抜き出した片足、 | ナノ
緊張しすぎて胃が痛むお腹を擦れば、それに気が付いたホルマジオが少し笑った。
「心配しすぎだろ」
「だって……」
この状況を緊張せずにどうしろというのか。少し頭痛も加わり始めた頭で今朝のことを思い出す。

行ってくる、そう言って名前の頭を撫でてリゾットはトリッシュを探しに出て行った。昨日教えたところを全て当たってくるつもりらしく、きっとトリッシュには会うはずだ。けれど妙な不安が頭を擡げて私の心に現れて、それに気が付いたのだろうプロシュートが、今日は全員任務が入ってないから皆で待とう、とリビングに全員で居てくれている。たったそれだけでもいくらか不安が和らいだ。
「本当にお仕事大丈夫なの?」
「バーカ、むしろこっちのことが気になりすぎて仕事どころじゃねーよ」
そういって笑い飛ばしてくれるプロシュートたちに心底感謝する。この人たちは、本当にいい人たちなんだ。
「しっかしよぉー、まさか名前が協力するとは思わなかったぜ」
ギアッチョが鋭い目つきでこっちを見る。この目は、何か不思議に思っているときにする目だと気が付いたのはつい最近だ。間を開けずにイルーゾォも声を上げる。
「そうそう、最初なんて警戒心マックスだったしね」
「リゾットがメタリカ使ったときが一番びびったぜ」
ホルマジオが可笑しそうに言えばイルーゾォとメローネがなにそれ聞いてないと食いつく。それにからからと笑ってあの時のことを語るホルマジオを小突けば、ペッシが不思議そうに声を上げた。
「けどよぉ、どうして協力する気になったんだい?トリッシュが大事なんだろ?」
「それは……、」
答えようとすれば皆が一斉にこちらに注目するものだから口籠ってしまう。それでも言っておくべきかと思ってもごもごと理由を話していく。
「最初は、皆のこと嫌いだったの。痛いことするし、トリッシュ狙ってるし」
ぽつりぽつりと話す言葉を、皆は茶化すこともなく静かに聞いてくれる。
「けどね、一緒に過ごしてるうちになんかね、皆のこと、好きになっちゃった」
あまりに真剣な表情だから少し言葉を誤魔化したけれど、気持ちは誤魔化してないからいいだろう。なんだそれと呆れたように笑う皆に、それとねと付け足す。
「リゾットが約束してくれたの」
「約束?」
「うん、トリッシュにもう一度合わせてやるって。傷つけずにここに連れてくるって」
そういって笑えば皆が驚いたように顔を見合わせて、その後意味ありげにニヤリと笑う。
「なあ、名前」
「なに?」
「オレたちのこと、好きになっちゃったんだろ?リゾットはどうなんだよ」
「え、えと、普通に好きだけど」
「はっ、普通に、ね」
くすくすと笑うプロシュートとホルマジオは全部知っているみたいに私を見つめるから、顔が赤くなるのを感じながら俯く。そしたら笑い声が大きくなって、もっと顔が赤くなっていった。
「まあ、リーダーもリーダーだけどな」
なんてホルマジオが意味深に呟いて笑うから、思わず顔を上げる。それってどういう意味?と聞こうとしたとき、玄関の外で物音が聞こえた。全員が弾かれたように立ち上がって私を先頭に玄関に向かう。扉が開いて、無表情のリゾットが帰ってきた。
一人で。
「りぞ、っと……?」
「……遅かった」
ぽつりとリゾットが溢した言葉に皆は眉を顰めた。
「先を越されていた」
胸を占領していた不安は、絶望へと姿を変えた。



きみの影が蒼暗く
(苦々しいあなたの顔)
(結局あの子はいなくなった)


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