普段であれば朝稽古を終わらせ、胴着から制服に着替えている時間帯。中庭に通じる襖越しからも暖かい陽射しを感じ取れる、気持ちのいい朝――の、はずなのに。
「んぅぅ……っ、ん……ふあぁっんっんんん……」
 ――私はどうして、こんなことに身を窶しているのだろう。
 布団の中で手を動かす度、荒くなる息と共にはしたなく上擦った声が漏れた。下着はパジャマのズボンに絡まりながら足首まで下ろされ、肌が直に敷布団を擦っている。
「ふっ……んくぅぅ……はぁ、はあっ……」
 片手で胸の尖りに触れつつ、もう片方の手を股間の奥へと埋めていく。第一関節だけを浅く出し入れすると、くちゅくちゅと粘ついた水音が少女の耳まで届いた。
「あっ、ぁ……大助っ……大助ぇ」
 亜梨子は自分を慰めながら、同居人である少年の名前を小さく呼ぶ。
 今朝見てしまった、妙に生々しい夢を辿りながら再現する。自分の指を大助の指に見立てて、初めての行為に加減もわからず強く乳首を摘まんだ。
「ぁあっ、あっ、あぅぁっ……」
 力任せにぎゅぅと股間を圧迫すると、手の平から指先まで透明の液体が伝った。ぴくぴくと震えの止まらないソコに、あと少しで頭が真っ白になる、夢の中でこそ味わったことのあるあの感覚に到達することがわかり唇を噛んで身悶える。
(あ、あと、ちょっとで――あ、あっ、もう……っ)
 …………亜梨子。
 低く、熱っぽい囁き。
 夢の中、彼は、大助は私を抱いて――
「亜梨子、入るぞ!」
 ――パンッ! という軽やかな音を立てて襖が開かれ、亜梨子はビクリと身体を竦ませた。
「チッ、寝坊かよ……もう食事して出ないと間に合わねぇぞ! 師範代の婆さんもなんでか俺に言いに来るし、俺にまで迷惑かけんなよな」
 布団は被ったままになっているため、おかしくは思われなかったようだ。亜梨子が目を白黒させているのも寝起きだからだと判断したようで、ごく自然な動作で歩み寄ってくる。
 寸止めになっていた下腹部が、妄想に使っていた少年が目の前にいることに反応して更なる熱を持った。イってしまう寸前に入ってこられたため、長くは耐えられない疼きが亜梨子を苛み悶えさせる。
「……エロ大助! 女の子の部屋に入る時は声くらい掛けなさい!」
「なんだそれ、起こしに来てやったんだから感謝しろよ。そもそも部屋に入る時ノックもないのはお前のほうだろうが!」
 ズボンを上げようと思っても絡まった下着が邪魔になってうまくいかない。もしバレたら。それを考えると背中に冷や汗が滲んだ。
「やっ、ちょっ、ちょっと待って! そ、そう、まだパジャマ姿なんだから! 今来られちゃったら、私っ」
「パジャマ姿って……風呂上がりなんていつもその恰好で歩き回ってるんだから今さらだろ。花城摩理の真似でもして難を逃れようって魂胆か? それとも今度こそ悪質な嫌がらせか? いいからさっさと起きて支度しろっての!」
「きゃああ!」
 布団を剥ぎ取られかけ、ズボンを上げることを断念して慌てて引っ張り合う。
「バカ! バカ大助! も、もう、すぐイくから……っ、支度して行くから、本当に待っ――」
 ずるっ。
 一度拮抗が崩れてしまえば早かった。元より寸止め状態で焦らされていたのだから、力がでなくて当然だ。掴んでいた布団が手の平を抜け、僅かに引っかかっていた指から離れ、そして――
「あ…………」
「……えっ?」
 布団を巻き上げられた瞬間、こもっていた匂いがぶわりと広がる。
 大助の側からは、完全に見えているのだろう。ポカンとした顔が次第に赤く染まり、完全に虚を突かれたのか目に見えてうろたえる。「ふっ、布団……」
 返しなさいと言ったつもりが、唇が震えて言葉にならなかった。大助にはほとんど掠れて聞こえなかったかもしれない。
 せめてもの防御に、腕を挟んで足を閉じる。大助は「悪い」だとか「その」だとか亜梨子同様掠れた声帯で言い淀み、布団を投げ掛けようとして――止めた。
「……お前でもそういうことはするんだな」
 向けられた一言に、きゅんと身体の奥が疼く。
 何をしていたのかバレている。当たり前だ。布団の中、下だけを脱いで濡らしていれば、誰が見ても一目瞭然だろう。
 手で覆い隠している足の間に視線が突き刺さり、亜梨子の身体が後ろめたい興奮に小刻みに震える。
 恥ずかしさと穿いていない心許なさに涙が浮かび、上がりきった体温を持て余してもぞもぞと太ももを擦り合わせた。
「あ……あ、わ、私っ……ち、違うの……こんなこと、したことなんて……は、初めてなのよ……」
「ふぅん? それにしても、朝っぱらからってのはちょっとどうかと思うけど……」
「ちがっ、違うって言ってるじゃないっ……元はと言えば貴方が悪いのよ! 貴方が、夢の中で…………、それで……だから」
 もはや何が違うのか自分でもわからないまま違う違うと繰り返し、口を戦慄かせて首を振る。
 対して、大助は落ち着きを取り戻した所かどこか愉し気ですらあった。
「俺が、夢の中で? へぇ」
 言ってはマズいことまで口にしてしまったことにようやく気付く。誰のことを考えてシていたのか勘づかれてしまうのは、見られたことよりずっと羞恥心を煽った。
 大助が手に持っていた布団を亜梨子とは逆側へ放る。
 なんで、とそれに目をやった隙に大助が亜梨子の膝に手をかけ、左右に広げた。
「や……やあぁっ!? い、嫌ぁっ! やめなさいっ……見ないでぇぇ……」
 なんとか手で秘部を隠してはいるが、全てを見られている気分だった。抑えていても次から次へと溢れ出る愛液は指の間を抜けてシーツに落ちる。
 大助は足を閉じられないように身を乗り出し、亜梨子の足の間に入り込むと無慈悲にも最後の砦となっていた腕を強引に持ち上げた。
「めちゃくちゃ濡れてるな……」
 まじまじと観察され、感想まで言われて亜梨子は喘ぎ声とも泣き声ともつかない声を上げて大助の頭を掴んだ。
 ちゅぷんっ――。と、またいやらしい液体が流れ出る感覚がして力が抜ける。「ひっ」息を呑んで顔を崩れさせた亜梨子を見て、大助が口端を吊り上げる。
「へ、変態……! 離しなさい、このエロ大助!」
「着替えもせず、起きてすぐオナニーしてた奴に言われたくないね」
「ううぅ……そんなの私の勝手でしょう!? わかったわよ、もういくから早く出ていきなさいよ!」
「すぐイくから?」
「ああっ、ち、違うぅ……」
「違うのか?」
「あっ、やっ!?」
 少年の指を一本、丸々飲み込ませられる。
 自分で試してみた時はほんの少し、爪の付け根まで入れるか入れないか程度だったため、その先まで擦られる未知の感覚に悪寒に近い震えが背中を抜けた。
「最中に入ってきた俺も悪かったし、責任取ってやるよ。まだイってなかったんだろ?」
「やめっ……い、いいから……そんなことしなくていいから、抜いて……ふぇぇっ……んあっ……あぅあ、んぅぅっ」
 髪を掴んでも、胸を叩いても、大助はビクともしない。足を閉じようとしても大助の腰辺りを挟み込む結果にしかならず、突き入れた指を中で曲げられて遊ばれる。
 その度亜梨子は抵抗力をなくし、ついには赤みを帯びた顔を隠すことに専念し始めた。目を閉じた先にも、鮮明に大助の姿が浮かぶ。
 …………亜梨子。
 半ば無理矢理、亜梨子の身体を弄くり回す大助の姿は――夢に見てしまった光景そのものと言ってもよかった。否、夢の中ではもっとムードというものがあったし、快感も自分が自分ではいられなくなってしまいそうな強いものではなかった気がするけれど――。
「ふくっ、ふぅぅっ、うぅぁぁ……っんっんんくぅっ!」
 ねちゅっ、ねちょっ……初めとは明らかに異なった濃厚な音に掻き混ぜられていることを意識した。
 大助の指が亜梨子の粘膜を丁寧に撫で擦り、感触を覚えられるくらい嬲られる。
 入れられた直後は異物感と寒気と快感をミックスしたような何ともし難い感覚でしかなかったものに、段々と頭を狂わされていく。亜梨子の中に潜んでいた更なる快感を、大助の指が引き摺り出すように。全身の神経がアソコに集まり、茹だってしまったのではないかと思うほど亜梨子の中がほっこりと膨れている。
「ふゃぁあ……っ! もっ、もうぅ、わたし……私ぃいっちゃ……ひっちゃうからぁっ……駄目……だめ……だめぇっ……駄目ったら……あ、あ、ぁ、あっ」
 言葉とは裏腹に、次の瞬間に襲い来るであろう激しい蠕動を心待ちにする自分がいた。
 あと数秒。大助が部屋に押し入って来る直前の何かが破裂しそうな張り詰めた感覚。亜梨子を融解させる快楽の奔流に、途切れがちで切迫した声は甲高さを増していく。
 服越しに乳輪から胸の先全体までを、パクリと食まれる。擽ったさと口の中にこもる息の温かさ。その不意打ちに限界がきた亜梨子の中を、大助の指が揉み込むように刺激し――同時に、入口付近からクリトリスまでを親指で強く押し潰した。
「あふぁああっ! あっ――ぁああ、あひっ、あ――〜〜〜〜ッッ!!」
 ビクンッ――ビクッ。
 シーツや枕を揉みくちゃにして握り締め、冷めやらぬ熱に箍が外れたかの如く何度も身体を跳ねさせる。
 覚悟していた以上の強襲に意識を踏み荒らされ、亜梨子はボタボタと愛液を漏らして一頻り足を伸ばすと力なく倒れ込んだ。
 あまりの衝撃に、大助のことも忘れて目を閉じる。
「あ……う……ぅう……やっ……ひぃぃっ……うあぁ、ひっく……ふえぇぇっ」
 しかし、ぐったりと余韻に浸る暇もなく、鋭敏になった性器を上下に揉まれてしまいしゃくりあげた。眠気に意識を失う寸前のようなぐらぐらした視界の中、大助が全身を撫で回していることだけ理解する。
「だい、すけ……ぁくっ……」
 いつの間にかパジャマの中に潜り込んでいる手が、直接膨らみを撫でている。それを陶然と見詰めていると、大助が可笑しそうに笑みを溢した。
「今から行けば、まだ一時限目には間に合うぞ? 支度して行くか? それとも……このまま休んで、放課後までと言わず今日一日可愛がられたい?」
 可愛がられるという言葉に、亜梨子の中がきゅんと痺れた。
 一度は満足したはずの甘い疼き。それが再熱してしまったことを認めたくなくて、眉を寄せて堪え忍ぶ。
「な、何バカなこと言って……」
「別にどっちでもいいぜ? 学校行くって言うんなら、俺はその前にトイレで処理してくるしな」
 興奮しているのは自分だけではないということに、ようやく思い至った。そのことが嬉しくもあり、また恐ろしくも思える。つまり、「遅れても学校へ行く」を選択しなければこの場で初めてを奪われてしまうということなのだから。
「けど、お前は俺のこと考えてオナニーしてたんだよな? だったら、今ここで俺が出ていっても……俺にされたこと思い出して、また弄り始めちまうんじゃねぇ?」
「……っ」
 反論が喉に詰まる。
 しないと言い切れるだろうか? 本当に? 大助に犯される夢を見て、身体を熱くさせていたのに?
(あっ、あぁ……私……私は、大助に、このまま……)
 理性と自尊心が溶かされる。優しく胸をなぞられる度にぞわぞわと肌が泡立ち、煽られる。
「さっさと決めないと、どっちみち遅刻する羽目になるぞ?」
 言いつつ、器用にベルトを外しズボンを下げていく大助。
 何か言わないければと思うのに、初めて見る男性器に亜梨子は目を奪われてしまう。影になっていてよく見えないが、グロテスクなまでに肉感的な上、想像した一回り以上は大きくて太い。
(あれが、大助の…………)
 ゴクリと生唾を飲み込んだ。
 大助の指が、亜梨子の中で動くあの感覚が忘れられない。心臓が激しく脈打ち、それに呼応するようにじくじくと激しくなる股間の疼きが堪らない。
(大助ぇぇ……欲しい……欲しいのっ……早く、早く私を……)
 知らず涙を溢し、はあはあと嬌声にしか聞こえない切なそうな呼吸を繰り返しては身を捩った。大助はもうわかっているだろうに、亜梨子の胸や太ももを愛しげに撫でるばかりで直接的な行為に移ろうとはしてくれない。
「もう嫌……もう嫌ぁっ……大助……せて……イかせ……ひぁぁっ」
 小さな声でイかせてとねだる亜梨子の太ももに、大助の固く膨れた陰茎が押し付けられる。
擦り付けられるねちょねちょとした先走り液に、亜梨子は真っ赤になって瞬いた。
「夢にまで見たコレが欲しいって?」
「そ、そうよ……。学校も、休むから……このままだと私、苦しくてっ、おかしくなっちゃう……」
「そんなに欲しいなら、自分で開けよ」
 促されるまま、膝の裏に手を入れて開脚する。と、大助が「そうじゃなくて」と亜梨子の手を誘導した。
「あ……」
 ぬちゅっ……。
 自分の指が、蕩けきった柔肉に簡単に埋まった。あとほんの少しでも力を加えれば、大助の指をそうしたように付け根まで収まってしまいそうなくらい呆気なく。
 濡れている自覚はあったが、そんな表現は生温かったのだと思い知らされ亜梨子の顔が泣きそうに歪んだ。それでも、わだかまる性欲は発散されない。焦れて指を動かしてしまい、大助が見咎めた。
「ふひゃあああ! わ、わかった、わかったわよぉ! する、しますっ、しますからっ!」
 亜梨子の手の上を亀頭がぐにぐにと圧迫し、急かされて身悶える。膣口はまるで別の生き物かのようにビクビク痙攣して手の先にある大助を求めた。
 自分の手さえ置かれていなければ、大助はすぐ入ってこられたのに!
 既に、正常な思考回路は欠片も残ってはいなかった。亜梨子は両手を両足の付け根に添え、指を淫唇に掛ける。
「はあ、はぁ、はあっ……はう、うぅ……ひうううっ……」
 大助がじっと観察している中、思い切って左右に広げた。
 くぱぁと開いた入口からはピンク色の粘膜が覗き、ヌラヌラと光る。ポタリポタリと芳しい香気を振り撒きながら垂れ落ちていく涎は、一瞬にしてシーツに染みを作った。
 処女である少女にとって、中まで丸見えになった状態で視線を浴び続けることはこれ以上ないほどの辱めであった。どうやら、なくしたと思っていた矜持はまだ残っていたらしい――早く気持ちよくしてほしいの一心でポーズだけは崩さなかったが、とうとう瞼を閉じてしまう。
「お、犯して……お願い……」
 ……言えた。なのに、大助はあろうことか「人に物を頼む時は、目を見て言うもんだろ?」と割り開かれた膣に息を吹きかけた。
 何もされていないクリトリスがカッと熱くなり、更に膨れ上がったような気さえする。発情しきった身体が脈打ち、半狂乱に喘いだ。
「そんな常識的なことさえできない奴は、誰も可愛がってやろうと思えねぇよな?」
 大助の指が、デコピンをするみたいにぐっとクリトリスの上で力を込める。
「いっ、いやぁぁ……やめて、やめてやめてぇ!」
 それをされてしまったら、最悪漏らしてしまうかもしれない。
 竦み上がり、泣いて懇願する亜梨子。どうしたらやめてくれるのか考えた結果、亜梨子は恥ずかしさに滲む瞳で大助を見つめてその言葉を口にした。
「き、今日一日、放課後までなんかじゃなく……夜までずっとっ……か、か……可愛がってください!」



・・
・・・

「ああもう、私ったらなんでこんな夢……最低よ、大助と顔合わせられないわ……」
 意識が覚醒すると同時に脱ぎ捨てた下着は、その甲斐もなくぐっしょりと濡れて二度と使えないことは明白だった。
 情けなさに、肩を落として項垂れる。そっと股間に手をやると、甘酸っぱいようななんだかすごくいやらしい匂いをさせた液体が糸を引いて指を汚した。
「大助にあんなことされる夢見て、こんな風にしちゃうなんて……訳がわからないわよ。早く着替えないといけないわ……もうっ、なんで止まらないのよ……!」
 寝惚けて痙攣を続けるソコを押さえて身体を丸める。
(あともう少し眠っていられたら、夢の中だけでも満足するまで気持ちよくなれたかもしれないのに……って、何を考えてるのよ私は! そうじゃないでしょう、早く着替えて支度しないと本当に大助に襲われちゃうかも……)
「で、でも……ち、ちょっと触ってみるくらいなら、いいわよね……?」
 考えるだけでぼっと顔が火照って、亜梨子は少しだけだからとはしたない行為に身を窶してしまう。
「だ……すけ、だぃ……すけぇっ……ふぁぁぁ」
 そして、絶頂を迎える寸前、軽やかな音を立てて襖が開き――――


END.
オナニーの日お粗末様でした







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