開いていた襖に、どれだけの希望を抱いただろう。あり得ないと理解しながら、何故足は小走りになっていたのだろう。
 包帯を巻いた腕が、ズキズキと痛んだ。
 心臓が、うるさいくらいに高鳴った。
 ――生きている音。
 銀色に輝いていた繭も、同じ鼓動を刻んでいた。
 この手で触れたとき、彼女の温もりを確かに感じた。
 彼女が生きている、音が聞こえた。
 オレはあの時、どんな言葉を漏らしそうになったのだったか。
 嗚咽を漏らしそうになっていた。叫び出したかった。
 ……ただ、名前を呼びたかった。
 何故、ここに亜梨子がいないのだろう。

 リボンと長い髪を揺らしながら、今にも彼女が走って来そうなのに。





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