※大助変態です











 瞼を閉じ、再び眠りに落ちようとしたところで、右腕に微かな重みがあることに気が付く。
 何だ? と首だけ動かして、大助はギョッとする。
「ん……」
 隣の布団に横になっていたはずの少女が、少年の腕を枕にして眠っていた。
「ちょ……あ、亜梨子……?」
 呼び掛けてみても、規則正しい寝息は変わらない。微かに身動きしたが、起きる様子はないようだ。
 何故、亜梨子が大助と寝ているのか。
 一瞬あまりの混乱に頭が真っ白になったが、もぬけの殻となった亜梨子の布団を見ればそれは簡単に予想がついた。
 大方、夜中にトイレに行くか水を飲みにいったかして、再度寝ようとした時に自分の布団だと寝ぼけて勘違いした挙句、大助の布団へと潜り込んできたのだろう。
 冷静を取り戻し、小さく息を吐く。
 こんな状態、旅館の人間に見られでもしたら言い訳できない。それよりもまず、今現在同じ部屋で眠っている“霞王”や“ねね”に見られでもしたら、面倒なことになるのは解りきっていた。
(早いところ、何とか自分の布団に戻してやんねーといけねえんだけどな……)
 気持ち良さそうに眠っている少女を起こすのは、少しだけ憚られる。何より、起きたら起きたで大助側に変な言いがかりをつけて喚かれそうでもあった。
 どうしたものか……。
 そして、再びそっと首を動かして亜梨子を見やった大助は、一度目とは比べ物にならないほど動揺した。
 ……先ほど身動ぎしたせいだろうか。眠った少女の浴衣が乱れ、首もとから胸元まで大胆に肌けてしまっている。
 しかも、人より薄い胸板のせいで、浴衣から肌まで簡単に手を入れられてしまえそうなほどの空きが出来ているのだ。
 暗闇の中でもわかる、うっすらと色が変わっている膨らみの尖端が視界の端に映った。
「う――おい――」
 顔が熱くなり、見てはいけないものを見てしまった興奮と焦燥感で心臓が大きく鳴る。手の中に変な汗が浮かび、大助は喉に溜まった唾液を嚥下した。
 固まったように、僅かに見えるそこを凝視してしまう。
 早く、亜梨子を起こさなければ。
 そうでなければ、浴衣を直してやるべきだ。せめて視線を反らすくらいは――そう思うのに、大助の身体は真逆のことしか動作しない。
 あまりに小さい大助の声は、明らかに起こすために掛けられたものではなかった。起こしたけど起きなかったという、自分自身への言い訳作りに過ぎない……。 それを、大助は、頭の隅で理解していた。
(早く、起きろって……。マジで、こんなことしちまったら洒落になんねぇのに――)
 緊張でカラカラになった口の中。それに反し、ゴクリとなった自分の喉は、何を飲み込んだのだろうと不思議に思う。
 亜梨子の頭に敷かれている腕とは反対方向の手が、慎重な動作で……乱れた浴衣の中へと忍び入った。






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