「アイツに近付くな」
「毎度毎度亜梨子と何話してやがんだ? ただでさえ面倒な任務を、お前の都合でごちゃごちゃ掻き回しやがって。迷惑してんだよ。俺も、亜梨子も、花城摩理も。花城摩理を追ってるからって、アイツにまで迷惑かけんじゃねーよ」

「はっは」
「テメェは一之黒亜梨子の何なんだ?」
「花城摩理の何なんだ? あの二人とどんな関係があんだ? テメェこそアイツらを引っ掻き回してんじゃねぇのか? 『迷惑かけんじゃねーよ?』 何でテメェが亜梨子の気持ちを代弁してんだ? かっこう、テメェに一之黒亜梨子や花城摩理の何がわかんだ?」
「テメェと花城摩理の間に俺が知らねぇ何かがあるように、俺と一之黒亜梨子の間にはテメェの知らねぇ何かがある。それだけのことだろうが。それが気にくわないからって、俺につっかかんじゃねぇよ」

 ぐっと喉を詰まらせた。
 その通りだ。ハルキヨの言った言葉はあまりにも正論過ぎて、大助には何も言い返せない。
 近付くな。そんなこと言う権利は俺にはないのだ。元よりこの男が赤牧市に残っているのは亜梨子が引き留めたからであり、そんな少女がハルキヨを迷惑だと思っているはずもない。俺は今自分勝手な感情で動いている。指摘されるまでもなく自覚していた。
 亜梨子は俺の目を盗んでハルキヨと会っている。
 どんな会話をして、どんな理由でハルキヨがこの街に残ることになったのかを俺は知らない。
 たったそれだけ。それだけのたった二点が、大助の心を掻き乱している。
 ハルキヨを探し出すと意気込んでいた少女の横顔を思い出し、大助の眉間に皺が寄る。

「……大体、入れ込みすぎなんだ」
「お前も俺も、似たようなもんだろ」

 お前も俺も?
 そうかもしれない。いや、その通りだ。
 あまりの正論に、再び喉が詰まる。
 全く、心から面倒臭い――顔を歪ませた大助の舌打ちが、ハルキヨの舌打ちと重なった。







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