「いいかコンチクショー!!!」
「オレは必ず“実績”を積んで……!!」
開かれたドアの先、机の上に立った小さな少年が怒りをあらわにしていた。
その少年の気迫や覚悟が体を震わせた。小さいのに、なんて大きな少年なのか、と。
「魔法帝になって、オマエら全員黙らせてやる!!!!」
身の丈ほどの黒い大剣を振り回す少年。変わった少年がいるとは聞いていたが、それはきっと彼のことだろう。
心が震える、とはこのことか。
今まで、魔法帝になると豪語してきた人たちのほとんどは夢を諦めた。それでも、魔法帝を夢見るあの少年は他の人たちとは違う何かを纏っているように感じた。
これはただの直感だけど、彼は、なんかすごい子だと、そう思った。
「魔法帝に…なるだと………!?」
クスクスと笑うもの、怒りに震えるもの、様々な反応を示す。そんな中、ある言葉だけは綺麗に揃った。
「「「笑わせるな!!!」」」
そこからは、なにが起こっているのかよくわからなかった。
ただ、少年が大剣で、魔法を切っている、それしかわからない。
なんて、なんておもしろいんだろう。
「あの、…**様、…?」
「私、彼と友達になりたいです…っ!」
「へ?あっ、ちょっ、**様!!?」
軽く戦闘が起こっている中、ケーキが乗った大皿を抱えたままパタパタと駆け寄っていった。面白い。切ったり跳ね返したり。あんな魔法見たことない。すごい。すごいすごいすごい!
シルヴァ家の殿方たちはお怒りだが、私には楽しくて仕方なかった。適当にいた細身で長身の男性に後ろから声をかけた。
クルリと振り返った彼はひどく整った顔をしていた。
「ねぇ、あの子は、なんという名前なのですか?」
「は?あんた誰ですか?」
「……っえぇっ、!?なっ、なななななぜあなたがここに!?!?」
クラウス様の声があまりにも大きくて、途端に視線は私に集中する。でも私はそれどころではない。彼のことを知りたくて仕方がないのだ。
「ユっ、ユノさんっ、この方は…っ!」
「ととととにかく黙って膝をつけ!!ユノ!!」
「いっ、!」
「わ、そんな、立ってくださいっ」
「なぜここにおられるのです、**様…っ!?」
クラウス様に膝裏を蹴られた黒髪の少年が転けるように地面に手をついた。慌てて大皿をテーブルに避難させ、しゃがみこんでその手を取った。
ミモザさんは何回かお会いしたことがあるが、この金色の夜明け団のローブを纏った少年は初めて見た。
なんとなく、ただならぬオーラを感じて、自身の好奇心がウズウズと疼きだす。
「あなたのお名前は?」
「…ユノ、です」
「そう、ユノ君って言うのですね。初めまして、**と言います。よろしくお願いしますね」
聞いたことがある名前だった。確か、騎士団の入団試験で全団が彼を求めたとかなんとか。
そうか、噂の天才新人が彼で、ユノ君と言う名前なのか。
「誰だ?あのねーちゃん」
「ッバカスタ!!!あんた知らないの!?!?」
ユノ君が立ち上がったのを確認してから自身も立ち上がった時、後ろではそんな声が聞こえた。
そうだ、私は彼と友達になりたかったのだ。
ではまたあとで、と一言残してからクルリとユノ君に背を向け、彼の元へとパタパタと駆け寄った。
「うおっ、こっち来た…っ!」
「ご機嫌よう!ねぇ、私とお友達になってくれませんか?」
ぽかんと口を開ける彼は、なんだか少し可愛らしかった。
「お前誰だ?」
彼女の瞳に見た未来
スパーンと彼の頭がいい音を立てた。