「あ、あ、駄目、ダメ……やあ、いやぁ! 私、なんかっ……変なっ、感じで……あぅあっ、やあぁ……き、きちゃうの、何か、きちゃっ……」
 亜梨子は一瞬でも気を緩めてはならないとでも言うように力を振り絞り、瞼を閉じて激感から逃れている。
 自慰もしたことがなかったのだ、絶頂など存在すら知らないに違いない。
 握りしめた手は汗ばみ、弱々しく震えていた。
「嫌、やだ、大助ぇ……っ」
「亜梨子、大丈夫だから……」
「いやぁ、おかしくなる……怖いの、ダメだから、あぁ、もうぅっ」
 軽いパニックに陥っているのだろう、要領の得ない様子で首を振られる。
 耳の輪郭を舌でなぞってやると、「ひゃひぃっ」ともはや理性の欠片も感じられない蕩けた声が上がった。
「イくんだろ? いいぞ、イっても」
「あ、ぁ、あくっ……い……くって……? ひゃ、ふあぁぁっ……」
「……その様子じゃ、経験してみたほうが早いな」
 軽くかじり、わざと息がかかる距離で囁いた。
「亜梨子、イくって言えよ」
「ひっ、ひんっ!」
「わけわかんなくなる瞬間に、イくって言って」
「はぁぁっっ……あんんっ! えっ? あっ、あぅっ、ぅんっ、ああっ」
 締め付けが強くなる。
「あ、い、いく――」
 唇が戦慄き、涎を垂らしながら甲高い声が漏れ出した。
 瞬間、大助の背筋が震えた。
 同時に果ててしまいそうになり、慌てて歯を食いしばる。
「だ、大助ぇ、いく……いっちゃぅぅ、いく、いくうっっ!」
 亜梨子の身体が大きく痙攣し、反り返った。
 恐らく、生まれて初めての絶頂。
 快楽の波が去り、うわごとのように繰り返させていた「いく」という呟きが消えるまで、たっぷり数分間の時間を要した。
 顔を上げると、未だ正常に戻りきらない惚けた瞳が大助の視線を絡め取る。
「だいすけ……」
 したったらずで、甘い声は、よく知る少女とはかけ離れすぎていた。
 幼子のようなのに、生々しい艶かしさを持っている。
 跳ねる心臓を無視して濡れた唇にむしゃぶりつき、舌を絡めてやり過ごす。
 少女が女になる瞬間を、見てしまった。
 いや――見てしまったどころか、その階段を上らせたのは他ならぬ大助なのだ。
 興奮と共に愛しさが膨れ上がり、息が上がるまで口付ける。
「んっ……んう……んふ……んんっ! ん、んくっ、うんっ!」
 力が抜け、口内まで柔らかくなった気さえした。
 舌を潜らせ、唾液を混ぜ合わせて飲み下す。
 ねっとりと糸を引きながら二人の唇が離れたとき、亜梨子は熱っぽい笑みを浮かべて呟いた。
「なんだか、また……いっちゃいそうだわ」







い、いくっの日ですねというネタを見たので、突発SS。
0721の日といい最近こんなのばっかりで



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