02信じたい愛なんてひとつあればいい

作戦B。
まさか告白(からの玉砕)後もこの単語を使うことになるとは。そんなことを思いながらお昼のお弁当と今日もらったデザートを両手に部室棟の裏っ側に顔を出した。

「岩泉」
「おー」

部室棟の裏はちょうど気持ちのいい日陰になる隠れた名スポット。いつも岩泉と二人で話したいときは朝までに「作戦B」と言ってお昼ご飯を持って別々にここに集まった。岩泉から言うことは滅多にないのに、珍しい。

「どうかしたの?」
「まぁ座れや」

壁にもたれながらケータイをいじる岩泉の隣、手のひら一つ分の距離を開けて座った。このゆったりとした空気がいつも好きだった。すごく落ち着く。

「………なに、この手、」
「もういいだろ、我慢」

ぽん、ぽん、と小さな子供を慰めるように私の頭を撫でる岩泉。朝殴られた拳とは全然違うくて、すごく大きくて、泣くまいと我慢していた心がゆっくり解かれていくようで。

「我慢なんて、そんな、」
「いいから」

頭を下に押しつけるように少し強く撫でられる。ぽた、と目から零れたものになぜか最初は「はは、」と笑いが出た。

「っふ、う、…ッ、」

だけどすぐにそれが零れて溢れて止まらなくなった。ポタポタと地面を濡らす涙はなにを意味してるのか、自分でもよくわからない。ただ、岩泉に泣かされてるような気分だった。

「〜〜っ、す、すごく、緊張したのッ、」
「おう」
「むりだって、知ってた、けどっ、でもっ、好きだったから、っ、」
「わぁってる」
「がんばって、がんばったのに、ッ」
「んなもん全部知ってる」
「ッ、いばいずび…っ」

気づけば岩泉の服にしがみついて泣いていた。岩泉はそのことになにも言わず、一定のリズムで私の頭を抱えるように撫で続けた。

「わ、わだじっ、がんばっだんだよっ、!」
「あぁ。よくやった」

失恋って、すごく重い。心に何百キロもの重りを乗せられたように感じるほど、苦しくて、息すらできない。
たかだか3年間あるうちの高校二年の1日に起こった出来事。これからもっといろんな人と出会って、いろんな人に想いを馳せるかもしれない。それでも昨日のあの1日は私にとってものすごく大きなことだった。

「わだじ、わだじねっ、」

及川くんのこと、好き。
なんでかわからないけど、あのとき彼に言った言葉をそのまま岩泉に伝えた。それで何かが変わるわけないのに、岩泉にただ伝えた。そしたら岩泉は、ゆっくり大きな息を一回した。

「あぁ」

たった一言、それだけ言った岩泉は、ゆるりと背中を一撫でした。このときの岩泉の顔はなに一つ見えなかったが、泣き止んだ後に「いろんなこと、うまくいかないね。」そう言ったら、「そうだな」そう軽く笑った。
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