2012 | ナノ
カウントダウンの始まったテレビ番組をぼんやりと見つめる。あと、一分も残って無いのか今年は。長かったような短かったような。終わりになってしまえば短く感じるのだけれど、今来年を長く感じるように去年の今頃もきっとそう感じていたのだろう。そんなことを考えながらこたつの中で伸ばしている足をもそもそと動かす。少し背中が寒いな。
「おい、寝るんじゃねぇぞ」
「あ、おかえり承太郎」
いつの間にか真後ろに立っていた承太郎を逆さに見上げながらそう言えば、今しがたじゃんけんに負けて取りに言ってくれていたホットミルクを目の前に置いてくれる。その横に色違いのおそろいのカップが置かれて、承太郎が後ろに座るとそのまま私を閉じ込めるようにこたつに足を突っ込んだ。あ、背中が温い。
「見て見て、残り十秒だって」
「そうだな」
いただきます、と言いながら湯気を立てているホットミルクを持ち上げて口につけようとすると、横からマグカップが攫われていって再び机の上に戻されてしまった。犯人は分かりきっているので背後を首だけで振り返りながら何するの、と文句を言おうとしたが、その言葉は彼のあつい唇に食べられてしまった。
テレビから聞こえるバカ騒ぎの音とおめでとうと言う声がやけに静かな部屋に響いて耳が痛い。けれどそれよりも何が起こったのか少しパニックになっていて、ただ間近にある閉じられた長い睫を眺めていた。押し付けるだけのキスであると気が付いたのは、唇が離れて最後に止めとばかりに舐められてからで、妖しく笑う承太郎の顔を見て一気にすべてが襲ってくる。
「なななななっ!」
「せめて目くらい閉じろ」
くつくつと楽しそうに喉を鳴らすその綺麗なお顔が再び近づいてきて、言われた通りにぎゅっと目を閉じる。そうすれば本当にすぐ近くでふ、と承太郎が笑う気配がした。微かに唇が触れ合っている状態で承太郎が喋る。
「可愛いヤツ」
その言葉に驚いて目を思わず開けば待ってましたと言わんばかりに、今度は全てを食べられそうな勢いでキスをされる。にやりと意地悪気に歪められた目を見て、なんだか少し負けた気分になる。けれどいい仕返しなんて思いつかないからその逞しい首に腕を巻きつけることしかできなかった。
「じょ、たろ、」
「っは、なんだ」
キスの合間になんとか名前を呼べば、キスの合間に返事をされる。一度止めてくれればいいのに。けれどそんなつもりは一切ないらしい目の前の男は、キスを続けながら私の言葉の続きを待つ。
「しんね、んのはじめ、に、あなたと、いれてしあわ、んっ」
「っ、だまってろ」
それだけ言うと承太郎は私の目をそのごつごつとした大きな掌で覆って、私から視界を奪った。その手が異様に熱くって、貪るように求められる唇から優しい愛を貰った気がした。

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