恋歌ピエロ


簡素な部屋に佇む一つのベッド。
そこに女を下ろせば、ギシ、とスプリングが音を立てた。


ーーなんでこんなことをするんですか、


下民の女の問いには答えなかった。いや、答えられなかったがきっと正しい。
なぜか、自身の体がこいつに触りたいと欲を孕ませる。
その意味はきっとわからない。


目を背け、眉間にしわを寄せる女の裾から手を差し込んだ。その瞬間、びくりと震える体。
恐怖を含んだ情欲をそそる瞳が揺れた。罪悪感と背徳感に支配されたような表情が自身の熱を高ぶらせる。

服と下着を一気にたくし上げ、わずかに抵抗する下民の女を押さえつけて服を剥ぎ取った。
タートルネックで見えなかった首元には、前回自分がつけた欲の痕が残っていた。


「消えていないな」
「ーーっ、」


ある種の満足感を感じながら、痕を辿るように口を這わせた。


「んっ、」
「貧相な体だな」
「っ、だったら、なんでこんなこと、っぁ、」


ぺろ、と鎖骨についている痕を舐めれば、びくりと震える肩。さらに歯を立てて甘噛みすると強く漏れ出す吐息。消えないようにと、痕の上に唇を重ねてまた色濃く痕を残した。

一つ一つの反応があまりに官能的で、情けなくも欲がさらに増していく。


「っあ、!」
「相変わらず、敏感だな。貴様は」


ツン、と勃った胸の先を指で弾いた。そのまま捻るようにつまみあげれば、声を漏らしながら揺れる体。

べろ、と舌を這わせれば、我慢できないと言わんばかりに身体を押してきた。


「っあまり、しないでっ、くださっ、…!マスターがっ、」
「…声を聞かれたくなければ、貴様が我慢すればいいだろう」
「そ、そんなっ、ーーっ、ん、!」


じゅる、とわざと音を立ててそこに吸い付けば、大きく身体を震わせて唇を噛みしめる女。
弄ぶたびに声を我慢しようとする姿に、加虐心は容易に擽られる。


「ん、ふっ、…っ、んんっ、」
「どうした、声が漏れているぞ」


前回身体を重ねた時に、この女とは身体の相性が良いことがわかった。
私が触れるたびにまるで媚薬でも塗られているくらいの反応を示す女に喉の奥でクツクツと笑ったのは記憶に新しい。

する…とズボンに手を差し込んだ。小さな声でやめてと拒絶をする声は無視した。


「んぅっ、」
「本当に貴様は濡れやすいな」
「っ、ふ、…」


中心に指を這わせれば、下着さえ濡れているのがわかるくらいに滴らせていた。
羞恥に耐えるように眉間にしわを寄せる女を責め立てるようにわざと音を鳴らして指を差し込んだ。


「っあ、」
「声を聞かれると思って興奮したのか?」
「ちっ、ちがっ、ぁ、」
「淫乱だな」
「やっ、まっ…!だめっ、」


慣らすこともなく指を入れたがそこはもう私の指を受け入れ始めていた。
いきなりのことに戸惑いを隠せないようだったが、上壁を押し返すように指を動かせばわずかに声を漏らして身体を震わせた。

反応も、声も、全てが私を煽る材料のようだった。


「んっ、っ…!ん、っ」
「先にこちらで果てさせてやろう」
「ひっ、!」


ぬるりと指を引き抜き、愛液が絡まった指で突起を押しつぶせば一瞬だけ声を荒げて腰を浮かせた。

この女を見ていると加虐心や支配欲に駆られる。
さらに追い込んでやろうと胸も同時に弄りながら敏感な突起を指で弾くと、ぎゅ、とシーツを掴んで口に手を当てる女。


「貴様は、コレが好きだな」
「っふ、ぅ…〜〜っ、」
「喘いでみろ、**」
「ーーっ、ぅあっ、!」


胸の手を離し、突起を責めながら中に二本の指を入れた。
そうするだけで涙をこぼしながら髪を振り乱す女。なんと煽情的な姿だろうか。


「あっ、っあ、やぁっ、」
「無様に果てろ」
「っ、や、やめっ、あぁっ、!」


押し広げるようにバラバラに動かしながら、カリ…と爪で突起を引っ掻くと、全く我慢できていない声を荒げて身体を大きく揺らした。

解放されたように大きく息を吸った女。ぽろり、と溢れた涙に唇を落とした。


「呆気なかったな」
「っはぁ…はぁっ、はぁ…っ、」


びく、びく、と余韻に浸る身体。
しかしこいつが果てたところで私には関係ない。
はやく、はやく、と自身を急かす欲が暴れだす。もうこうなれば、止まれない。


「っ、も、やです、っ」
「ここまで濡らして、今更なにを言う」
「っあ、ぅあ、っ」


女の腰を掴んで蠢く秘部に自身のを当てがった。
女は、最後の抵抗というように決して私を見ようとはしなかった。


「っん、ぅっ、!」


ズブ、と躊躇なく中に挿れた途端、身体を強張らせた女が、私を押しのけるように身体に手を当ててきた。

まるで快楽から逃げるかのように。


気に食わない。全てが気に食わない。
私を拒絶する女も、下民に欲情する私も、全部が気に食わない。

女の中はビクビクと快楽を感じているはずなのに、当の本人はそれから逃げようとする。


「っはぁ…、!あっ、!」
「っ、そんなに、声を出して、いいのか、っ」
「んっ、んんっ、…ぅ、!」


拒絶する手を掴み上げて奥深くへと挿入した。
背中を仰け反らせる女が唇を噛んで声を我慢しようとしているのを見て、もっと追い詰めてやろうと支配欲が姿を見せた。


「あっ、!、ふ…ぁ、!?んぁっ、やぁ、っ!」
「ん、…ふ…っ、ハァ…っ」


きゅ、と胸の突起を掴んだ瞬間、苦しそうな表情で喘いだ瞬間に、無防備になった唇にかぶりついた。

無理やり口を開けさせ、貪るように舌を絡めれば、喉の奥からは嬌声が漏れ出す。


「あっ、んぁ、やっ…!ふぁ、っ!」
「っは…ん、っ…、フ…」


思い通りに乱れる女に思わず笑みがこぼれる。時折、中が痙攣を起こしたかのように収縮したが、それさえも私にとっては快楽を煽る材料でしかなく、全て無視して獣のように挿入を続けた。


じゅぶ、じゅぶ、
粘膜が擦れ合う音が部屋に響く。結合部から泡が溢れ、喘ぐ女の足を掴んで肩にかけた。


「〜〜っ、も、ゆるしてっ、くださっ、あっ、」
「まだ足りない、もっとだ、」
「っあぁ、!」
「っ、…は、**、」


もう何度、女が果てたかわからない。
それでも果てると同時に身体をそらす姿はなんと妖艶か。中が締め付けられ、自身も欲を放ちそうになる。

足りない、もっと狂うほどに乱れればいい。私がいなければ満足できない体になってしまえばいい。


「私の名を呼べ、**ッ、」


壊れるほどに、私を求めてほしい


「の、ぜる、さ…ノゼルさまっ、あっ、ノゼル、さま…ぁ、!」
「はっ、**、ッ」


ようやく絡み合った視線。
お互いの息が溶けて混ざり合うようで、熱い。

**の腕が首にまわり、どちらからともなく唇を重ねた。
足りない分を補うように、ぐちゃぐちゃに蕩けるようなキスだった。


もう、**しか求められなくなったのは、私だ。


「あっ、あ、っ!」
「…っク…、!」


びく、ビクッ、
**の中が痙攣したのと同時に、ずるりと自身を引き抜いて腹の上に欲をぶちまけた。

未だ痙攣する**の身体。ボロボロと涙を零すのは、なんの意味を持っているのかわからなかった。


「…**、」
「は、っ、ノゼル、さま、」


劣情を煽り立てる瞳が私を見ていた。きゅ、と唇を閉じたのを見て、自身の唇にそれを重ね合わせた。

なんと甘美な瞬間だろうか。
罪悪感と背徳感を抱えながら、**の頭を抱きしめた。
どうしようもないほど体がこの女を求めてしまっている。

控えめに回された腕を感じて、**も少しは同じ気持ちなのかもしれない、と都合のいいことを考えた。



恋歌ピエロ
元に戻るには遅すぎた。





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