高い空は手を上げても届きそうになくて、青すぎるその空に泣きたくなった。
 私は、学校からの帰り道、ヘンなジュース買って海を見て時間を潰す。
 もう慣れたその行為。けれども、今日は普段と違うものが目に入った。
 帰り道である堤防に、まるで間違い探しのように黒い人影が座っている。
 初めて彼を見かけた日のことを思い出しながら、私はお気に入りのヘンなジュースを片手に駆け寄り、彼の名前を呼んだ。
「往人さん」
 全身真っ黒な格好をしたその人は、くしゃくしゃになった紙を見つめてうなっている。
「あ、それ私の地図」
 何を見ているのだろう、と身を乗り出してみると、私が往人さんのために描いたこの町の地図だった。ついこの間のことだから、何を描いたのかまだ覚えている。
 その声で私がいることにようやく気付いたみたいに、往人さんが私を見た。
「この地図に何か隠された暗号があるんじゃないかと思ってな……」
「ないよ、そんなの」
「……勝利と栄光をこの手に!」
 きゅぴーん!と目を光らせている。
 話し、聞いてないし。
 いきなり変な事言い出すし。
 面白い。ヘンなジュースみたい。
 ストローをジュースパックに差し込み、ジュースを飲む。どろり濃厚ピーチ味。
「この町で何か探すんなら、もうその地図もいらないよ」
「何でだ?」
 前に女の子がいて困ってた時もそうだけど、とジュースを飲みながら立ち上がる。
 風が吹いて、髪がなびいた。
「わたしと一緒に探せばいいから」
「ああ……そうだな。そんなヘンなジュース知ってる位だから、ウッハウハに稼げる所位知ってるんじゃないのか?」
「往人さん、そればっかり」
 往人さんが立ち上がり、目線が高くなった。

 一緒に、一緒に。
 だってその方がずっと、楽しいから。

「じゃあ観鈴、ラーメンセット百年分を目指してレッツゴーだ」
「にはは、れっつごー」

 えいやと、二人で高い空に向かって拳を上げた。
 空はまだまだ、高いまま。








あの空で会おうよ






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