計のほうへ目を遣れば、いつも起きる時間を長針半周分も過ぎていた。やばい!と思って飛び起きると手近にあった適当な服に着替えて、いつもは洗面所で直す髪の毛もゴムで簡単に横に結わえて部屋を飛び出す。リビングに入ればリゾットがソファーから立ち上がったところだった。
「今日は遅かったな。今起こしに行こうかと思ったところだ」
「ごめんなさい!すぐに用意するから!」
「そんなに慌てなくてもまだあいつらは起きてこないぞ」
確かにリゾットの言う通り、他のみんなは個人差はあるもののまだしばらくは起きてこない。けれどリゾットはもう起きているのだ。いつも私よりも早く起きて、ソファーでパソコンをいじるか新聞を読むかをしている。そんな彼にカプチーノを入れてあげたり、先に簡単なものを作ってあげたりするのが日課であり、ちょっとした私の楽しみなのである。
「ううん、リゾットはお腹すいてるでしょ?」
「そうだが……、気にしなくても構わない」
「けど…」
「それより、今日は髪を結わえているのか?」
そろりと近づいてきたリゾットが後ろに回って結わえた髪をふわりと掬い上げる。その仕草に心臓を高鳴らせながら、ぎこちなく頷く。背後に立っているため表情は伺えないけれど、髪を伝ってくる感覚が緊張を呼んでくる。黙り込んだリゾットに少し戸惑っていたが沈黙に耐えられなくなった私が先に声を上げた。
「へ、変かな?」
「いや、似合ってる。だが……」
「だが?」
「だからこそやめてほしいというか、なんといえば良いのか…」
珍しく口籠るリゾットと、そのイマイチわからない言葉に首を傾げる。リゾットはあまりお世辞を言わない方だ、と思う。だから言われた通り変ではないのだろうが、そのあとのやめてほしい、と言うのがうまく咀嚼できない。似合っているのならいいんじゃないのだろうか。
首を傾げ続ける私に痺れを切らしたのか、するりとリゾットがゴムを解いた。
「わっ、待って!ぼさぼさなの!」
「オレは気にならないが、嫌ならいつものように直してくるといい」
「けど、準備が、」
「まだ誰も起きてこないから大丈夫だ」
さあ早く行けとばかりに洗面所の方へ背中を押されて歩き出す。腑に落ちないけれど、リゾットには変に頑固なところがあるから従うしかないのだろう。どうして駄目だったのだろうか。



「直してきたよ」
「ああ」
手招かれて、ソファーにゆったりと落ち着いているリゾットに近寄る。そのまま手を引かれて隣に座れば、一房髪を掬われた。その動作をまた心臓を高鳴らせながら見守っていれば、掬い上げた髪にリゾットはそろりとキスを落とした。
「り、リゾット!」
「綺麗な髪だ」
真っ赤になる私にくつくつと笑いながら、くるくると指に髪を巻きつけたりして遊んでいる。何度もさらさらと髪を梳くように撫でられたりして、なんだか恋人同士のような錯覚を覚える。一瞬でもそう意識してしまえば近すぎるこの距離が気が気じゃなくなって、慌てて立ち上がった。甘い空気さえ漂いそうなこの部屋にくらくらとしながら、リゾットと顔を合わせないようにして振り返る。
「ごっ、ご飯の準備してくるね!」
「ああ、頼んだ」
返事をする声には楽しげな笑いが含まれていて、さらに恥ずかしくて顔が熱くなる。逃げるようにしてキッチンに駆け込むが、最後に見てしまったリゾットの目が、何か愛しいものを見つめるように細められていたのを思い出して、再び心臓が高鳴るのを止められそうにはなかった。




可愛いヒロインちゃんを皆に見せたくなかった意地とヒロインちゃんと引っ付きたかった欲望があるだけですよね、リゾットさん(^ω^)(^ω^)
4444hitを踏んでくださったニナ様に捧げます。
リクエストありがとうございました!


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