野苺サイケデリック


「ヤミさん!お久しぶりです!」
「おー、久しぶりだな、姫さん」
「**様ぁぁ〜っ!!今日も美しいですね!!」
「お久しぶりです、フィンラルさん!」


お散歩日和、とお弁当をこさえ、護衛の目をかいくぐって王貴界をお散歩していたら、目の前を歩いていたお二方に気づいて走ってそばに寄っていく。


「なにかお仕事ですか?」
「いや、その帰りだ」
「お疲れ様です!」


色々言う人はいるけれど、黒の暴牛の人たちはとても好き。私を私として見てくれるし、とてもフラットに接してくれるのが何より嬉しかった。


「今から帰るところですか?」
「あぁ」
「**様も久しぶりに来ますか?もちろん俺の魔法でっ」
「わぁ!行きたいです!」


キラーン、と星を飛ばすフィンラルさん。本当に彼の空間魔法はすごい。それにとても優しくしてくださる。

いいですか?とヤミさんを見つめたら、好きにしろ、と顔が言っていた。すぐさま護衛の一人に一方通行の電話を入れる。


『**様っ、今どちらに、』
「今から黒の暴牛に行ってきますね!」
『えっ、!?あっ、ちょっと**さ……プー…プー…プー…


「よしっ」
「相変わらず護衛を困らせてんだな」
「ふふ、ごめんなさーいっ」


いたずらっぽく笑ったら、クシャクシャと頭を撫でられた。その感覚が心地よくて、思わずえへへ、と笑みがこぼれる。


「ヤミさん、行きましょう!」
「おー。フィンラル」
「ちース。」


パカ、とグリモワールを開いたフィンラルさんが、『空間魔法“堕天使の抜け穴”』を発動させた。
わぁ、!と感心するのもつかの間、後方上空から私の名前を叫ぶ声が近づいてきた。


「**さまぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「あ、護衛の方です」
「まじか。さっさといくぞ、姫さん」
「え、でもせめて一言、」
「そんなんしてたらフィンラルがもたねぇよ」
「**、様っ、できたら早めにっ、!」
「えっと、時期に帰りますっ!」
「お待ちくださぁぁぁぁ……



:
:



「っはは、後で怒られなかったらいいなぁ」
「あはは…本当ですね…」


これだからユリウス様におてんばって言われるのだ。でも来たかったものは仕方がない。
気を取り直して目の前を見れば、そこには壮大ななんともレトロで個性的な建物が。いつ見ても、圧倒される。


「んーっ、久しぶりです、ここ!」
「**様、僕がエスコートを「ぐぉら死ねェェェェェ!!!!!」


ドッカーーン!!
建物から煙が吹き出る。わぁ、いつも通りだなぁ、と呑気に笑っていられるのは、ここが黒の暴牛だから。


「相変わらずみなさんお元気そうでなによりです!」
「お前、すげー心広ぇのな」




「と、言うことで遊びに来ました!」
「久しぶり〜**ちゃーん!」
「お久しぶりです、バネッサさ、ふぶっ、」


むぎゅうーっ、と豊満な胸に顔を押しつぶされ、息ができない。苦しい…と訴えるも、歓迎してくれていると思うとつい嬉しくなる。
でもやっぱり苦しい。


「そこらへんでやめとけ、姫さんが死ぬぞ」
「あら、ごめんなさい」
「ふふ、大丈夫ですよ、バネッサさん。今日も一段とお美しいですね」
「**ちゃんも、なんだか見ないうちに大人っぽくなったわね!」
「そんな、バネッサさんに比べたらまだまだですよ」


バネッサさんは、私のお姉さんのような存在。本当によくしてくれて、たまにお忍びで平界のショッピングに連れて言ってくれることも。


「**様、妹のマリーがデカいクマの人形を欲しがっているのですが」
「ゴーシュさん!マリーちゃんはお元気?」
「はい。昨日も今日も明日も天使です」
「そうですか、よかったです!じゃあ腕によりをかけて、マリーちゃんと同じくらい大きなお人形を作りますね。えっと、マリーちゃんの身ちょ「135センチです」


ゴーシュさんは、妹のマリーちゃんをとても大切にしている。お人形作りは好きだけど、部屋中にいっぱいいっぱいになってしまうのをどうしようかとヤミさんに相談したときに、ゴーシュさんの名前が出て来た。


「あなたが作るものはマリーが特に喜ぶので」
「本当ですか?よかったー!」


なんでも、最愛の妹さんにあげるとかなんとか。今じゃ、お人形を上げるのと引き換えに、ゴーシュさんや妹さんのお話を聞かせてもらうと言うウィンウィンな関係。


「**ちゃーん!」
「チャーミーさん!」
「ねぇねぇ**ちゃん、何か食べ物ある?」
「ふふ、ちょうどお散歩に、とお弁当を持ってきていたんですが、もしよかったらどうぞ!」
「わー!**ちゃんとこのお弁当〜っ!はい、これどーぞ!」
「わ、美味しそうなマフィンですね!」


チャーミーさんはとってもかわいい。いつも食べ物がそばにあるが、たまにお裾分けしてくれる。
それがまたとっても美味しくて、幸せをシェアするとはきっとこのことなんだろう。


「ふふ、美味しいですっ」
「はぁ〜、幸せぇ〜」
「よぉ**!」
「マグナさん!今日も元気そうで何よりですっ」
「マッ、マグナ先輩、王女様を呼び捨て…っ!?」
「はっはっは!俺と**はマブダチだからな!」
「はいっ」


マグナさんには昔、新人と間違えられて、死にそうな目にあったけど、そのあとはなんだかんだで仲良くさせてもらっている。
女性には優しいマグナさんだ。ほんのちょっとの洗礼で倒れそうになったのはいい思い出。(あのあと激しく土下座をされた)


「アスタ君、この前ぶりですね。」
「は、はいぃっ、!」
「そんな緊張しなくてもいいですよ、歳も近いですし」
「そ、そそそそんなっ、この国の王女様がっ、」


まだまだ緊張しているらしいアスタくんだけど、いつか緊張せずに話されたらな、と思う。とても面白そうな子だから特に。


「**サマ〜、魔力のコントロールはできるようになった?」
「ご機嫌よう、ラック君。まだできないなぁ、」
「**サマほどの魔力量の人は初めてだからさ、早くコントロールできるようになって僕と戦おうよ!」
「うーん、その日は近くはないかな…」


ラックくんは…すごく戦いを挑んでくるけど、私は戦いは無縁だからご要望に応えられたことはない。もうしわけないが、戦いはきっと苦手な部類だと思う。


「**様、どうしてこんなところに…」
「ノエルさん!この前ぶりですね」
「は、はぁ…」


ノエルさんはパーティーでよくお会いする。兄妹から批判されがちでそれを受け入れているような節があったが、ここにきてそれが晴れているように感じた。

黒の暴牛の方達はすごい。広い心と、仲間との絆はどの団よりも優れている。
それもきっと、ヤミさんの懐の深さ故だと思う。


「相変わらず、素敵ですね、黒の暴牛は」
「そうか?そう言うの、姫さんだけだぜ」
「ねぇ**ちゃん!今から女子だけで温泉行くんだけど、一緒にどう?」
「えっ、温せ、ふぶっ、!」


ばいんばいん、と大きく揺れた胸がまたも私の顔を押し潰した。バネッサさん、そう毎回押しつぶさなくても…っ、

男性だったらきっと幸せなんだろうけど、思いの外私も幸せだ。なんたってとてつもなく柔らかい…って、何を考えているのだ。


「いっ、いきたいですっ」
「ほんと?じゃあ決まりーっ!行くわよー!」
「わっ、私も?」
「もっちろんっ」
「行きましょう、ノエルさん!」
「あのっ、ちょ、**様、本当に行っても良いのですか?」
「護衛の方には内緒ですっ」
「やったー!温泉卵ー!おまんじゅうー!」


のびのびと一人一人が自由な黒の暴牛。だからこそ、一人一人が豊かな心を持てて、一人一人が大きな存在で、色々な人に愛される団なんだと思う。
私は、この団がたくさんの人に愛されていることを知っている。そんな私も、黒の暴牛が大好き。


「**ちゃーん!まずは着替え買いに行こー!」
「はいっ!」


ここに遊びにきたら色々な人に怒られてしまうけど、それでもここに来てしまう。
ここは、黒なのにやさしい色をしている。とても不思議で、でこぼこで、ぐちゃぐちゃで、面白い。きっとここは、みんな違ってみんないい、っていう騎士団なんだろう。



野苺サイケデリック
王女のベールを脱ぎ捨てて、自分の足で走り出す。



prev | next

back




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -