「まさかお前が、本当に僕を弟だと思ってたなんて思わなかった」
「悪かったよ、本当に。でも馬鹿親父だっていけねぇんだ、紛らわしい事しやがって」
「……約束、破ったのには理由があったから……許してあげてもいいよ」
「おし! んじゃ仲直り、だな」

 急に握り締められた手に、またこいつはこんな――と思ったけれど、今日からは突き放さないことにした。
 手を繋いで、空を仰いで。
 見上げた空は夕暮れのグラデーションで、顔を見ずにもう消えないようにと握り返した。
 その手が、二度と離れることのないように。

 拝啓、僕の面倒で億劫な彼を愛しく想う感情様。
 あなたに精神汚染され、僕には精神安定剤として彼が側にいないといけなくなってしまいました。

「今度ペンギン、見に行こうな」
「……うん、約束」

 昔みたいに手を繋いで、二人きりの約束を交わす。
 それだけのことがこんなにも、こんなにも嬉しくて幸せだと感じる精神病の僕に、早く薬物投与をお願い。







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