腰が痛い。
昨夜は体育座りをしてそのまま仰向けになった様な格好をずっとしていたのだ、痛くなって当然なのだが。
その上、たった今ラーと言い合い体力を使ってきた。
喧嘩の理由は、いつの間にか盗撮されていたらしい、ラーの携帯に入った僕の画像だ。
見つけ次第消していったが、それによりラーに追い掛け回されてしまった。
疲れる。
盛大にため息を付くと、そこに居合わせたヘルマに面白そうに笑われた。
「笑い事じゃない」
「あら、そう。私には楽しそうに見えたけど」
「あんなバカの相手、楽しい訳無いだろう」
「人間、バカ正直位が可愛いものよ」
私のプリンヴェールみたいにね、と、ヘルマは笑う。
バカ正直も度が過ぎるとうるさいだけだ。
カイト位なら可愛いモノなんだけど。
疲れきった僕の様子を見ながら、ヘルマが頬に指を当て、何事か企んだいやらしい笑みを浮かべる。
「素直じゃないわよ。
「普段は抵抗ばっかりなのに、二人になったらあれだけ甘えるのにはびっくりしちゃったわぁ」
「な、なん……」
「そりゃあラーも一層つけあがるってものよね?ねぇ、ジェフティ?」
にっこりと満面の笑みを浮かべたヘルマは、まさに魔女の名に相応しい。
引きつった笑いをしながら青くなっているだろう自分の姿は、それは面白い事になってるだろうなと人事の様に思う。
何でヘルマが知ってるかって、常識的に考えて当たり前だったのだ。
ラーの部屋とヘルマの部屋は隣で、二人共お互いの部屋側にベッドがある。
騒いで、声を上げたら、もちろんヘルマに丸聞こえな訳で。
「まさかジェフティが可愛い声で、『ラーが欲し「待て!!!」
それは、昨日、僕が。
自分が言った事をヘルマに繰り返されそうになり、悲鳴に近い制止の声を上げた。
「………何が目的だ」
「そうねぇ、私今薬品を作るのに必要な材料があって。高価で貴重なものだから、なんならこの船を手に入る場所まで動かして欲しいわねぇ」
胃が痛い。
これなら、あのままラーと言い合っていた方がまだマシだったかもしれない…。「そうそう、ラーの部屋にいる時は気をつけた方がいいわよ。私の部屋に丸聞こえだから」

船の軌道を変えて貰いに行こうと、青い筈なのに熱くなった顔の僕に、ヘルマがなんとも遅い忠告を投げかけてきた。






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