真夜中の5分間




「失礼します」

「お、**、全員分揃ったか?」

「はいっ」


眠ってないのに、舟を漕いでしまってクラスメイトを睡魔に襲わせた罰として(解せない)、今日の宿題を集めて持ってくる役に抜擢された(解せない)。

だだっ広い職員室に教師が集い、お昼休み時間ともあってか皆さんワイワイしていた。


「さんきゅーな。最近寝不足か?」

「課題に睡眠時間を奪われまくりました…」

「数学苦手だもんなぁ、**は」


ズーンと視線を下げていれば、先生がポンポンと頭を撫でてくださった。先生曰く、撫でたくなる頭らしい。私にはよくわからなかったけど。


「まぁわからないことがあったらいつでも質問しに来いよ」

「はい!」


ありがとうございます、失礼します、と頭を下げてからくるりと職員室のドアに向かって踏み出した。


「**ちゃぁぁぁぁん!!」

「っふげ…!」


その瞬間、鼻をくすぐるフローラルと、背中からのとんでもない衝撃と、柔らかすぎるとあるクッション。


「っあ〜ヤダわぁ〜〜癒される〜〜」

「みっ、ミッドナイト先生…っ!」

「おはよう**ちゃん、相変わらず癒されるわ〜」


豊満すぎる胸に貧富の差を感じつつ、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくるミッドナイト先生。これも実はよくある。


「おはようございます、今日もおつかれさまです」

「もう**ちゃん、ウチに養子にこない?」

「ふふ、ステキなお誘いありがとうございます」


私を抱きしめて離さないミッドナイト先生のためにほんのちょっとだけマイナスイオンの濃度を上げる。先生たちはヒーローをしながら先生をしているから、本当に毎日が大変そうだ。


「あら?**ちゃん、今日は濃度高めの日?」

「あ、えっと、ミッドナイト先生がお疲れのようだったのでちょっとだけ濃度を上げちゃいました…」

「〜〜っやだカワイイ!!嫁ぎに来ない!?」

「えぇっ」


ぐりぐりと額を擦り付けてくる先生に何もできず、ただただされるがままにその身を受け止めた。個性のおかげとは言えど、やっぱり抱きつかれるのは案外好きだから嫌な気にはならない。


「そうそう、最近お肌の調子が良いのよ!」


「はい」、と言って一枚のA4用紙を見せてくれる先生。そこには肌年齢と水分・皮脂量やその成分などが具体的に記されていた。


「ありがとうございます!」

「いえいえ、こっちが感謝したいくらいよ!」


ジッとその紙を見つめた。前よりも数値が良くなっている気がする。毎日5分間ハグをするっていう条件を出してからもう何日経っただろうか。最初はなかなか効果を出さないマイナスイオンも、最近では変化が出るようになった。


「数値が上がってますね…マイナスイオン効果ですかね?」

「絶対そうよ!**ちゃん様様だわ〜」


そう、マイナスイオンは細胞を活性化させるから、お肌のターンオーバーを促進させて肌が綺麗になるとかなんとか。
ストレス緩和以外の効果もあるって証明がしたくて、本当にいろんな効果があるってわかったら将来の仕事の幅もきっと広がるはず。だからこそ将来のためにもこうやって個性の効果を知っていきたいから、こうやってフィードバックをくれる先生には感謝しかない。


「また明日もよろしくお願いします、ミッドナイト先生」

「こっちがお願いしたいくらいよ!いつもありがとう、**ちゃん」


よしよしと頭を撫でられ気分は上々だ。触れられるのに慣れているのもあってか、こうやって抱きつかれたり頭を撫でられたりするのが好き。

むふふと笑みを浮かべては、セメントス先生に呼ばれたミッドナイト先生に手を振った。名残惜しそうにしていたが、それでもさっきより疲れた表情はなさそう。


(午後も、がんばろっと)


まよなかの5分間
その日のお昼は職員室中の先生がお昼寝したそうな。




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