もうずっと昔から隣にいるのが当たり前になっていた。幼なじみと言うよりは腐れ縁といった方が正しい、私と彼の関係は高校一年の今この時この瞬間まで続いてきた。そしてこれからも、私たちの関係は永遠に続いていくのだと思っていた。
 なんてバカな勘違い。

「詩歌と、パレードを見に行くことになったんだ」

 先日転入してきた杏本詩歌という少女とは、亜梨子もよく話す。髪を赤いリボンで飾った、ショートカットの髪がよく似合う可愛らしい女の子だ。
 少しだけ奥手な感じで、何もない所で転んだりと危なっかしい印象がある。親友の花城摩理にどことなく似ているかもしれない。
 そんな少女が、亜梨子の幼なじみである薬屋大助と仲良くなっていることは知っていた。あの二人、そのうち付き合い始めたりするかもねと友人が話していたことも覚えている。
 なのに私は、思っていたのだ。そんなことある訳がない、大助は絶対に私の側に居続けてくれる――と。
 嫌そうな顔をしながら、不機嫌を露に文句を言いながら、ぶっきらぼうな仕草で私の手を掴んでくれるのだと――一パーセントも疑っていなかった。

「――クリスマス、私の家でパーティーやるって言ったじゃない」
「毎年やってるだろ、今年くらい好きにさせろよ」
「何よそれ、大助のくせに」
「クリスマス以外なら埋め合わせしてやるから」
「………何よ。奴隷のくせに、ご主人様の言うことが聞けないの?」
「ハァ? お前なあ、人のこと奴隷奴隷いい加減にしろって言ってるだろうが。流石のオレでも怒っ…」

 幼なじみ。腐れ縁。ご主人と奴隷。
 そんな言葉で大助との関係を繋ぎ止めていた。
 彼が手を繋いでくれるんじゃない、自分が無理矢理引っ張っていただけだ。
 腐れ縁でも何でもなく、自分の都合のいい様に彼を振り回していたに過ぎない。
 亜梨子の我が侭に、大助が付き合ってくれていただけ。
 依存し、執着して手放さなかっただけだ。
 何故今まで気付くことができなかったのだろう。
 私は、一之黒亜梨子は、薬屋大助だけを求めていたのに。自分のことなどどうでもよくなり、我を忘れるくらいに欲していたのに。

「行かないで!」
「………亜梨子?」
「行かないで、行かないでよ、私から離れないで……! ずっと、側にいたじゃない。確かに最近は少し離れてたかもしれないけど、また戻ってきてくれるんでしょう? 大助が、いなくなっちゃうはずないわ。そうよね……!?」
「お、おい……どうしたんだよお前。少しおかしいぞ」
「……わかってる! もう、気付いたもの。今まではずっと、貴方が離れようとしても私がそれを許さなかっただけだったんだって。でも、好きなのよ……」

 大助が、唇を噛む。
 困っているのがわかるのに、自分のせいで私が苦しんでいると考えて彼が苦しんでいることがわかるのに、自分の本音に気付いてしまった亜梨子はもう止まれない。

「大助、いつか言ってくれたわよね。お前が選んだ方になってやるよ……って」
「あ、あれは……あの時は、オレだってお前のこと……」
「決めたわ、大助。私と恋人になって」
「………っ!」
「詩歌がいなかったらオーケーしてた、なんて――言わないわよね?」

 もし、脱走しようとするペットがいたらどうするか?
 決まってる。
 鎖で繋いでおくしか方法はない。








永遠を夢見ていた






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -