「あの時、友達でも相棒でもいいって言ったけど、本当は――俺は、亜梨子が望んでさえくれれば……」
 言葉を切り、亜梨子の瞳を覗き込む。どこまでも早くなる鼓動を亜梨子に伝え、投げ出されていた指を手探りに重ねた。
 ぐっと顔を近付ける。
 なにを思ったのか、どこまで受け入れてくれたのかまでは理解できないけれど、間違わずに届いた実感があった。
 多分、亜梨子は、変わらないものを大助の中に見たはずだった。
「目、閉じろ」
「な、何するのよ……」
「……さぁ、何するんだろうな」
 それくらい、自分で考えろ。
 亜梨子が息を呑んで、顔を真っ赤にしながら目を閉じた。

 2.00 大助 Part.3


「んっ……ちゅ……んぅ」
 室内を満たすテレビの音に、大助と亜梨子の舌が絡み合う水音が入り交じる。
 どれだけそうしていただろう。
 亜梨子が恐る恐るといった様子で目を閉じた瞬間、溜めも何もなしに唇を重ねた。ふにゃりと溶けていってしまいそうな柔らかさを確認したあと、一センチほど唇を離し、何かを言おうとした亜梨子が口を開いたのを狙って再度口付ける。
 口を付けるというより、貪りつく。
 引っ込みかけた舌を自分の舌先でつつくと、くすぐっさに少女が僅かに身動ぎした。構わず、大助は亜梨子の舌から頬肉までを堪能して唾液を絡ませていく。
 一瞬少女の身体が驚きに強張ったが、大助の言葉通りにぎゅっと目を閉じたままされるがままになっている。抵抗する様子がないことに安心し、続行。二人の間に引いた糸が切れないうちに、また唇を重ねた。
 一息つく暇もないほど、繰り返し亜梨子の口内を味わう。
 大助の唾液が自然と下にいる亜梨子の喉へと流れていき、反射的にではあるだろうがそれを嚥下していった。その度にぴくんと身体を反応させる亜梨子が可愛くて、大助は舌を吸い上げ同じように唾液を飲み下していく。
「じゅるっ、ちゅうぅ……ちゅっ、はあっ……」
 肩を上下させ、呼吸を整えながら見つめあう。
 酒が入ったかのような、赤く惚けた少女の顔。亜梨子から見た大助も、同じような顔をしているはずだった。
「……この、エロ大助」
「わかってて目閉じたのは、お前だろ」
 それでも目を閉じたということは――そういうことだろう?
 握った手に、力を込める。
「……抵抗しないなら、続けちまうぞ」
 ここまでしておいて、何を今更。
 自分で自分を罵倒しつつも、最後の宣告を口にする。
 それに、亜梨子は。
「い……いいわよ」
 押さえつけるみたいに握っていた大助の手を、握り返し――
「大助は、大助のままだものね。素直じゃなくて、意地悪で、隠し事ばっかりしてて……でも、いつも私のことを心配して、何かあったら絶対に助けてくれるんだわ。私の心臓が今動いてるのは、貴方の……大助のおかげだもの。あの時私を助けてくれなかったら……貴方がずっと、私との約束を守って、ここまできてくれなかったら……。だから、大助」
 言う。
 ちゃんと、大助の気持ちを正しく受け取ったからと。
 ちゃんと、変わらないものを見つけたからと。
 二年前と同じ鼓動を、お互い感じあいながら。
「大助には、私を好きにする権利があると思うわ」
 こんなときにまで直球な物言いは、あまりに魅力的で魅惑的だった。
 触れあった唇から徐々に全身を支配していっていた熱がカッと下半身に集中する。
 フローリングに半円を描いたポニィテールから、ハイソックスを履いたしなやかな足の先まで――好きにしていいという亜梨子の肢体を仰ぎ見て、ゴクリと喉を鳴らした。
「ち、ちょっと待って」 今にも我を忘れそうになっていた大助が、亜梨子の言葉で止まる。
「その……初めてだから、ちゃんとベッドにいきたいわ」
 ……そういえば、俺は寝室に着替えを取りに行くところだったんだと今更ながら思い出した。


 リビングを出て、寝室。
 先ほどまで硬い床に寝ていた亜梨子の身体は、今は柔らかいベッドに埋まって心なしか緊張も和らいでいるように思う。
 キスをしている間に手早く前をはだけさせ、下着を胸の上までずらす。凹凸とは言えないなだらかな膨らみが晒され、亜梨子が塞がれている口の中でくぐもった声を漏らした。
「んっ、んむぅ……うんんっ」
 揉むほどのない胸を撫で回すようにして触る。
 いくら胸が薄いといっても、幼女のように肋骨や鎖骨が目立つというわけではない。むしろ、骨があるのかどうか疑わしくなるくらいふにゃふにゃした女の子特有の柔らかさだ。
 おかしな趣味に目覚めてしまいそうなほど触り心地のいい膨らみ。正直お腹を触るのと同じ感触しかしないんじゃないだろうか、と思っていた大助は、いざ亜梨子の胸に触れてみて驚いた。女の子の胸というのは、決して大きさがすべてを握っているわけではないらしい。
 しばらく舌を吸い合いながら胸やお腹、腰や太ももまで丹念に愛撫してやると、亜梨子はすっかり力が抜けてしまったようで息も荒くくったりとしていた。
「あ、あっ……あぁっうぁ、んやっ……」
 口の端から一筋垂れている唾液を拭うことも忘れて、びくびく身体を震わせる。
(小さい方が感度いいって、本当なのかもな……)
 お尻も揉んでみたりしたけれど、胸が一番反応する。
 もっとも、女の子の一番敏感な部分を弄ったとき、今以上の反応が返ってくるのかもしれないが……ゆっくりと時間をかけて試していくとしよう。
「なんか……手慣れてるわ」
 上機嫌になっていく大助とは裏腹に、何故か不機嫌そうに漏らした亜梨子の言葉にギクリとする。
「そ、そうか?」
「そうよ。少なくとも、初めてとは思えないわね」
 ジト目だ。明らかな疑いの目、というより確信している目。
「……ぺろぺろ」
「うっ」
「……もみもみ」
「ぐっ」
「……エロ大助」
「…………」
 言葉もありません。
 本気で好きになったのはお前だけだ、とか言ったら、逆に最低男のレッテルを貼られるだろう。
 沈黙を肯定と受け取ったのか、亜梨子がため息をついて今日だけで何度目になるかわからない「バカ大助」を呟いた。
「……本当、俺たちっていつまで同じやりとりしてんだろうな」
「それもそうね」
 クスクスと笑う。
 どうしようもなく意味のない、何度も繰り返した会話。
 それが、あまりに俺たちらしくて、変わっていない証明のようで、愛しさが溢れた。
 多分これは、亜梨子の不安を消し去ってやることでも、お互いの気持ちを見つめあう行為でもあり……大助の求めていた場所を、確認させる儀式でもあったのだ。
 俺を必要としてくれる。
 俺が必要としている。
 そんな場所。
「んっ……」 キスして、抱き締めて、身体に触れて、ずっとそんなことを繰り返す。
 我慢大会のような、一向に進まない大助の求め方に亜梨子の方が先に痺れを切らした。浮わついた顔で大助の手を取り、汗ばんできた胸に寄せる。
 今にも泣き出してしまいそうな顔をしているのは、それほどまでに恥ずかしいということだろうか。ここぞとばかりにからかって、奴隷だなんだと殴られている恨みを晴らしてやろうと加虐的な考えが頭を過ったが、なんだか少し可哀想になってしまった。
 こんなときしか見せない女としての顔を思う存分引き出したい。
 目尻を下がりきらして、涙と一緒に本来の「一之黒亜梨子」を溶け切らせて落としてみたい。
 本能からくる欲求が大助の背中を押す。……が、どうにか一歩を踏みとどまった。
 せめて今日くらいは、羞恥心もプライドもかなぐり捨ててやってもいいと思う。
 意地の悪い言葉も皮肉もなしにして、大助の目を惹き付けてやまない、少女のように。恥ずかしげもなく人を好きだと言ってみたって、どこまでも優しく甘やかしてみたって、いいのかもしれない。
 立場逆転、形成逆転して亜梨子を慌てふためかせ、謝らせるのは次回のお楽しみといこう。
「ひゃっ、あぁっ? ちょ、ちょっと……んんん、ぺろぺろしないで……ぇあっ」
 寄せられるままに言葉でなじることも焦らすこともせず、もみもみする。……揉む分量もないから実はもみもみできているとは言えないのだが、涙を誘う事実は置いておくとしよう。
 指を動かしながらも頭を首に埋め、顎から鎖骨まで舐めていく。体臭の髪の匂いが入り交じった甘酸っぱい香りを鼻に感じながら、音を立てて首やうなじに赤い痕をつけた。
「あ、あ、あ、あ…………み、耳元にきっ聞こえて……もみもみされながらぺろぺろされちゃってる……うぅ」
「子供っぽい言い方というか、語彙が足りてないんだな……未来の一之黒の当主だろ。頭悪くてどうするんだよ」
「な、何よ……こっこんなに頭が真っ白に、ああっ、なってなければ……私だってぇ、あっやあぁ!」
 親指と中指でふっくらした乳輪をなぞり、膨らんだ乳首を残った人差し指でぎゅぅぅと潰す。離すと、ゆっくりとだが再び同じ形に勃ち上がった。
 幼い頃に遊んだ、いくら形を変えても、壁に当ててみても元の形に戻るというスライムにも似た玩具を思い出す。最初よりも赤みを増した気がするそれをボタンを押すみたいに何度もつつき、その度瞼を閉じたり開いたりを繰り返している亜梨子の様子を観察する。
「ひっ……ぃん! バカ、やめっ、いやぁぁ……ぁ……っっ」
 空いたもう片方の乳首を引っ張れるだけ引っ張ってみたり、手のひらで胸全体を押し潰したりと少し痛いくらいの力加減で調整に調整を重ねていく。
 やりすぎてしまったときには、耳や胸を舐めて痛みを誤魔化し、快楽に直結させる。それから大助は、もじもじと擦り合わせている太ももに割って入った。何度も何度も身動ぎしていたせいで短いスカートはとっくに捲れ上がってしまっている。
 「亜梨子キック」と蹴りを入れられる際に下着が見えていることは割と日常茶飯事ではあったが、まじまじと見たのはこれが初めてだ。見てはいけないものを見てもいいと差し出されている。大助以外には晒されることのない痴態。
 攻撃に特化していると思っていた足は柔らかく細い。しなやかに伸びたその上にある亜梨子の女の子の部分を、下着越しに触れた。
 じっとりと肌に貼り付いており、熱い。
 濡れている。
「」






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