※これは「Nn」管理人紅子の作品「崩壊を告げる音」の設定を用いたネタです。
羽柴葵と共に「崩壊を告げる音は最後こうなる」と話しを考えたものの、書くとなると二人共違う文章が生まれると思い、羽柴葵の「崩壊」最後を読まない内に私の思い付いた「崩壊」最後を書きました。※





赤黒く変色した、魔物の様な鱗がびっしりと生えた腕が怖いと思った。
でも結局ラーはラーのままで、言葉を交わしてみたら身体情報の崩壊が始まってるなんて思えない程ラーはラーのままで。

「…ラー」
「近寄るな、って言っただろ?ジェフティ!」
「知らない。聞こえない。平気だ」
「平気も何もねぇだろうが…」

ラーの言葉を無視し、近付いた。
一歩、一歩と固い床を踏みしめて。
意地を張る様にして近寄り前に立った僕に、ラーが困り果てた様にため息をつく。

「…怖いんだろ、この腕」
「うん、怖い」
「なら、」
「ラーがラーじゃなくなっていく事がはっきりと目に見えるから、怖い」

唇を噛み締めたラーを見て、ああラーもやっぱり変わってしまうのが怖いんだなと思ってこんな時なのに少しおかしかった。
ラーには何も怖いものなんてなくて、弱点なんか無いんだと思っていたのに。
手を伸ばし、身体情報の崩壊が始まっている腕を触る。
びく、と。
少しだけラーの体がこわばったのを感じて、ラーの腕をしっかりと握った。

「…ジェフティ」
「大丈夫」

心配そうな声があがるが、それも無視して手をそっと触る。
こんなに温かいのに、こんなに昔のラーのままなのに、今だってこんなにラーはラーのままなのに。
いつも君から握ってくれた手。
初めて会った時から今日の今まで、一度も僕から手を握った事なんて無かったね。
そう思うと、初めて僕から握った手がこんな状況だなんてなんて滑稽。手を強く握り締めたまま、ねぇラーは船に戻らないならどうするの、と聞いたらラーは扉の中を少し見て微笑した。
ラーがどうしようとしてるのかその動きだけでわかって僕の口からは自然に言葉は漏れていた。

「一緒に行くよ」
「なっ、それだけはダメだ!お前は船に戻って、今まで通りに生きろ」
「今まで通り、なんてよく言えるね?僕の生活にこんなにも入り込んでおいて、」
「ぅ…」
「反論は言わせないよ。…お願い、ラー。連れて行って、今度こそ」
「…ったく、わかったよ!」

ああもうこいつは、と悪態をついているけれどもう遅い。
了承を得たからには絶対付いて行くからな。

「ならせめて崩壊を起こして無い腕を掴め。いつ変な風になるかわからねぇだろうが」
「ふふっ心配症だね」

死ぬと決めた二人なのに、どうしてかさっきまでよりすごく心が弾んでて。
ラーに言われた通り前のままの方の手を取り、肩に額をくっつけた。

手を。
繋いだ時の温もりが好きだった
(それも今日で終わりさ、僕たちは体を捨てる選択をする)

だけど今は君の温もりを感じてる。
僕にとって、それだけで十分なんだ。










繋いだ温もりが好きだった






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