今こうしていつもと同じ様に過ごしていても、それは一分一秒と戻らない日々へと変化しているんだ。

「だぁからベタベタくっつくな!!!」
「何故だジェフティ〜〜〜〜!!!」

首にしがみついてくるラーを引きずりながら船内を歩くのは、非常に注目を集める。
最近ではみんなもう慣れたのか、「またあの二人か」と苦笑い(人によっては微笑ましそうに)しながら見てくるだけだけれど。
今部屋に入ったらライカに迷惑がかかるな、とため息をついてから、今はもうその面影すら残していない元僕の部屋へと向かう。
「今ベタベタしないでいつベタベタしろと言うんだっ!」
部屋の扉が閉まると同時に叫ばれた。
「確かに、そうだね。ラーが今の内にベタベタしておきたいと言う気持ちも、わかる」
空気を軟化させるとラーも騒ぐ状態から抜け出し、いつもよりは真面目になる。
「でも、いきなり昔みたいに甘い状態にはなれないよ。もう少しこうやっているのを続けたい」
「何も考えないで馬鹿騒ぎしてたいって事か?」
「うん」
僕の言い分もわかるのか、どうしたらいいものかとラーは頭を掻いている。
「手を出して」
サングラスの奥のさ迷っていた瞳が、不思議そうにしながらも体の前で両手を差し出した。
左手を引っ張り、指輪の類を一切身に付けていない薬指に口付ける。
まるで「永遠に」と、何かの儀式の様だ。
永遠を願ったのは、このままの年齢でいられたらでも、一緒にいられたらでも、ましてや二人の愛が変わらずになんて事を言うつもりもない。

「…こうして、永遠に変わらずにいられたらいいね」

ただ、そう、こんなくだらない言い合いを続けていられたらと願う。
なによりも小さいのに、なによりも永遠が約束されない願いが胸を締め付けるのだ。
薬指にキスをしながら永遠を願った今日、いつか「愚かだった」と笑う日が来るだろう。
何もかも、変わらずにはいられないのだから。





薬指に永遠を願うキスをする




「今回のミッションは危険だからね、気をつけて」
新妻の様に玄関で見送ってくれているジェフティの声を聞きながらブーツに足を突っ込んだ。
外ではビスタと飼い犬とが遊んでいる声が聞こえてくる。
まさに新婚家庭みたいだ。
「俺様にかかればどうってことねぇよ。ビスタ達もいるしな」
「本当なら僕も行きたいんだけれど」
「親父からの仕事があんだろ。気にすんな」
靴を履いている俺を心配そうに見下ろしてくる青い瞳が「ごめん」と告げた。
「――いて」
顔を掴まれ、上を向かされると首が変に鳴った。
首が痛い。
シャンデリアが眩しくて閉じると、閉じた瞼の上に柔らかな感触が降ってくる。

「おまじないだよ。ちゃんと戻って来てよね」






瞼の上におまじないのキスをする




「んっ」
不意打ちでキスしたら緑頭に反して顔と耳が真っ赤に染まった。
口を開けて何か怒鳴ろうとしてから、感情を抑えるみたいにギュッと眉間に皺を寄せている。
「いきなりしないでくれ」
「じゃあ、キスするぞ」
「駄目だ」
不意打ちは駄目だと言うから宣言してみたが、それも駄目らしい。
「いきなりも駄目言ってからも駄目、いつならいいんだ」
「嫌いだからしたくないとは考えつかない?」
「嫌いなのか!?」
「大嫌いだ」
「なぬーーー!!?」
未だ赤い顔のまま口を擦っている。
嫌いと言われるかと思いきや大まで付きやがった。
今コイツの中でいったいどんな感情が支配しているのか分からない。
表情に出すのが嫌いなジェフティの感情を表情で読み取ろうとするのは難解だ。
「でもそれ以上に、好きだ」
体が固まる。
今度はいったい何を言い出したものかと床に突っ伏していた顔を上げると、緊張した趣で長い睫を瞬かせていた。
「むむむむ? 大嫌いでキスしたくないがそれ以上に好きと言う事か?」
ジェフティが言う言葉はいつもよく分からなくなるな。
素直じゃないから違う言葉を言うし表情からも読み取れ無い、分かり難い事この上無い。
「うるさい!嫌いだ!!」
「ぬおおそれ以上に嫌いとはどーーういう事だーっ!」
「ああっもうだから!黙ってキスすればいいんだ!」
…まったく素直じゃない。
今にも殴りかかって来そうに拳を握り締めている緑頭はどうしてこんなに素直じゃないのか。
それも含めて愛しいんだけどな。
両手で頬に触れ口付けると、昔を思い出す位に甘い顔で返された。






唇に愛を確かめ合うキスをする








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