※メンヘラネタ注意 頬に涙の跡を残した少女が、疲れ果て気絶するように眠りにおちるのを見届ける。 ――摩理……っ! ――オレがいる。 何よりも大切だったという親友、花城摩理。それをなくした瞬間の尋常ではない様子から、大助の腕の中で弱々しく眉を下げ、妙に艶かしい表情で乱れていた姿が頭の中をぐるぐると回る。 とんでもないことをしてしまった。その思いが大助の心を焦らせる。 それは身体を使った快楽で強制的に悲しみを薄れさせ慰めたことに対してかもしれないし、単純に一之黒家のご令嬢をこんな形で傷物にしてしまったことに対してかもしれない。 多分両方だ。それに、どちらにせよ自分が亜梨子に取り返しのつかないことをしてしまった事実は変わらなかった。 亜梨子の中から溢れ出て、布団に垂れている大量の白濁液がそれを物語っている。 放っておいたら摩理の後を追ってしまいそうだった亜梨子を引き留めておくにはこれしかなかった、なんて言葉は言い訳にならない。 もっといい方法があったかもしれないのに早々と思考停止し、亜梨子の様子を理由にして自分の欲望を叶えたに過ぎないのだ。 これは、最良の手段でも何でもない。 あの時出来た………最悪の手段だ。 やり場のない怒りが込み上げる。誰にもぶつけられない。悪いのは、花城摩理でも、亜梨子でも、誰でもないのだから。 事後の処理と、暴れてぐちゃぐちゃになった部屋の片付けをしてから自分の部屋に戻り、布団に入った。 亜梨子の様子を、他の虫憑き達にも伝えなければならないのだろうか。特環へ真実を報告するべきか。あの状態が続けば、学校へもまともに通えなくなるだろうな……。 煩いくらい悲痛な叫びが耳元でガンガン響いて、眠れない。 起きたら、普段通りに戻っていたりしないだろうか……。亜梨子ジャンプ! と布団に飛び乗られ、苦しさで目覚めるという最悪の朝を迎え、 「エロ大助!」 なんて、快活にポニーテールを揺らしている可能性だって、あるんじゃないか。 (…………有り得ないな) いつか、立ち直ってくれるかもしれない。 それは、有り得る可能性というより、ただの自分の妄想に近いものだけれど…………捨てきれない願いだった。 次の日。無機質な、携帯のアラームで目が覚める。 この屋敷に居候するようになってから、初めての快適な目覚めのはずなのに――身体も頭も重く、起きるのがひどく億劫だ。 少しすると、住み込みで働いている使用人が亜梨子の様子を心配して大助を呼びに来た。 「亜梨子様、大助様はどこかって……摩理はどこにいるのと、それしか言わなくて……。摩理、とは、亜梨子様が以前お友達だった方とは聞き及んでいますが……その…お亡くなりになった方では、なかったでしょうか……?」 霞がかった、寝惚けた頭がハンマーで殴られたような衝撃で覚醒する。 「――すみません、説明は後で。亜梨子の部屋に行きます。誰もついていなくて大丈夫ですから……少し、気にしないでいてください」 まだ何か言いたそうに不安気な顔をしていたが、「何かあったらお呼びください」とだけ言って仕事に戻っていった。 悪いことをしてしまったと思う。 話さなければいけないことでもあるし、同じ屋敷で暮らし、亜梨子やオレの世話をしてくれている以上いずれバレることではあるけれど……。まだ、うまく説明できる自信がなかった。 早足で廊下の突き当たりにある部屋まで行き、声をかけてから襖を開ける。 「大助……っ」 大助が何か言い、近付く前に、少女に抱き付かれた。 「お、起きたら、いないから……どこに行っちゃったのかと思った……」 |