深夜、物音一つ無い静かな空間に
ざざっと、土の上を歩く音が響いて、目を覚ました。


ゴエモン、帰ってきたかな…?


自分の乱れた前髪を上にかきあげて

このまま起きておくか、寝てしまうか
悩んだすえ
もう一度夢の中へ。



そこへ、自分の家なのに、控えめな音をたててゴエモンが戸を開く。


「……ただいま〜」


わたしが寝てると思って、とても小さい声でゴエモンは言った。

ほんとは寝てないけど、おもしろいからこのまま寝たふりを続けてみよう…。



「あ〜疲れた…腹減った…
なんか食いもんねぇかな…

…!おぉ…ありがてぇー」


作っておいた晩御飯に気付いてくれたみたい。

今日帰ってくるのかわからなかったけど、作っておいてよかった。


「うまい〜」


ゴエモンってば、
わたし、寝てて聞いてない設定なのに、そんなこと言ってくれるんだ。
うれしいな。


「ごちそうさん」


は、はやい…。



がちゃがちゃ、音をたててるのは
わたしが明日洗いやすいように食器をお水につけてくれてるからかな。

疲れてるのに、気を使ってくれてありがとう



「いろは〜」


わわ、こっちに来た

起きてるって、ばれませんように…。


「へへ…でこっぱち」



う、うるさいよ
おでこ…そんなに広くないもん…



「…可愛い」




っ!!


びっくりした、
そんなこと、言ってくれるんだ…
すっぴんだし、眉毛あんまりないし、

…おでこ…広いのに…。



…あ、

わたしのおでこ、撫でてくれてる

ゴエモンのおっきな手、あったかいな



…しばらく撫でてくれていたら、
手のあったかさじゃなくて、やわらかいものが一瞬おでこにあたった。

これって、わたしのだいすきな、



「ん…ゴエモン…」

「お、悪ぃ…起こしちまったか」

「……唇にもして、ほしい」

「って、起きてたのかよ」



えへへ、と笑って見せたら、ゴエモンも短く笑ってくれて
わたしのだいすきなキスが降ってきた。

どこにも行ってほしくなくって
ゴエモンの服をぎゅっとにぎったら
寝ているわたしの背中と頭に腕をするりと入れられて、持ちげるみたいに、ぎゅーっと抱きしめてれた。


名残惜しく唇が離れて、
見つめあったらまた、自然にキスして


ああ、ずっとこうしてたいな



「…すんげぇ好きだ、いろは」


そんなの、わたしのほうがだよ。












************













チュンチュンチュンとか
ワンワンワンとか
動物たちの声がめざまし時計のように外から聞こえてきて、やっと目を覚ました。

昨日の夜、いつ寝てしまったのか
ぜんぜん覚えてないけど…

ゴエモンといっしょの布団に入って、ずっと抱きしめあってたのは覚えてる。

ゴエモンはあったかくて、落ち着くにおいがするから
安心してしまって、ついついよだれをたらしながら寝てしまった。

ひとりで寝たら、よだれなんてたらさないのにな。



………

…朝ごはん、何にしよう
そもそも食材あったかな…



立ち上がろうとしたら、わたしの腰に回ったゴエモンの腕がわたしを固定する。


「起きてたの?」

「ん〜…どこいくんでぃ」

「朝ごはんつくらなきゃ」

「いいよ、たまごかけごはんで…
あとで…自分でつくるからさ…。
もうちょい…このまま…抱きしめさしてくれ」


そう言ってすぐに、ゴエモンはわたしのおなかに顔をすりすり、すりつけてきて

わたしのおなかはぐう〜〜〜っと大きく鳴き声をあげた…。


「どんだけ腹減ってんだ…」

「……」
















たまごかけごはんと、残ってたお漬物を食べたあと

わたしたたちは朝風呂に入るため銭湯へ。





おうちからすぐそこ、

たった銭湯にいくだけなのに、
それだけでゴエモンはわたしと手を繋ぐ。

いつだって、どこへ行く時も手を繋いでくれるゴエモンが、たまらなくすきだなぁ。



「混浴のほうが安いのに」

「ってやんでい
他の奴らがいろはのことやらしー目で見ちまうだろー」

「そうなの…?」

「そうなの!!
んじゃあまたあとでな。」

「はぁい」





わたしのあたまをくしゃくしゃに撫でて
どたどたとゴエモンは男湯の暖簾をくぐってった。


そんなこと、言ってくれるってことは
わたしのこと、女としてみてくれてるってことだよね。

えへへ…



でも、ほんとは、
混浴のほうが一緒にいれるから、
そっちのほうがよかったり…。


……

こんなこと言えないけど。














お風呂に入ってるとき、
綺麗なお姉さんたちの会話が耳に入ってきた。

なになに…



「もうお花見行った?」

「まだ〜、行ったの?」

「行った行った〜!
ほぼ満開だったよ!早くいかなきゃ散っちゃいそうで怖いくらい」

「え〜!そうなんだ〜、それは行かなきゃね」





なんと…!

それは…!

行かなきゃ…!

今日!!


















どたどたどたどた


「お、いつもより早くねぇ?もっとゆっくりしててもよかっ…」

「お花見いこう!」

「…」

「だめ…?」

「びっくりした、おいらと同じこと考えてんじゃねーか」

「え?」






ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーーー…









「昨日帰ってくる途中にさ、すっげぇ良い花見場所見つけたんでぃ。
そんで明日いろは連れてきてびっくりさせようと思ってたんだけどなぁ」

「そうだったんだ…!なんだかごめんね、
でも…すっごく嬉しい」

「へへ、まあいいや。今から行こうぜ。
あ、酒買っていこう。あとは…いろはの好きな団子も買ってかなきゃな」


嬉しいことばっかりだなぁ。
お花見、わたしが誘う前から連れて行ってくれようとしてたなんて。

それに、わたしの大好物のお団子のことまで…。


えへへ、お団子…


……お団子、

……あ、





「お団子はおみつさんのところ…?」

「ん?…ああ、そうだな」



どきっ、

心臓がはやくなる。




どんな顔をして、わたしはおみつさんに会いに行くべきなんだろう。

笑ってたほうがいいのかな
でも、そんな顔で行ったら、おみつさんは悲しむかな。

わたしなら、そんなの…。






茶店に向かう自分の下駄がカラカラ鳴って
どんどんどんどん進んでってしまう。

どきどき




「……、」



ゴエモン、あのねって
言いたいけど言えない、

言いたいことが喉まで出かかって、
だけど言えなくて、飲み込んでおなかにしまいこむ。




カラカラカラカラ
進んでいく自分の足をとめることができなくて
ゴエモンの手と自分の着物をぎゅっとにぎった。














茶店の前に着いた時
思わず繋いでた手を離してしまった。

わたしよりすこし前に歩いていたゴエモンは
振り向かずに
それを、ぎゅっと繋ぎなおす。


「いろは、」


優しいゴエモンの声につられて
ずっとうつむいてた顔をあげれば
ゴエモンが眉を下げて笑っていた。





……その顔が瞬時に変な顔に変わる


「いろはがんな顔してっからおいらにもうつってこーんな顔になっちまったじゃねーか!」

「!!………ぶっ!!」

「てめ〜、笑ってんじゃねぇぞ〜!」

「あはは!だって、えいりあんみたいな顔〜」

「えいりあん見たことあんのかよ!」

「今目の前にいるもん」

「おい、こら!」



「あら、いろはさんにゴエモンさん!」

「!!こ、こんにちは!!」

「よー、おみっちゃん」

「こんにちは。
笑い声が聞こえるから、誰かと思ったらあなたたちだったのね」


び、びっくりした、

茶店の暖簾をくぐって出てきたのは
優しく笑うおみつさん

びっくりして思わず大声で挨拶しちゃったけど…笑顔で言えてよかった…



「おみっちゃん、みたらし団子お持ち帰りでほしいんだけど」

「はいはーい、中で座って待っててね」


そう言うとおみつさんはなれた手つきでみたらし団子を手早く包んでくれた。

仕事も早くて、笑顔も可愛くて…
みんなから愛される理由がよくわかる。

わたしも…出来ることならおみつさんと仲良くなりたい。



「いろは…ちょっと便所いってくる…」

「…!う、うん、いってらっしゃい…」



今まで繋いでいた手が急にはなれてしまって
どっ、と不安が押し寄せてきた。

ゴエモンがいないのに、おみつさんと上手く話せるかな…。

でも、仲良くなりたいな。
自分から何か話したいけど、何を話せばいいんだろう…


「はい、お待ちどうさま!」

「あっ、ありがとうございます」


何か話さなきゃ…何か…!



「あ、あの…」

「…?」

「わたし、おみつさんの、みたらし団子…とっても大好きです…」


…………

こんなことしか言えなかった…。
わたしのばか…

ほんとに思ってたことだから伝えたけど、こんなのなんて返事すればいいのか困るよね。

もっと気の利いたことを、なんで言えないんだろう…。




唐突に変なことわたしが言うから、おみつさんは大きい瞳をぱちぱちさせる。

…それなのにおみつさんはなぜか優しく笑ってくれた。


「ふふっ、ありがとう。
いろはさんがね、みたらし団子大好きなのはゴエモンさんから聞いてたから知ってたよ。
だから、おまけで2本多くいれておきました!」

「え…!?本当ですか?
すっごくうれしい…!ありがとうございます!」


わぁ…!!
ゴエモン、おみつさんにそんなことまで言ってくれてたんだ…。


『いいお天気ですね』なんかじゃなくて、
思ったこと、素直に伝えれてよかった…!



「お持ち帰りってことは、もしかしてお花見に行くの?」

「そうなんです、
今さっき行くことが決まったんですけど…
桜、結構満開らしいです…!」

「へぇ〜私も行きたいな〜!
…ねぇ、いろはさん、よかったら今度一緒に行きましょう?」

「…!」

「駄目?」

「だめなんかじゃないです…!
だって、わたし、ずっとおみつさんとお話ししたいって思ってたから…!」

「本当?うれしい…!
わたしもね、ずっと思ってたの、いろはさんとお話ししたいって。

……えいりあん抜きで」

「ぶっ!!」

「うふふ…!」

「おい!聞こえてんぞ!」



振り向けばゴエモンが半笑いしながら眉毛をキッとさせて、わたしたちの後ろに立っていた。

それはともかく、おみつさんが、まさか、えいりあんなんて言うなんて。
もう可笑しくて、おみつさんと一緒にたくさん笑ってしまった。




それに…、わたしと話したいって、言ってくれるなんて…。

さっきまでの不安なんか飛んで行ってしまって、どこかへ消えてった。



「ふふ…じゃあ、お花見いってらっしゃい!
たのしんできてね」









************









茶店をでて、
またゴエモンはすぐに手を繋いでくれた。

いつもわたしよりも少しだけ前に歩くゴエモンの顔を覗き込んで、わたしは口を開く。



「…ゴエモン、ありがとう」

「へ?なにが」

「おみつさんとたくさん話せたよ」



きっと、ほんとはわかってるんだろう。
わたしがお礼を言ってる意味が。
でも気を遣ってくれて、気付かないフリをしてくれてる。


……


わたしは、おみつさんに会いに行くのがずっと前から怖かった。
それはゴエモンとおみつさんがお付き合いしていたことを知っていたから。


それを知っているのに
わたしとゴエモンが、ふたりで行ったら
まるでおみつさんに見せつけてるみたいに見えるんじゃないかと思って…。


そんなの、わたしがおみつさんの立場だったら悲しくなってしまう。


だから、わたしはずっと
おみつさんを避けてて、逃げてたんだ。



でもゴエモンは、そんなわたしを気遣って、笑わせてくれて
厠に行くふりして、わたしとおみつさんが話しやすいようにしてくれたんだよね。



「ありがとう…ほんとにうれしかった…っ」



話せたことも嬉しいし
ゴエモンにたくさん助けてもらったことがほんとにうれしくて、
涙がぽろぽろこぼれていってしまう。

悲しいんじゃなくて、嬉しいから
泣きながら、笑った。



「ごめんな、いろは。
いろはにたくさん苦しい思いさせちまったよな。
こうなったのはおいらのせいだから、ずっとなんとかしてぇって思ってた。

けど、いきなりおいら席たっちまったから…怖かったよな…大丈夫だったか?」

「大丈夫…うれしいんだよ、ゴエモン。
苦しくなんかない…」



嬉し涙だからか、涙はすぐにとまってくれて
不安そうだったゴエモンの顔も次第に笑みにかわっていく。

着物の袖で目元を擦れば、おいおい、とゴエモンの手がわたしの手をとめて
巾着袋から朝風呂で使った手ぬぐいをだして、涙をふいてくれた。


「…んなごしごし拭いたら赤くなんぜ」

「ん、ありがとう」


ごしごしじゃなくてぽんぽん拭いてくれたあと
わたしの目をじ〜〜っと見られて、
何事かと首をかしげたら、だんだん近づいてきて、目尻にキスされてしまった。


「へへっ、隙あり!」

「もう…!」



一気に顔があつくなって、はずかしくて顔をそらす。

もう…!なんて言ったけど、
ほんとは死ぬほどうれしいよ。

……ありがとう。



























「わぁ…!きれい!」

「だろ〜!ぜってぇいろはを連れてこようと思ってたんでぃ!」



ゴエモンに連れてきてもらったところは街の外れで
みんながお花見をしているようなところではなく、人気がないところだった。

こんなにも綺麗に桜が咲いているのに誰もいないのは、
夜になるとこのあたりにもののけが出ると噂になっているから。

わたしもここには近づかないようにしてたから…こんな綺麗なところ、しらなかったなぁ。



「もののけが出るって聞いたけど、おいらが倒しちまうから心配ご無用〜」

「そうだね、ゴエモンがいるからぜったい大丈夫」

「んまあ、昼だし、出ねぇと思うけど」

「うん」



桜の下はちょうど日陰になっていて
そこにふたりで腰を下ろした。

ふぅ〜〜っとゴエモンはさっそく寝転んで、気持ちよさそうに目を細める。

せっかく来たのに寝るの?と聞けば、いんや……と言ったまま…。
しばらく黙って、またわたしの手を繋いだ。

とっても大事そうに、一本一本指をからめて。



「しあわせでぃ〜おいら」

「なに…?急に…」

「ん〜、いろはとこうしてられんのがさ」

「えへへ…はずかしいよ」

「…なぁ、いろはもここ…隣、寝転んで」


ぽんぽんと、隣をたたく
ゴエモンに言われるがまま、隣に寝転んだら
また、目をじ〜っと見つめられて

キスされるのかと思って、目をぎゅっとつむったけど、待っていた感触はやってこない。

その代わりゴエモンの腕が伸びてきて、ぎゅーっと抱きしめられた。



「あ〜、可愛い、食べてぇ」

「…みたらし団子あるよ?」

「違ぇよいろはを食べてぇの。駄目か?」

「だ、だめ…!お腹壊すから!」

「ははっ、そういう意味じゃねぇっての」

「…?」

「こういうこと」




抱きしめられてたのが解放されて、
はぁ、と一息つく…暇もなく、

横にいたゴエモンがわたしの上に跨ってきて大好きなキスが唇に降ってきた。

恥ずかしいけど、息をもらす。


何回も角度をかえて、
時には唇をちゅうっと吸われて、舐められて

舌が、入ってきたときには、頭が真っ白になってしまって、なんにも考えられなくなった。

だんだん、おなかの下がきゅうぅっとなってきて、足をもじもじさせてしまう。
いつもこの感覚が少し苦手だけど、ゴエモンに愛されてるってことだと思うから…。


そんなわたしを見て…なのか、
もう一度深いキスがやってきて、それと同時に
ゴエモンがわたしの胸に手をおいて、着物の上からやんわり掴んできたから、びっくりして
思わずガバッと飛び起きた…



「だめ!!」

「ちぇっ、なんでぃ」

「こ、こんな、明るいし…しかも外だし…」

「んじゃぁ夜だったらいいのか?」

「えぇ………う、……。……うん」

「おっし、言ったぜ、忘れねーからなー」

「うぅ、…そんなの…断れるわけないよ、だって…」

「んぁ?だって?」

「だ、だって、ゴエモンのこと大好きだもん…」

「!」


ずるい、だって好きだから
断る理由なんてないよ。

それに、きっとこの先
ゴエモンが長旅に行ってしまって、しばらくの間会えなくなってしまうかもしれない。

だから今、たくさん愛して、たくさん愛されたいよ。



「だ〜〜、もう…ちきしょー」

「?ゴエモン…?」

「こっち見るな〜!」

「?」

「すまねぇほんとに見ないでくれ〜!」


さっきからそっぽ向いているゴエモンの耳が真っ赤になっているのが見えた。
でも、なんで照れてるのかわかんない。


「…好きとか、言われ慣れてねぇから…。
そんなこと言われたらどんな顔すればいいのかわかんねぇ」

「…!」

「いろはって自分から好きってあんま言わねぇだろ…。
だから、たまーに言われると破壊力がすんげぇの…。
おいら…今やべぇくらい幸せ…」


そうだった、
わたしって、ゴエモンに好きって言ってもらうばっかりで
自分から言ったこと、数えれるくらいしかないや。

昨日だって、ゴエモンに好きだって言ってもらったけど、わたしは言ってない。
言わなくたってきっと伝わってるけど…、思ってることはちゃんと伝えたいな。



「ゴエモン、」

「んー…」

「ずっと一緒にいようね」

「おう、あたりめぇだ」

「えへへ、大好き」

「…おいらも」


ずっと恥ずかしがって、わたしの顔を見てくれなかったけど
今度はこっちを向いて、言ってくれた。
目を細めて、とってもうれしそうに。


ゴエモンの目を見つめれば
綺麗な青い瞳に、わたしと淡い色の桜が写っていて、
その青に惹かれるまま、今度はわたしから唇を近付ける。

わたしを拒んだりせずに、ゴエモンは繋いでいる手をもう一度繋ぎ直して
もう片方の手をわたしの後頭部へ。


初めて、自分からしたキスは
ゆっくり重ねて、触れるだけだけど、それだけでじんわりあたたかくなった。

少しして、唇を離して、青をみて、

もう一度、重ねようとしたとき


空気を読まないわたしのおなかがぐぅ〜〜〜っと鳴き声をあげる。



「…」

「…」

「…みたらし団子食べてもいい?」

「ははっ!食べな!
いろははほんとによー…、
可愛い奴…」



ふたりして笑いあったら、気持ちのいい風がふいて、
桜の花びらが落ちていく。

それが綺麗で、でも儚げにも見えた。



「来年も花見しような」

「うん」

「来年も再来年もその先も…」

「おじいちゃんおばあちゃんになってもね」

「おう…。
いろはとずっと一緒に生きていきてぇよ」

「…わたしもだよ、ゴエモン」



生きていこうね、なんて
この先どうなるのか、わからないから言い切れない。

だから一緒にいれる今、一瞬一瞬を大事にしていこう。


ふたりでいろんなところに行って
いろんな景色をみて
いろんなものを食べて

たくさん愛して、たくさん愛されよう


そして、今みたいに
ずっとずっと、手を繋いでいたいな。


「えへへ、幸せ」

「さっきからおいらもそう言ってんだろー」

「うん、幸せ同士だね」

「おう」



おみつさんのみたらし団子を口にいれたら、特製の甘いたれが口いっぱいにひろがった。






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