「2が出ました。いち、に……えっと、“薬屋大助に後ろから首筋をぺろぺろされる”だそうです」
「どりゃっ! 6! “薬屋大助に中学生の枠を越えたことをする”! はい、今日は保健の先生がお休みらしいです!」
「何で狙い済ましたかのように休みなんだよ! 毎回毎回6を出す西園寺さんの手つき、明らかに素人じゃないし!」
「私は3ね。“薬屋大助に耳に息を吹き掛けられる。ちなみに両方”……とんだ変態ね、エロ大助! 亜梨子ドロップキック!」
 今日も今日とて、ホルス聖城学園中等部の昼休みは騒々しい。
 校庭に出て身体を動かす者、図書室に行って本を読む者、他のクラスへ足を運ぶ者とそれぞれが思い思いに一時間近くある長い休憩時間を利用している。
 一之黒亜梨子はと言うと、そのどれにも属していなかった。自分の教室に留まり、友人である西園寺恵那と九条多賀子と共に薬屋大助の席を囲んでいる。
 机の上に置かれているのは、恵那お手製のボードゲームだ。すごろくの合間に模型なども付いていて、ただルーレットを回していくだけで一生を謳歌できるとかできないとかで有名なボードゲームに似た作りとなっている。マスに書かれている罰ゲームの主語が、全て“薬屋大助”となっていると部分のみが違っているが。
 妙な凝り具合、才能の無駄使いとも言える方向性に発揮された完成度は、何をやっても人並み以上にこなす恵那らしい。
「ふっふっふー、後でまとめてやってもらうんだから。覚悟しててよね、薬屋クン!」
 恵那がきゃあきゃあと頬に手を当てながら、顔を赤くして身悶えた。
 方向性とされている少年は、そんな少女の様子に涙を浮かべながら一縷の希望をルーレットに託している。もう自分の任務のことなんて念頭にはないのだろう、ただの少年としての横顔を亜梨子が見詰めていると、視線に気付いた少年と目が合った。
 数秒、視線が絡む。
 涙の引いた、少し冷めた大助の双眸が、亜梨子の顔を値踏みするかのように眺め回した。
 何よ、と口を開こうとする一歩手前で大助がふっと表情筋を弛める。彼の本性を知らない友人やクラスメートが見たら、何かいいことでもあったの? と聞いてしまいそうなほど愉しげだ。
 しかし、亜梨子はギクリと身体を強張らせた。
 そうしている間に、勢いよく回っていた芯が止まったようだ。恵那と多賀子がルーレットを覗き込み、遅れて目を向けた大助が、一人動きを止めている亜梨子へと読み上げる。

「“薬屋大助と放課後の教室で二人っきり、いけるところまでいく”」

 二人の少女には見えない角度で、少年が含んだ笑みを漏らした。
 亜梨子は再び身体を強張らせた後、スカートを握り締め、太ももを擦り合わせる。僅かに動いた足が、机の下で大助の足にぶつかった。





 後頭部で一つに纏められた髪を脇に退け、滑らかなうなじに舌を這わせた。
 少女が鼻息がかった吐息を漏らし、身動ぎする。カタン、と机がフローリングを擦る音が、二人しかいない教室にやけに大きく響いた。
「れろ、ちゅっ……ん、“薬屋大助に後ろから首筋をぺろぺろされる”と、あと……耳に息を吹き掛けられる、だったか?」
「ひゃぁっ……んんん……っふ……」
 大助は亜梨子の首から口を離すと、真っ赤に染まった耳にふうっと息を吹き掛けた。少女の身体から力が抜け、またしても机がガタリと音を立てる。そんな亜梨子の姿を見て、大助が気をよくしたように笑ってもう片方の耳にも息を吹き込む。
「はうぅっ……も、もういい加減に……やめっ、やめなさいよ」
「言うなら西園寺さんに言えよ。後で纏めてやってもらうって言われたから、俺はその通りにしてるだけだぜ?」
 再び少女の首に顔を埋める。嗅ぎ慣れたシャンプーの匂いが心地好く鼻孔をくすぐった。
「まだ“中学生の枠を越えたことをする”が残ってるよな」
「あっ、た、多賀子と恵那のまで、何で私が……やらなきゃならないのよ! こんなの、おかしぃっ……じゃない」
 ちゅぅっと首を軽く吸い、痕を付けようとして思いとどまる。家族や知り合いに見られでもしたら、色々と問題がある。立場的にも、年齢的にも。
 コイツって実はいいトコのお嬢様だし、と大助はキスマークまでいっていないものの淡い桜色に染まった首の痕を嘗めた。この程度ならば、今日中に消えるだろう。
「じゃあ、九条さんや西園寺さんにこんなことしてもいいのか?」
 ブラウスを第二ボタンまで外すと、襟をぐっと下げさせて肩に近い部分までぺろぺろする。机と大助に挟まれている亜梨子の身体が、ピクリと震えた。
 どんな想像をしたのか、顔を真っ赤にして目を吊り上げて怒りだす。
「だ、駄目よ! 駄目に決まってるでしょう! 絶対駄目なんだからっ……そんなこと、ご主人様であるこの私が許さないわ! 他の女の子にぺろぺろしたり、もみもみしちゃったりしたら……お、お仕置きなんだから」
「そ、そうか」
「そ、そうよ」
 これは、分かりやすく嫉妬されたのだろうか。
 普段の亜梨子では見られない独占欲を剥き出しにされて、大助はほんの少し嬉しくなってしまう。
 しかし、正直にそれを告げるなんて恥ずかしい真似をするくらいならはぐらかしてしまう方が気が楽だ。妙に初々しい、照れ臭い沈黙がこれ以上空気を満たす前にと、大助は少々乱暴に少女の胸を掴んだ。
「……じゃあやっぱり、全部お前がやるしかないよな」
「えっ、あっ、そ、それは、あれは遊びなんだから……本当にやらなくたって……あうぅっ」
「その遊びで毎度弄られてる方の身にもなってみろってんだ」
 低い声で言い、横を向かせて唇を合わせる。怒ってるの? と、もごもごと上目遣いに尋ねられたが、黙殺した。
 亜梨子の向こう側にある机に腕を立て、強すぎない程度に少女に体重をかける。それに伴い唇も強く押し付けられ、行き場をなくしたようにそれぞれ自分の舌をお互いの口内に入れ合った。
「んっ……んぅ……んんっ、ん」
 身を乗り出して舌を絡める。
 机に立てている腕とは別の、もう片方の腕は先ほどから亜梨子の膨らみに当てられたままだ。舌を吸い合いながら掴みっぱなしになっていた手を動かし、小さく揉む。
 ボタンの外れたブラウスの隙間へ手を突っ込み下着を胸の下位置までずらすと、陶然とした表情で大助の唾液を飲み込んでいた亜梨子が僅かに怯えた色を見せた。
「大助、本気……なの? 教室でなんて、バレたらただじゃ済まないわよ? せめて、屋敷に戻ってから、に、ちょっと……ん、もうっ、んぅっ」
「“放課後の教室で二人っきり”ってのが、マスに書かれた罰ゲームだから、その通りにしないと……駄目だろ? 亜梨子」
 ちゅうっ。
 ねちょねちょと唾液を擦り合わせ、形のいい少女の唇を形作るように下でなぞる。キスの合間合間に言葉を吐き出し、はぁはぁと息を荒げながら唇を貪り合った。
「“いけるところまで”いこうぜ」
 校庭から、部活の掛け声が響いている。教室には大助と亜梨子しか存在していないとはいえ、部活もあれば委員会や用事もないのに居残っている生徒も少なくはない。もちろん、教師や警備員も存在している。
 亜梨子の言った通り、今二人が教室でしていることが知れたらただでは済まないだろう。特に、お嬢様校と有名なホルス聖城学園である。その上彼女は赤瀬川グループには及ばないまでも、それに近い財力と権力を持つ一之黒の一人娘だ。
 いくら特環に所属する虫憑きとはいえ、社会的に抹殺されるかもしれないなと大助はうすら寒いものを感じつつ手では柔らかい膨らみを堪能する。
 訓練されているから、一般的の気配くらいすぐに気が付けるだろうから……そんなことにはならないだろう、多分。部活も、終わるにはもう少し時間がかかるはずだ。
 亜梨子は未だ教室で事に及ぶことへ戸惑っている様子だったが、大助の手が薄い膨らみを揉み込んでいくうちに黒い瞳を溶けきった色に染めていった。
「あっ、あ、うぅっ、んひゃっ…………ダメ……駄目なのにっ……ぁああっあ、んゃああっ!」
 ぎゅっと乳首を捻ると、ほとんど小学生のようなサイズしかないくせに胸が弱い亜梨子は箍が外れたように喘いだ。
 それでもまだ理性は働いているのか、窓や教室の出入口に視線をさ迷わせている。いつ人が来るかと不安に苛まれている様子がありありと見てとれた。
 ブラウスが皺だらけになるまで胸を弄られながらも尚正常な意識を保とうと快感を圧し殺す姿は、素直に乱れられるよりもそそられてしまう。
 その姿が直ぐに崩壊してしまわないよう、大助も最初の一回きり直接的な快感を生ませないように乳輪をなぞったり胸全体を優しく撫でたりを繰り返す。
「はぁ……はぁ……ん、んん……んふ……だ、大助……やっぱり、やめましょうよ……」
「まだそんなこと言ってんのかよ」
「だっ、だって……ここ、教室なのよ? 私たちが、いつも勉強したり遊んだりしてる……そんな場所でなんて、んあっ、い、いけないこと、してるみたいで……ひゃぁぁっ」
 乳首を絞り出すように白い膨らみを掴むと、力の抜けた亜梨子の膝がガクガクと揺れた。大助の指が乳首を掠めただけで顔が弛緩しきって、言葉とは裏腹にもっとしてほしそうに恨みがましい目で見上げてくる。
 自室ではない場所、それも日常の象徴であるかのような学校の教室。誰が入って来てもおかしくない、そんな場所で肌を晒していることのはしたない解放感が亜梨子の身体を浮き立たせていた。
 恐怖心が羞恥心に変わり、背徳感が興奮に置き換わる。
 大助も、亜梨子のおっぱいを触りながらこのシチュエーションに興奮していた。
 止めるには惜しい。
 乳首に軽く触れつつ額や髪にキスを落として宥めると、「駄目だったらっ……」と自分に言い聞かせるような力ない呟きが少女から漏れた。
「やんっ、ひゃ……ぁ……大助ぇ、誰かに見られたら……あふっ……」
 ずるずると崩れ落ちそうになった少女の身体を抱き抱えて支えてやる。そのままゆっくりと床に座らせ、自分は椅子を引いてそこに腰掛ける。
「場所を移すにしてもさ、こんな状態じゃ出るに出れねぇし……そんなにここでするのが嫌なら、一回口でしてくれよ」
「な、なんでそんなにおっきくなってるのよ……バカ大助。ご、ご主人様の、く、くっ……口でなんて、身の程を知りなさい」
 見下すようにして言うと、亜梨子が口を震わせながら眉を吊り上げた。
 しかし力は戻らないのか、ぺたんと床にお尻をつけたままチラチラと大助の下半身に視線を向けている。
「でも、早くしてくんねぇとそれこそ部活が終わった奴らに見られるぞ? ホラ、膝で立って」
「きゃっ」
 腕を掴み、膝立ちにさせて大助の足の間に割って入らせた。パンパンに張った制服のズボンから一物を取り出すと、亜梨子の眼前に突き付ける。
「わ、わかったわよ……すればいいんでしょう、すればっ! ううっ……何で奴隷のあなたが私を見下ろしてるのよ……おかしいわ」
「ぶつぶつ言ってる暇があるなら、明日から西園寺さんにあのゲームをさせない方法でも考えてろよ」
「バカ大助、エロ大助、バカ大助っ……」
 もうどうにでもなれと言わんばかりの諦め混じりの表情で、亜梨子が肉棒の先端にちゅっと口付ける。
 それはまるで服従を誓うキスのようで、大助はニヤリと口元を緩ませた。
 柔らかい唇の感触が、敏感な粘膜に心地好い。ちゅ、ちゅっ、と軽い音をたてて何度も唇だけで触れた後、ようやく舌が這った。
「ペロ……ちぅっ、んっ、んふっ」
 雁首を何度も往復し、先端を丹念にペロペロされる。たまに少女が大助の顔色を伺うように見上げてくるが、そのたびに舌使いの拙さを指摘して気持ちよくなっていることを誤魔化した。
 あまり調子に乗られても困るのだ。
「もっと、全体を嘗めろよ」
「んっ、ふうぅっ……わかって……る、わよっ……んちゅ、れろっ……はむっ……ふんん……っ」
 ぐうっと身を乗り出し、椅子ごと大助の下半身を抱えるように亜梨子の腕が大助のズボンを掴む。
 茎全体を嘗めようと顔を付け根へと下ろしていくと、亀頭が亜梨子の頬に触れた。横からぱくりとくわえて唇で上下にしごかれると、亀頭もすりすりと頬を擦る。
 綺麗な顔と膨張した男性器とのギャップに、なんだかとても侵しがたいものを汚している気分になった。
 くすぐられているようなまどろっこしい快感に、大助の腰が震える。
 鼻息と生暖かい吐息が舌と一緒に肉棒に絡んで大助の意識をかった。
「んっむ……ぅむうっ、んぐっ」
 あーん、と大きく口を開いて、亀頭からカリまでをくわえてしまう亜梨子。
 粘度の高いお湯に浸けているような熱さが、大助の一番敏感な部分を包んでいる。カリを囲む円となった桜色の唇は、ぎゅっぎゅっとその円を絞って甘く食んでは大助の快感を浮き彫りにさせていく。
 あまりの気持ちよさに、さっさと腰を動かしてしまいたい衝動に駈られた。なんとかそれを我慢して荒く息を吐き出しながらふと視線を上げると、誰もいない整然とした教室が視界に映る。
「んっ、んんんう……んむぁ……ぢゅうぅぅっ」
 下を見れば、そんな場所には不似合いなほどはしたない行為に一生懸命になっている亜梨子がいる。
 椅子に座って授業を受けているときにでも、この光景を思い出してしまいそうだ。クラスメートがいる中、机の下に隠れて大助の下半身に顔を埋める亜梨子…………水音はざわめきに掻き消されるにしても、学校の机では前後左右共に丸見えだからできないな。教壇ならできるかもしれないが。
 たかが妄想に過ぎないが、なかなかに興奮を煽るシチュエーションだ。もしバレたら、クラス数十人もの生徒に亜梨子のこんな姿が晒される。その時、亜梨子がどんな反応をするのか考えただけで、大助の加虐心が沸き立てられる。
 小さな口いっぱいに大助を含み、ゆるく頭を振りながら口内で舌を踊らせている少女を見下ろすと、大助は彼の素性を知らないクラスメートにそうするような愛想のいい笑みを浮かべた。
「気持ちいいぜ、亜梨子。入りきらないんだったら口だけじゃなく、手も使えよ」
「ふぅっ、んっ、ん、んん、ちゅぱっ、ちろちろ……ちゅ、ちゅう、ちゅむっ。ずずっ、んくっ、ぅふ……べろ、はあっ、んんぅ……っ」
「うぁっ……そう、そんなふうにな」
 亜梨子の口から雁首辺りまで引き抜くと、ズボンを掴んでいた手を離させ茎部分に触れさせる。
 少女の小さい手に対し、大助の性器は大きすぎて指の輪っかで囲うことはままならないようだった。少女自身の唾液でべとべとになったそれを、にちゅにちゅと音を立てながら扱きたてる。
 大助に言われるまま指を動かし、口の周りを汚しながら奉仕している少女の姿は、とてもこの教室で大助を弄って遊んでいた少女と同じ人物だとは思えない。
「んっ……西園寺さんや九条さんが亜梨子のこんな姿見たら、何て言うだろうな」
 言うと、亜梨子が僅かにたじろいだ。
「それに、クラスのみんなもね。普段ご主人様だの奴隷だの言ってるのに、これが本当の一之黒さんの姿だなんて知ったらびっくりしちゃうんじゃないかな?」
「むぁ……な、らによ、本当の私って……私は、べつに……」
「こっちが本当の姿なんでしょ? いつもは奴隷だとか下僕だとか言って足蹴にしてる使用人のコレを、美味しそうに食べてる“こっち”がさ。気付いてる? 一之黒さん、すごくいやらしい顔になってるよ? はしたないなぁ、そんなにぺろぺろするのが好きなんだね。いや、屈辱的なことに快感を覚えちゃう変態さんなのかな? 教室でしてるとみんなに見られてるみたいで興奮するとか?」
 にこにこと優等生らしい微笑みを崩さず詰り倒す。
 今まで一心不乱に大助を嘗めていた亜梨子が落ち着かない様子になり、大助を握る手つきが荒くなった。顔が真っ赤で冷や汗ともつかないもので髪が額に貼り付いている。
 目の前にいる大助しか見えなくなっていた瞳が揺らめき、ここがどこであるかを思い出したかのようだった。
「んんっんんんん…………うーっ、じゅるっ、んうっ……はあ、はあ……そ、そんなわけっ、な、なぃじゃなぃ……っていうか、あなた、その気持ち悪い喋り方をやめなさいよね…………ゃああっ?」
「何がそんなわけないって? 乳首立ってるのが丸見えだよ、一之黒さん。ここから移動したいから嘗め始めたはずなのに、もう目的と手段が逆になってるのは何でだろうね」
「あ、あっ、ああぁっ、ち、乳首を弄らな……でぇっ、きゃぁぁ……あ…………っっ……ゃ、逆になんてなってないわよ……私は、本当にここじゃあ嫌だから!」
「誰が口離していいって言った? 舐、め、ろ。……コホン、普段から下着丸出しにしてる一之黒さんに露出趣味があるのはわかってたことだから、俺は引いたりしないよ? みんなに見られてるところを想像しながら、もっときちんとペロペロしてね」
 少女の想像を掻き立てるような発言を学園にいる時と同じ口調で言い聞かせる。はだけたブラウスの隙間から覗くピンク色の尖りをつんつんと右手の指でつつき、左手ではあやすみたいに頭を優しく撫でてやる。
 一度は離した性器を唇に寄せ、何かを言おうと開かれた口へ器用に押し入れた。半ば無理矢理突っ込んだ形ではあったが、噛み付くことなくくわえてくれる。
「んんん……んんっ、ん……ん」
 口の中が熱さを増したような気がした。
 手がもたつくからか、亜梨子は根本を掴むと最初そうしたように頭を振って出し入れを繰り返している。
 舌の腹をぎゅうぎゅうと裏筋に押しあてながら、唇に強弱をつけて肉棒を圧迫したりねっとりとなぶったり、先っぽを舌先でつついたりと、亜梨子も先ほどよりノっていると感じるのは大助の気のせいではないだろう。
 じゅぽじゅぽと唾液が絡む音をBGMに、大助は自分が昇り詰めてしまいそうなことを実感した。下半身に熱が集まり、それをグイグイと引き出すように吸われて、たまらなくなる。
「はあっ、はぁっ……やれば、できるんじゃねぇか。もう我慢できなさそうだよ、一之黒さん……っ」
 口調をクラスメートに対するものに統一するのもままならない。それほどに切羽詰まっていた。
「ふーっ、ふーっ、ふくっ……じゅぷっじゅうぅっ、んむぁぁ……んくぅっ」
 もじもじと不自然に身体を動かしていた亜梨子の頭を掴んで、更に深く引き寄せることで固定した。
  いつもの日常、この教室では、大助を使用人だと言い張り気分次第でパシりにしたりと、好き勝手上から目線の言葉を連ねている口の中に欲望の塊を叩きつけてやりたかった。
 亜梨子を窒息させてしまいそうなほどガッチリと、喉まで大助のぺニスで蓋をする。
 瞬間、喉に直接流し込むようにして射精した。手のひらを亜梨子の喉に当て、ゴクゴクと動いていることを確認しながら口内を好きなだけ犯し続ける。
「んぐっ――っ、っ……ごふっ、げほっ!」亜梨子が噎せ掛けて、ようやく鷲掴みにしていた頭を離した。涙混じりの汗が頬を伝っている。
 すんっ、と鼻を鳴らす音がして、やり過ぎたかもしれないと大助は少しだけ気まずくなり背中を擦った。
「んっ……ん……ん……あぁ…………やっ、ふぁ……ひく……あぁっ」
 けれど、絶対に亜梨子は興が冷めたりなどはしていないはずだ。泣きかけだろうとなんだろうと、結局はこの非現実的なシチュエーションに大助同様興奮している。
 大助に言葉責めされて無理矢理に大量の白濁液を飲まされていたとき、ぼんやりと陶酔した瞳で自分の口の中につき入れられた性器を眺めていた。
 何より、少しくらい――いや、かなり強引に犯すくらいのほうが感じてしまうことを、今までの経験上知っている。彼女のプライドを砕こうと怒りを煽り、その状態で責め続けると、剥き出しになった屈辱感がそのまま羞恥心と快感にシフトする。
 それを教えたとしても、亜梨子本人は絶対に認めやしないだろうが。
 優等生の笑みを崩し、普段こういう場面でだけ亜梨子に向けるいやらしい笑みが大助の顔に浮かんだ。
 ぐったりと大助の足にもたれかかる少女の背中や横腹、肩や首まで、ねちねちとフェチっぽい手付きで撫で擦る。そのたび、ぴくんと身体を震わせて呻き声を漏らす少女。大助は膝に力を入れると腰掛けていた椅子を後ろにずらし、自分も床に座って亜梨子と同じ目線になった。
「帰るか?」
「はぁ……ん……はぁ、は……」
「帰れないよな。こんな状態で歩いたら、下着駄目にしちまうし」
「……やぁっ!」
 ぐちゅっ……。
 ずりあがったスカートの中、下着を太ももまで下げて股間を触ると、フェラチオをしていただけにしては溢れすぎだと思うほどの液が大助の指を汚して伝う。
 見ると、高そうな下着にもとっくに染みを作ってしまっていた。
「下着脱いで帰るってのも、俺としてはイイんだけどな……」
「やっ……そ、そんな、あうぅ……教室でも恥ずかしい……のにっ。み、み、見られちゃう……見られちゃうじゃないっ……私の、こんな姿……嫌、いやぁ、大助ぇっ」
「想像しただけでこんなに濡らしてたのに、本当に見られたらどうなっちまうんだろうな。それはそれで興味ある……っていうか、俺のを飲んでたシーンなんて、クラスメートに見せつけてやりたいくらいだったぜ? ぜってーお前で抜くやつも出てくるよ。ノーパンで帰ってる途中にスカートが捲れて、もしだらだらに涎垂らしてる姿なんて見られちまったら……外だろうが何だろうが、一発で襲われるね」
 知らない男にそうされる自分を想像したのか、「うぅぅ……っっ」と顔をぐしゃぐしゃに歪ませて、縋るように大助のシャツを握る亜梨子。
 それを無視して、ボタボタと床に蜜を垂らす入口を指で擦りあげた。敏感なクリトリスも、構わず一緒に押し潰す。
 ぐしゅっ、ぐしゅっぐっぐっ、ぐちゅっ、ぐしゅっ、ぐうぅっ……。何度もそうするごとに速度と強さを増して揉み潰していると、亜梨子の息がどんどん不規則に荒くなった。過呼吸になってしまいそうなほど息を吸い込むことばかりを繰り返したかと思えば、浅く吐き出すことを続ける。
「あっ……はあ、はあっ、はひっ、はーっ、ぁ……っ……っ」大助の胸に顔を擦り付け、シャツを引っ張る力が急激に強くなったかと思ったら、次の瞬間に全身を弛緩させて白くなるまで握り締めていた手も床に落とした。
 声もなく達したようだ。指を立て、第一関節だけで浅く入口を掻き回してもビクッ……ぴくっと太ももを震わせただけで大きい反応がない。
 肩を掴んで身体を離し、顔を覗き込むと、瞳の焦点が定まっていない。朦朧としていて、なんだか危なげな雰囲気だ。感度が普段の数倍にまでなっていそうな。
「亜梨子?」
 名前を呼ぶと、少女の宝石のような黒い瞳がぱちりと大助に定められた。
 おもむろに顔を寄せられ、唇がが押し付けられる。ちゅっと啄むような音がして、数センチもない至近距離で見つめあう。
「こ、ここで、していくわ。下着を履かないで帰るなんて、有り得ないもの」
 苦渋の決断なんだからと言いたげな台詞に、大助はあっそと頷く。それから、にっこりと微笑んだ。
「やっぱり一之黒さんは、教室にいるみんなに見られるのを想像しながら俺に犯されたかったんだね」
「バッ……そ、そんなわけないでしょう!? あ、あなたが、ノーパンで帰るしかないだとか、お、襲われるとか怖がらせるからじゃないの……! それにその喋り方、気持ち悪いからやめなさいって何度言ったら……ぁぅ」
「クラスの奴らにしてる口調にした方が、雰囲気出るだろ? ……もうこんなになってるよ」
 イ、チ、ノ、ク、ロ、さん。入口で掻き回していた指をぐずぐずと中にめり込ませ、亜梨子の耳元で一文字ずつ丁寧に囁いた。
 一度イっているからか、亜梨子の中はもう十分なくらい濡れている。大助の指をぎゅうぎゅうと掴んで離そうとしないのに、中の柔らかい部分はピクピクと震えて更なる刺激を求めていた。
 それを確認して、ふやけそうになっていた指を引き抜く。胸の中で肩を弾ませている少女を床へと倒し、足を開かせてのし掛かった。
「きゃ……っ、んむぅ……んんんん…………あっ、ぅんっ、あ、あっ」
 焦らすように胸を嘗め、先端を甘く噛んだ。手では太ももから足の付け根までを緩く撫で、跳ねる身体を体重をかけて押さえ込む。
 指を引き抜いた入口が、蜜を垂らしながらねだるように痙攣している。大助はその縦筋をつぅっと指でなぞると、少女の触り心地のいい足に硬度を取り戻した自らの性器を押し当てた。
「誰がいつ入ってくるかわからないようなこの場所で、俺に犯されたいんだろ?」
「ち、ちが……」
「見、ら、れ、た、い、ん、だ、ろ?」
「あぁぁっやあっ、ぁっ、かっ、噛まないで……み、見られたいからぁっ! あ、あなたに……大助に、いっ、いやらしいことされちゃってる姿……を、見られることを、想像したら……身体が、へ、変になっちゃってぇ……あぁぅっ、教室でこんなこと…………明日から、もういつも通りにこの教室に入って来れる自信ないわよぉ……」
 閉じていた秘裂を両手の親指で左右に広げると、ぬらぬらとピンク色の粘膜がいやらしく光った。
 クリトリスは肥大化して、触って欲しそうに自己主張している。歯を立てていた乳首を解放し、股間に顔を埋めて軽く息を吹き掛けた。それだけで、亜梨子はごぷごぷと新しい蜜を溢れさせてしまう。
「で、俺にどうしてほしいんだ? 入れてほしいのか、このまま部活やってる連中がここに戻ってくるまでイかされないまま弄られるのか……なあ、どっちがいい?」
 濃い女の匂いを嗅ぎながら、膨らんだ肉芽にキスをする。亜梨子が、今にも泣き出してしまいそうなほど頼りなさげな上擦った声を漏らして淫唇が蠢いた。
「ひ、ひゃんん……っっ! い、入れて……おねがい」
 恥ずかしそうに、唇を噛んで自らの腕で顔を覆う。少年はそれをもぎ取り、顔を隠せないように腕を床に押しつけると、嘗めるように亜梨子の羞恥に染まった顔を視姦した。
「そこまで言うなら、仕方ないな」
 亀頭を少女の股間に宛がい、先ほど指でそうしたように筋をなぞった。先端に、くちゃりと愛液が絡む。
「あ、あっ、ああぁっ……」
「はぁ、はっ……んっ」
 ほんの少し体重を加えると、まるで亜梨子の側から引き寄せるかのごとくあっさりと飲み込まれた。
 それなのに亜梨子の中は緩むことなく、誇るように大助を締め付けてくる。
 一気に奥まで貫いた。亜梨子の腕を掴む手が汗でべとつき、自然と力が強まった。手首を圧迫されて血の巡りが悪くなっていた少女の指がぴくりと動いたことで、そのことに気がつく。
「ああ、あ――ん、んぅっ、ん……」
 謝らなければ。そう思ったはずなのに、大助は衝動的に口付けていた。
 一度全て埋め込んだ肉棒をゆったりとした動きで引き抜きつつ、跡をつけてしまいそうなくらい細い手首に食い込ませていた指を少女の指に絡めて握る。
 息を荒げながらも大助に負けず劣らず舌を動かし、吸い付いてくる亜梨子は、まるで大助の息をもらおうとしているかのようだ。口の端からどちらのものともわからない唾液を溢しながら、舌と息を絡ませる。
 それぞれ指の一本一本が交互になって絡められ、ふにゃりとした胸とその先端をシャツ越しに感じながら腰を揺する。少女の肉壁がうねって絡み、反り返った大助の形を覚え込むみたいに収縮した。
 二人の身体が、これ以上ないほどに密着する。
 こんな状態でいたら、もし誰かが教室に近付いてくる気配を感じ取れたとしても、直ぐには対処できないなと大助は心の中で苦笑した。
 下半身がズンと重くなるような快感が募り、蜜壺が蠕動するたびに射精感に苛まれる。身体を揺すられている亜梨子も大助の動きに合わせて身をよじり、小振りなお尻を床に擦り付けて赤くしていた。
「んあっ、あっ、ゃ、ひゃあぁぅぅぁ……ぁあ、あああっ、あー……ひぃぅぅ……んああ!」
 ぎゅっと瞑った瞼をわなわなと震わせ、半開きになった口から嬌声を上げ続ける少女。ふっきれられない羞恥と矜持を抱えたまま、達してしまいそうになっている。
 肉棒を半分だけ突き入れて小刻みに動いているが、今奥を叩いたらそれだけで抗いきれずイってしまうように思えた。
「大……助っ、はあぁっ、大助……だいすけぇ…………ん、あ、あ、ぁ、あ――あっ、くぅぅ……っふぁ、ひぃ、あぁぁ……っっ……っ」
 もし、今誰かが教室の扉を開けば。
 それだけで、ただ一人大助だけに晒されていた乱れきった亜梨子の姿が見られてしまう。
 その時彼女は、これまで学園で積み上げてきた一之黒亜梨子という人間のイメージやプライドを欠片も残さず破壊し尽くされ、それはもうイイ声でなくんだろうなぁと大助の嗜虐趣味を煽る想像が簡単についたのだが――
 なんとなく、気に入らない。
 亜梨子がどれだけいやらしくて、エロいことしか頭になくて、蹴るときに下着が見えていたり技をかけては胸を当てていたりするはしたない女の子なのかを知っているのは、大助一人だけで十分なのだ。
 しかし、大助に対してここまで身悶えしている様をこの場だけで終わらせてしまうのは、勿体無い。誰かに見せつけるか、はたまた亜梨子自身に見せて延々とそれをダシに苛めてやれたら愉しそうなのだが…………とまで考えて、ふとそれができることに気がついた。
 薄く笑うと、考えを誤魔化すように亜梨子の額に口付けしてから上半身を起こす。
 空を掻いた少女の足を持ち、寝ている亜梨子を大助が座って犯している格好。大助からは、かき混ぜられすぎてぷちゅぷちゅと泡立っている愛液が伝う結合部から、床に流れた長い髪まで余すことなく眺められる。
「ぁあっ?」
 体制を変えたことで、中に入っていたぺニスも突く位置がズレたようだ。不意をつかれた、一際甲高い声が上がる。
 ずるっとほとんど先端ギリギリまで引き抜くと、入口付近でイくにイけない程度に小さく動かす。焦れた亜梨子が、忙しなく腰を捻った。
「なあ、亜梨子。お前さ、前に俺と写真撮りたいって言ってたことあったよな?」
「ふぇ……? あっ、んんんん…………あったかも、しれないわね……ええ、あなたが特環の規則があるからって……んあっ、撮ったの全部、削除されちゃったけど……ゃあ、ああっ」
 それが、どうかしたの。そう言葉を言い切る前に、大助が制服のポケットから携帯を取り出した。
 普段滅多に使うことのない機能を選び、レンズがついている部分を不思議そうに大助を見詰めている少女へと向ける。
「記念撮影しようぜ。俺も、顔が写ってなければ問題ねぇからさ」
 携帯の画面に、パッと亜梨子の姿が映し出された。今大助が決定ボタンを押せば、恥ずかしい姿をそっくりそのまま撮影して携帯に保存される。
 惚けた顔ではあはあと身体を揺らしていた亜梨子も、この場にそぐわない機器に正常な思考回路が戻ってきたようだ。大助が何をやっているか気付いたのか、ハッとして目を開いた。
「バ、バカッ! 何やってるのよ!? き、きっ、記念って何よ……こ、こんな格好っ……あっ! あなた、それで私を脅すつもりなんでしょう!」
「放課後の教室で写真って言ったら、女が好きそうな思い出になるだろ? 後でお前の携帯にも送ってやるから安心しろよ」
「いひゃぁっ! んあっ、あっ、駄目だったら……や、あ、私、もう…………っちゃうのにぃっ! あっ、あっ、ああっ……やああっ……」
 暴れようとした亜梨子の身体の中に、ぐいぐいと肉棒を押し込んだ。眉をハの字に下げ、一瞬だけ表情が緩んだ隙を狙ってシャッターを押す。
 パシャッ! と軽やかな音が響き、それを聞いた亜梨子が絶対に許さないとでも言いたげな顔で画面越しに大助を睨む。感じ入ってしまっていて、実際に口を開いたら喘ぎ声しか漏れないから睨むしかないのだ。大助は可笑しくなってその顔も保存した。
「んひゃあぁぁぁ…………つ、突かないで! やめなさい……やめなさいよぉ! ふああっ、えっ、抉られ……っ、いやあぁ、もう許してぇ!」
 子宮口を亀頭で押し上げると、「ひくっ」亜梨子が息を呑んでみるみるうちに顔を歪めた。
 きゅうぅぅぅっと膣内が締まり、大助にしゃぶりついてくる。
 大助の身体が快楽で染め上げられ、柔い圧迫感に肉棒がカッと熱くなった。あまりの快感に震えかける手を無理矢理抑え、数秒後に訪れる最高の瞬間をカメラに納めようとズームにして亜梨子の顔を狙う。
「と、らないで……撮っちゃ……や! やぁ! んゃ――あ、あ、あ、ぁああああっっ!」
 亜梨子の瞳が、蜂蜜を垂らしたようにドロドロに溶けた。柔肉がうねって、複雑に絡む。腰が跳ね、ぐうっと反らしてガクガクと足を震わせる。
「……っ俺も出すぞ、亜梨子!」
「やだ、今出されちゃったら私っ……だ、や、またっ、またきちゃ……うぅっ、壊れちゃっ……ぅああっあああ…………〜〜〜ッ!?」
 大助もそれに釣られて、最奥部にぐつぐつと煮えたぎった熱を放出した。
 現在進行形で達し続けている亜梨子の姿を、携帯の画面を通して観察する。完全収納した性器から、精液を受け止めているお腹(と言っても、ブラウスとスカートで隠れているが)、ぴくぴくと動かすだけで投げ出されている腕。撮られたくないのなら腕で隠せばいいのに、晒け出されたままになっている崩れきった喜悦の表情。
 それらを、汗の一滴まで残さず納めてやろうとデータフォルダを埋めていく。
 最後の一滴すら残すまいと痙攣しながら締め上げてくる亜梨子に身を任せ、白濁液を小さな穴へと大量に吐き出していった。
 びゅうっ、びゅくっ、と音が聞こえてくるような錯覚を受ける。快感に意識が融解しかけそうなほど、全身を打ち震わせる。
「すっげぇ顔してるぞ、亜梨子――はぁ、はあっ、ははっ、中出しされてる顔もしっかり写ってて……直接クラスの奴らに見せるのは嫌だけど、目だけ隠したら誰かわかんないんじゃないか?」
 試しに、顔から下だけ接写してみる。
 当たり前だが無修正。皺のついたスカートや、ブラウスから見え隠れする下着と肌色が艶かしい。
 …………ん、これだと制服で学園がバレて大事になるか。考え、少々残念に思いつつもそのうち自分で使おうと保存した。
「ぅ……うぅっ、は、ん……えっ、エロ大助…………け、消しなさいよ、それぇ……」
「嫌だね。せっかくお前に自分の立場を教えてやれそうなネタが……いや、何でもない。お前も人に見られる方が興奮するみたいだったから、その気持ちを汲んでやっただけだって」
「だ、だから、見られて興奮するなんて変態的な趣味は、私にはないったら……ひゃぅぅっ? このっ、ぃい加減にしなさい……!」
 一回出して柔らかくなった性器を引き抜きかけ、大助が思い出したようにピストンした。再度勃たせる気ではなかったが、早くもいつもの調子に戻りかけている少女への追い討ちだ。
 精液を念入りに染み渡らせるよう、よーく中になすり付ける。
 案の定、亜梨子がぶるっと怖気が走ったように身体を震わせて軽くイった。
 名残惜しいが、三回目に突入するとなると時間的にも危険が伴う。ずるっ、と肉棒を抜き取って、少女の身体を抱き起こした。
「さっき撮った写真、全部送っとくな」
「消しなさいってば……ち、ちょっと、見せないでよそんなものっ」
「お前が見なくても俺が見るんだよ」
「だから消しなさい!」
 大助が出した白濁液とも愛液とも取れる濃い液体が、ぼたぼたと足を伝って床に落ちる。
「……見られて興奮する趣味はないんじゃなかったか?」
「な、ないわよ。ないけど……」
 もごもごと何事かを呟く亜梨子。
 声が小さすぎて聞き取れない。
 そりゃ、他人に犯されるのは嫌だけど――でも大助に――れてるのを見られるのは、ちょっと見せつけてる感じが――ううん、何言ってるのよ私ったら――云々。何だ?
「あ、あなたの正体を知ってるのも私だけでいいし……わっ、私のこんな姿だって、あなたしか知らなくていいんだから。見せないわよ、ええ」
 意表を突かれ、目を瞬かせる大助。
 亜梨子は、そんな大助の首筋に顔を埋めて、汗ばんだ肌をぺろりと舐めて――

「大助で遊ぶのは、私だけでいいの」

 信じられないほど、甘い声を出された。
 普段ならば、お互いに気持ち悪いと一蹴するような照れ臭いまでの行動。
 だと言うのに、何故か今の大助は、そんな亜梨子を見て……こう思ってしまったのだった。
 俺の監視対象がこんなに可愛いわけがない――と。





「2が出ました。いち、に……えっと、“薬屋大助に後ろから首筋をぺろぺろされる”だそうです」
「どりゃっ! 6! “薬屋大助に中学生の枠を越えたことをする”! はい、今日は社会科準備室が空いているらしいです!」
「何で空き教室まで知ってるんだよ! 毎回毎回6を出す西園寺さんの手つき、明らかに素人じゃないし……ってそういえば九条さんまで昨日と同じマスを出したような? 俺の気のせい?」
 今日も今日とて、ホルス聖城学園中等部の昼休みは騒々しい。
 校庭に出て身体を動かす者、図書室に行って本を読む者、他のクラスへ足を運ぶ者とそれぞれが思い思いに一時間近くある長い休憩時間を利用している。
 一之黒亜梨子はと言うと、そのどれにも属すことなく教室に留まり、ボードゲームの置かれた少年の机を二人の友人と共に囲んでいた。
 ボードゲームというのは、昨日に引き続き恵那お手製“薬屋クンで遊ぼうすごろく”のことだ。友人二人は、飽きることなくこのゲームを使って大助をからかうことを日課としている節がある。
「それじゃあ、次は私ね。せいっ!」
 友人に続き、亜梨子もまたルーレットに手をかけた。勢いよく回した針はくるくると回り、次第に緩慢になってぴたりと止まる。
 どれどれ、と恵那と多賀子がルーレットを覗き込み、今のうちにとこっそりこの場を離れようとしていた少年の裾を亜梨子がきゅっと掴んで引き留めた。
 マスに書かれた罰ゲームを、振り返った大助へと読み上げる。

「……“薬屋大助と放課後の教室で二人っきり、いけるところまでいく”」

 そう言って照れたように笑った少女の太ももを、透明な液体が一筋だけ伝っていった。





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