オレはコイツのことを何でも知っていると勘違いしていた。

「当たり前じゃない。だって――」

 何も、知らなかった。一之黒亜梨子という少女の本質を――彼女の強さだと思っていたものが、本当は真逆のものであると――大助を初めとした誰一人、気が付いていなかった。
 ようやくオレは、亜梨子のことを知ったのだ。

「摩理とは出会った頃から、一度も別れたことなんてないもの……」

 ――これは、オレのただの願望かもしれない。それでもオレは、信じていたい。
 いや。
 今でも、亜梨子を信じている。
 虫憑きのことを考え、想い、本音をぶつけ、言いたくても言えなかったことを全て代弁してくれて、オレ達と手を繋いでくれた。
 そんな少女ならば――絶対に、また前を見据えて――走って行けると。

「お前はもう、大丈夫だよな?」

 全てを知った、今だから言える。












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