「ヴァン、君はいったい今まで何処に行っていたんだ!?」 つい先日、昼にはいたと思ったら何故か夜の会議には居らず、それから二週間今日まで消息を絶っていた。 前に天ぷら食べたいといきなり日本に消えて音信不通にしていた時からだ。 ヴァンは思いたった様にどこかへ消えては、ふらりとまた船に乗船して来る。 現地で講師をしていた大学でケツを追い掛け回していた若い男でも、懲りずに追い掛けているのだろうか。 「この間発見した遺跡調査はなんとか僕達だけで終わらせたものの、仮にもあなたは船のリーダーなんだから」 いきなりいなくなられては困る、そう言う前に、ヴァンの方が「わかった」と頷いた。 「わかってくれたのなら――」 「今日からリーダーは俺じゃなくお前になれば、問題は無しだ」 「はあ!?」 なんとも珍しくヴァンが素直に納得してくれたと安心したのがバカだった。 いきなり何を言い出 すんだ、コイツは。 「これからよろしく頼むぞ、ボス」 ヴァンは僕に一切の反論すら許さず話しを進め、あれよあれよと言うままに僕はヴァンの代わりにルシフェルのリーダーとなった。 「そうだな、ジェフティ。いきなり一人でそんな責任を負うのもつらいだろうから、お前のためにロシアンブルーの可愛い『猫』を届けてやる」 「『猫』?」 飼えとでも言うのだろうか。 …可愛い猫で気分をまぎらわせろ、と? …………。 困惑しヴァンを見るジェフティに、ヴァンは不敵な笑みを見せる。 「その『猫』をお前の助手にすれば、必ずお前の役にたってくれる筈だ」 『猫』はそのままの意味では無く人間か、と思いあたる。 「ヴァンの新しい飼い猫、って事かな」 「そんな所さ」 無理矢理リーダーの座を押し付けられたその日から、さらにヴァンが船にいる事は少なくなった。 『猫』はいつまでたっても届けられる気配は無く、またヴァンが消息を絶った数日後。 早急に、ヴァン本人の手から渡される事無く、その『猫』が僕の手元にやって来た。 「その目の色でわかったよ」 「目……?」 何のことだかわからない様子で、ライカは緑色の目を細める。 「ヴァンから、お前のためにロシアンブルーの可愛い『猫』を届けてやると言われていたけど、君もロシアンブルーと同じ綺麗な緑色の目をしているんだね」 「!」 ライカに会い、ヴァンは消えた時はライカに会っていたのかとジェフティは思う。 ヴァンの飼い猫、そう呼ぶには、ライカはヴァンに大切にされ過ぎているな。 『冷血のヴァン』の異名を知らない程に、ライカには温かく接していたと言う事だ。 『お前は、どちらがいい?』 生きていてほしいか、死んでいてほしいか――。 いきなり消息を絶って、そのまま世界からも消えた、そんな…自分勝手な人間。 (最後消息を絶つ前、あれが最後だったのに。どんな会話をしたかなんて覚えもいない) 殴って、そして『猫』は受け取ったと。 約束はちゃんと果たされたと、そう言うまでは―― 生きていてもらわなければ、困る。 届けられたロシアンブルー |